石原千秋の以下の文を読んで、岸田國士(くにお)『由利旗江』を、 河出書房版『三代名作全集 岸田國士集』1941(昭和16)年初版で読んだ。
《 石井桃子が岸田國士『由利旗江』を好んだことを知って、やはりこの フェミニズム小説を評価した世代なのだと、改めて石井桃子の生きた時代を 思った。 》
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140727/bks14072713370012-n1.htm
1929(昭和4)年〜1930(昭和5)年の新聞連載小説。
《 地震以来、そのままになつてゐるのだらう、山門の長屋が敷石の上で 腹這ひになつてゐた。 》
場所は高円寺近辺なので、地震は1923(大正12)年の関東大震災だろう。 連載時と同時代の話か。伯父に同行して香港へ。そこでの出来事。二十四歳 の由利旗江と、同行した若い男との会話。
《 「でも、あたくし、ここへ来て、俥に乗るのがいやになりましたわ。 ここの俥屋さん、どれもこれも、惨めなんですのね」
「ありや、人間ぢやありませんよ」
「さういふ考へ方、あたくしにはできませんの。あれに乗つてゐる方が、 人間ぢやないつて気がしますわ」 》
金子光晴の『どくろ杯』を連想。
二人の男性と恋に落ちて解消、働かなくては、と美容師を目指す。続く 妊娠出産。当然私生児……。目が離せない。由利旗江と彼女を巡る人間模様は、 今読んでも古臭くない。いや、あまりに現代を映している。
ネットの見聞。
《 「おカネで買うことができるのは値札のついているものだけ」平川克美 》
《 「紙魚のぼりつめて天金崖なせり」堀本裕樹 》
《 文学史上の価値と古書価を比較する展示会をやったら、おもしろいね。 》