「 消えた玩具屋 」

 エドマンド・クリスピン『消えた玩具屋』ハヤカワ・ポケット・ ミステリ1993年2刷を読んだ。1946(昭和21)年の作。1938年、 三十代の人気詩人が寝静まった深夜のオックスフォードへ着いた。 戸が開いていた暗い玩具屋に入ると、年配の女性の死体。詩人は 何者かに襲撃され気絶。五時半に意識が戻り、警官と現場へ行くと、 そこは食料品店。玩具は見当たらない。なぜ。何があった?

《 だが、あの小部屋には、もう掃除道具などは入れてなかつた。 食料品や生活必需品が積みあげてあつた。それを見るとキャドガンは、 急に疑惑におそわれた。けっきょく、すべては幻想ではなかつたか?  事実であるにしては、すべてがあまりに奇妙でありすぎるではないか? 》  42頁

 詩人と教授の凸凹コンビが事件へ挑む。

《 「要するに奴は一個の卑劣漢(ヒール)さ」すこし時代遅れの アメリカ語を持ち出すくせがある彼は、そうつけくわえた。 》  80-81頁

 ヒールが当時時代遅れとは。プロレスでは普通に使われている。

《 「おお、キャドガン、大丈夫か。おれは作者クリスピンのために 見出しをつくつていたのさ」 》96頁

《 「『読めない本』のゲームをやろう」と彼は提案した。
  「よし。『ユリシーズ』」
  「『ラブレェ』」
  「『トリストラム・シャンディ』」
  「『黄金の大杯』」
  「『ラセラス』」
  「いや、あれはぼくの愛読書だ」 》 98頁

 『黄金の大杯』はネット検索で不明。多分、ヘンリー・ジェイムズの 長編『金色の盃』(青木次生・訳、講談社文芸文庫)ではないか。 解説で青木は書いている。

《 『金色の盃』(一九〇四)は、この大小説家の難解であることで 有名な中・後期の作品の中でも特に難解な、問題の長大作として 知られている。 》

 最後は犯人を追撃した映画館そして遊技場へ。この場面はとても 映画的。情景が目に浮かぶよう。裏表紙には「江戸川乱歩監修 世界 探偵小説全集」の文字。文字通り探偵小説だ。

 朝黙祷。それから源兵衛川中流の雑草の刈り取りを高校生たちと。 2トントラックと軽トラに一杯。三人のJKがいたのでついがんばって しまった。いかんいかん。昼帰宅して水風呂。クターッ。

 昨日の毎日新聞夕刊、「今夏も広島訪問 オノ・ヨーコさん」。

《 「政治家のすることをまともに受け取って怒るのはエネルギーの 無駄。米国にとって『都合の良い国』である日本は結局、米国の意向に 従ってしまう。政治家なんて私たちより偉いわけでも何でもない。 彼らを動かすのにエネルギーを費やすより、できることをすべきです。 政治家なんかに頼らなくても世界は変えられます」 》

 きょうの作業には中国人と台湾人の女性も参加。以前北一明氏から 聞いた中国のことわざを想起。「政治家は権力を失うけれど、芸術家は 不変」。中国では芸術家は尊敬される。

 ネットの見聞。

《 「日本人は9条を盾に戦争をしないため、世界からひ弱な 臆病者と見られている」という妄想。被害妄想かな。「だから、 海外で日本人旅行者が襲われる」という妄想。集団的自衛権では、 この妄想は全く解決しないんだが。 》 藤岡真

《 中国が攻めてくるから米軍基地が日本に必要、と主張する 人いるけど、米国と中国が仲良く軍事演習してるのにはスルーかあ。。 日本にはもう武力なんか必要ないよ。世界を滅ぼす自爆テロ兵器を 54機も抱えてるんだもの。世界でいちばん恐ろしい狂気の国だと思う 》  戸谷真理子

《 安倍の主張は約めて言えば、
  平和のために戦争したい。
  国民のために戦争したい。
  戦争をなくすため戦争をしたい。
  というむちゃくちゃな主張だ。
  よっぽど戦争が好きなんだね。 》 池田清彦