「ハイデガー拾い読み 」つづき

《 こうして、〈本質存在(エッセンティア)〉を示す古代存在論の基本概念はすべて 制作行為に定位して形成されているのであり、その根底には〈存在=被制作的存在〉 という存在概念が据えられている、とハイデガーは主張するのである。 》 127頁

 このくだりには目を洗われる思い。

《 つまり、彼は上のような存在概念が特定のものであり、存在はこのように 了解されるとは限らないと考えていたのであり、それとは違った存在概念と 対比して上の存在概念を相対化しようと考えていたにちがいないのだ。 》 139頁

《 つまり、〈存在=被制作的存在=現前性〉と見る存在概念が、〈非本来的時間性〉 ──〈未来〉はまだなく、〈過去〉はすでに過ぎ去ってなく、〈現在〉だけが突出する かたちで生起する、彼のいわゆる〈非本来的時間性〉──を生きる現存在の存在了解に 根ざすものであることを論証し、それに対して〈本来的時間性〉を生きる現存在の 存在了解に根ざす新たな存在概念を浮かびあがらせようというのである。 》 139頁

《 こうした本来的時間性を場(ホリツォント)として生起する存在了解── つまり、本来的時間性を生きる現存在のおこなう存在了解──において構成される 存在概念とはいかなるものであろうか。おそらく〈存在=生成〉と見る(つまり 〈ある〉ことを〈なる〉ことと見る存在概念だとしか思われない。 》 140頁

《 彼が企てていたのは、ソクラテス以前の思想家たちをもくわえた壮大な視界 (パースペクティヴ)のうちにプラトンアリストテレス以降の存在論を据えて、 それを相対化しようということだったのである。 》 141頁

《 万物を生きて生成するものと見ていたソクラテス以前の思想家たちの 〈自然的思索〉から、プラトンイデア論のように、超自然的原理を設定し、 それに照らしてすべてを見ていく〈形而上学的思考〉への以降において、 決定的に変わったのは何であろうか。おそらく自然観であろう。 》 176頁

《 ハイデガーはもともとすぐれたアリストテレス学者であり、卓越した哲学史家 なのであって、われわれのいわゆる専門的な常識を根底からくつがえすような 鋭利な見解を、講義のあちこちで披露してみせる。 》 246頁

 たしかに。しかし難解で、一読で理解はとうてい無理。でも、じつに 刺戟に満ちた本だ。あるときは北一明の『ある伝統美への反逆』を想起し、 あるときは種村季弘の体系への拒否を連想。ハイデガーがやたら身近に感じられる。

 日が傾いてブックオフ長泉店へ自転車で行く。辻邦生西行花伝』新潮社1995年 15刷函帯付、乾くるみ『カラット探偵事務所の事件簿 1』PHP文芸文庫2012年 13刷帯付、平松洋子『おとなの味』新潮文庫2011年初版、計324円。乾くるみは贈呈用。 平松洋子は以前買った本は贈呈済み、これは自分用。ブログには書いてないけれど、 最近十冊あまりを知人女性たちに贈った。

 ネットの見聞。

《 日々、展覧会に限界を感じている。特に、高いお金を払って 作品を海外から借りる展覧会は、美術館の衰退を招くだけである。 コレクション活用の道を探るべきである。 》 泰井良 静岡県立美術館

《 短い民主党鳩山小沢政権のときだけ、勤労者の賃金は上昇していたのよ。 知らなかった?皆でマスコミに乗せられて「政治とカネ」と小沢さんを、 「ルーピー」と鳩山さんを攻撃してやめさせてしまって、失敗だったね。 勿体なかったねえ。 》壺井須美子

《 危機管理能力の欠如というのは、せめて菅元首相レベルの「手際の悪さ」 に対して使うべき言葉であって、何が起ころうと遊びたくて遊びたくてうずうずして ガマンできない首相というのは遥か別次元の存在だと思うのですが。 》 nakas

 ネットの拾いもの。

《 そうか、「報告・連絡・相談」なのか。報告、連絡・・・・掃除、 じゃないよなあ、となんとなく思ってました。 》