「東京自叙伝」

 奥泉光『東京自叙伝』集英社2014年3刷を読んだ。幕末以降の近現代史を、東京を舞台に 描いたもの、と言えよう。そのために作者は語り手に奇想天外、アクロバティックな 方法を用いている。この発想には驚いた。簡単に書けば、東京の地霊が鼠、猫、人間 …などに憑依し、彼らがその時代をうまく立ち回って生き、その時々の東京を語る、 というもの。あの歴史的出来事の裏には私が一枚噛んでいた、という虚実入り乱れた (全部嘘)饒舌な騙りが延々と続く。しかしそのありようは、日本人そのものではないか。

《 しかし、ここにおいて私は深く悟りました。即ち、東京中の人間がじつは私だったのだ、 と。 》 416頁

《 私──私たちはただ無責任に浮かれていればよい。無闇と景気を煽って祭りの麻薬に 痺れては、意味のない言葉を喋り散らしてワイワイはしゃいで居ればよい。 》 423頁

 破格の小説だ。傑作かもしれない。

 午後、隣の長泉町にある特種東海製紙のPAMへ友だちと行き、駒形克己展を観る。
 http://www.tt-paper.co.jp/pam/pam/index.html

 ネット注文した古本、洲之内徹『藝術随想 しゃれのめす』世界文化社2005年初版帯付 1800円が届く。一日二日に話題の『芸術随想 おいてけぼり』の姉妹編。最近になって 読みたくなった。

 ブックオフ長泉店へ自転車で行く。80円セール。奥田英朗『オリンピックの身代金』 角川書店2008年初版、高橋昌一郎『理性の限界』講談社現代新書2009年5刷、泉鏡花 『薄紅梅』中公文庫1993年初版帯付、霧舎巧新本格もどき』光文社文庫2010年初版、 山田風太郎『風眼抄』角川文庫2012年初版帯付、計400円。『オリンピックの身代金』 は贈呈用。

 ネットのうなずき。

《 人は、その行為によって罰せられる事はあっても、思想によって罰せられる事はない。 近代社会の基本です。 》 ネットゲリラ

 ネットの見聞。

《 1962年の東京オリンピックの時も思想的変質者が取り締まられ赤瀬川原平は逮捕され 読売アンデパンダンは中止に追い込まれた。各所で衛生観念が高められ戦後からのバラックが 「整理」された。ハイレッドセンターの路上清掃とマスクと白衣はこれを逆手にとったものである。 》  椹木野衣 

《 そもそも日本芸術院(第一部)って、日本の美術・文化に何か貢献してんのかな??   》