「月虹」

 昨夜ブログを公開、一息ついてネットを散策したら下の記事。

《 第50回谷崎潤一郎賞中央公論新社主催)が9日、奥泉光さんの「東京自叙伝」 (集英社)に決まった。 》

 読んでいる時に決定、か。旧聞になるが、二日の毎日新聞夕刊コラム「ナビゲート 2014」は奥泉光の執筆。題は「『分りやすさ』偏重に異議」。

《 先日、翻訳家の鴻巣友季子さんと翻訳をめぐって対談する機会があって、 日本語の翻訳の世界では、原文に「忠実」な訳が追求されてきた一方で、 近頃ではますます「こなれた」訳が、なによりも分りやすい訳が求められ、 苦労するという話を聞いた。 》

《 実際やると分るが、「忠実」な翻訳というのはほとんど無理であり、 その無理をなんとか通そうする翻訳家の苦闘が、日本語の表現の領域を 大きくしてきたのである。 》

《 日本語になめらかに溶け込む訳文は心地よいかもしれぬが、異質な ものが持つ「批評性」を消し去ってはなんにもならぬ。 》

 未谷おと編、松村みね子訳詩集『月虹』盛林堂ミステリアス文庫2014年初版を読んだ。

《 我が凡ての異なれる調(ふし)を集めて一つの流れとなし無音の海に流れ入らしめて、 我なんぢを礼拝せむ。 》 タゴール「ほめうた」

 併録の片山廣子の実名で書かれた「ダンセイニの脚本及短篇」にはこんなくだり。

《 中で最も多く読まれているのは The Book of Wonder,Fifty-one Tales,Tales of Wonder の三つであろう。その中でも私は Tales of Wonder の中にある「海陸物語り」 が好きだ。(中略)この話にはダンセイニのユーモアも夢もあって、其上に珍しく たくさんの人間味が溢れている。 》

《 同じ本の「食卓の十三人」も面白い。 》

 この Tales of Wonder は、『世界の崖の物語』河出文庫2004年初版の「II 驚異の 書」に収録されている。

《 Fifty-one Tales は悉く短い物ながら、すべてが草の露のように透明な涼しい智と ユーモアに光っている。誰にでも愛されるのは此本であろうと思う。 》

 これは『短編集 妖精族のむすめ』ちくま文庫1987年初版に「五十一話集」 という訳で収録されている。

 ブックオフ長泉店で四冊。『朝日ジャーナル』編『世界のことば』朝日選書1997年 7刷帯付、浅田次郎・選『猫のはなし』角川文庫2013年初版帯付、石持浅海『見えない 復讐』角川文庫2013年初版帯付、いその・えいたろう『フェチ楽園考』ちくま文庫 2004年初版帯付、80円セール、計320円。

 ネットの見聞。

《 日本の新聞は批評性と部数を同時に失いつつありますが、 たぶんその二つの要素は相関しています。 》 内田樹

《 ネオナチとの関連性が暴露された閣僚たちは自分たちの政治的ポーズが 国際世論にどのようなリアクションをもたらすかについてはまったく 何も考えていなかったようです。自分たちの言動を国際的な文脈において 吟味する習慣のない人間はとりあえず「グローバル」なんとかについては 語る資格ないです。 》 内田樹

《 安倍の言うグローバル化とは、一般国民はグローバル・ キャピタリズムの奴隷になれってことだよ。 》 池田清彦