「日本の歴史をよみなおす」

 網野善彦『日本の歴史をよみなおす』筑摩書房1991年7刷を読んだ。平易な文章で 驚くことが書かれている。まさしく「よみなおす」。何冊か読んだ彼の本でこれが 最も刺戟的。

《 そうした状況の中で、なぜ軍隊と法律に片仮名が使われたのか。これはまだ 解決されていない問題だと思いますが、多分明治国家の本質にもふれる問題が そこにあると予想されます。 》 42頁

《 市場も同様だったようです。日常の世界、俗界から、モノも人も縁が切れるという 状態ができて、はじめて商品の交換が可能だったのではないかと考えられるわけです。 》  55頁

《 この「賤」ということばですが、古代の賤民は、われわれが近代的な感覚から 賤(いや)しめられているとだけ考えては間違いのようです。 》 62頁

《 ですから、神に直属する「賤民」、あるいは貴人の墓のような聖なる場所、聖地の 守護をする役割をもった人は、近代的な感覚でとらえた賤民とはだいぶ性格のちがう ものとして、考えなければならないと思います。 》 62頁

《 天皇が十四世紀の動乱以後、まったく権力を失い、権威もおおいに低下しながら、 なぜ生き延びられたかという問題と、日本の社会に、このような一神教的な宗教がなぜ 根づかなかったのかという問題とは、たぶんその根は同じなのではないかと思うのです。  》 76-77頁

《 ここでとりあげたのは、そのほんの一部の問題のみにとどまるのですが、 江戸時代に固定化される「穢多(えた)・非人」や「遊女」、博奕打に対する差別が、 決してその人びとのみの問題でなく、日本の社会、思想、文化の全体にかかわる、 きわめて重大な問題であったことを知っておいていただきたいと思います。 》 140頁

《 しかし建前上の男の優位はたしかに確立しており、それを継承、強化する形で 明治の民法が制定されていくことになるのではないかと思います。 》 189頁

《 ただ天皇統治権は東国におよばなかったことは、重要なことで、 やがて蒙古襲来後は九州にもおよばなくなります。 》 220頁

《 現代は権力の性格というより、むしろ権威のあり方を否応なしに変化させる ような転換期にはいりこんでいるように思うのです。 》 233頁

 ネットのうなずき。

《 我が国の文部科学政策がだめなのは、官僚試験の出来の良い人材がみんな他の省庁に 行ってしまうからだと思う。やることなすことあまりにも頭悪すぎる感じがする。 》  阿川大樹

 ネットの見聞。

《 「自然は私たち人類に優しくない。まれにきわめて冷酷になる」という認識が必要です。  》 木村龍治
 http://sayusha.com/catalog/books/oujseries/p=isbn9784903500744c0344

《 24年前、デビュー作が出ただけなのに会社を辞めて作家専業になった僕が 最初にしたことは嫁さんにプロポーズすることだった。今でも無謀だと思うけど、 それを受けた嫁さんも蛮勇だったと思う。今ならお互い躊躇するのなあ。 》 太田忠司

《 一日を愉快にしてくれるものの多くは、実は無駄なんじゃないか。 》 古書日月堂

 ネットの拾いもの。

《 人の本棚を笑うな。 》

《 本は売るほどあるんだ。 》