「理性の限界」

 高橋昌一郎『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』講談社現代新書 2009年5刷を読んだ。副題「不可能性・不確定性・不完全性」にぞくっと来る。 専門家と聴衆の問答、討論形式で進む「アロウの不可能性定理(選択の限界)」 「ハイゼンベルクの不確実性定理(科学の限界)」そして「ゲーデル不完全性定理 (知識の限界)」の解説。と、書いてもその内容を簡略に記すことはもう不可能。 一読ではとても理解できたとは言えないが、じつに面白い。わかりそうでわからない。 でもしっかいり読めばわかりそう。私のような門外漢にはとても刺戟的だ。

《 私が最大の目標にしたのも、なによりも読者に知的刺激を味わっていただく ことである。 》 「おわりに」

 ネットの見聞。

《 人の言うことはあんまり聞かないくせに、本の影響は受けやすい。 》

《 『サンリオSF文庫総解説』の次は『ハヤカワ文庫SF』だ、いや『SFシリーズ』だ、 という声が上がっているが、売れるかどうかは別にして、当編集室が思い浮かべたのは 『富士見ロマン文庫総解説』。 》 藤原編集室

 本棚には最初の刊行の一冊らしい作者不詳『エロティックな七分間』1977年初版 以下、十四冊。未読。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E8%A6%8B%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%83%B3%E6%96%87%E5%BA%AB

 官能小説なら団鬼六の大長編『花と蛇』の総解説を読みたい。手元の『花と蛇1 誘拐の巻』角川文庫1984年初版は、解説・吉行淳之介。『2涕泣の巻』は宮本輝、 『3飼育の巻』は高橋源一郎、『4調教の巻』は小池真理子。つづく『5調教の巻』 は西村京太郎。『6羞恥の巻』『7屈辱の巻』『8号泣の巻』の角川の解説は、 本がないのでわからない。そして角川文庫では出ず、富士見文庫で『9完結篇』 1986年初版が出て、解説は松田修。彼は以下の文で結んでいる。

《 私は本書の、わけて最終巻の解説者たることを光栄に思っている。 》
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E3%81%A8%E8%9B%87

 大長編『花と蛇』よりも、私は長編『肉の顔役 正・続』のほうが好み。内容は 同工異曲だけれど。彼の小説、海外では受けないだろうなあ、と思う。古臭いと 官能小説家綺羅光氏は私に言った。そうかも知れない。しかし、官能小説に一つの 様式美を確立したと思う。『続 肉の顔役 上』幻冬舎アウトロー文庫1998年初版 の帯。

《 羞恥の炎が母娘を淫靡に焼く尽くす 》

 昔、団鬼六の小説は「暗黒文学」とも呼ばれた。公式年譜には
《 昭和57年五十一歳 三二書房より『団鬼六暗黒の世界』刊行。 》
とあるが、『団鬼六・暗黒文学の世界』三一書房だ。高くて購入をあきらめた。 絢爛たる暗黒の世界だ。
 http://oniroku.net/backgrounds.html

 ネットの拾いもの。
《 昭和51年 第一回鬼六賞の受賞者は姫野カオルコ。 》