「幽霊紳士」

 未明〜朝の台風18号接近通過で大雨。夜中によく目が覚めたせいもあり、気力が いまひとつ。しかし、暴風雨、やっぱり興奮。三島市の広報。

《 市内の佐野地区と北上地区に土砂災害警戒警報が発令されました。
  午前8時25分、この地域に避難勧告を発令します。 》

《 伊豆箱根鉄道駿豆線の午前8時45分現在の運行状況です。
  台風18号により、伊豆長岡〜田京間にある川の水量が危険水域に達したため、
  全線で運転見合わせとなっています。 》

 十時四十五分俄かに晴れてきた。

 午後、味戸さんへ絵を送り、ブックオフ長泉店へ寄る。歌野晶午『舞田ひとみ14歳、 放課後ときどき探偵』光文社文庫2013年初版帯付、九鬼周造『「いき」の構造』講談社 学術文庫2003年初版、本格ミステリ作家クラブ・編『ミステリ・オールスターズ』 角川文庫2012年初版、計324円。既読の『「いき」の構造』は下の理由で購入。

《 近代の哲学的な著作に注釈を施し、解説を付すという、あまり例のない試みを 行った。 》 藤田正勝

 昨日のヴァレリー『文学論』、深く共感し、賛同することの多い、励まされる本だった。 美術作品にたいする自らの考えが間違ってはいないと実感できた。きょう パラパラと再読して、やはりいいなあ、と思う一行。

《 個性(オリジナリテ)以上に尊いものがある、それは世界性(ユニヴェルサリテ)である。 》 62頁

 ちょっと見解が違うかな、というものも当然ある。

《 この水盤に、四十センチの深さがあろうと四千メートルの深さがあろうと、 そんなことはどうでもよいのだ。僕らにうれしいのはその水の輝きだけだ。 》 82頁

 以前、洋画家坂部芳隆氏の絵について拙文を書いたが、その一節。

《 息を呑むような静けさである。そして、その湖水の 水面、水鏡のごとき水面、 そのとてつもなく深い水底から形成される湖水の 全容量が必然的に有する稠密な実体の、 その外部(水面)に表れる情景の、圧倒的な量の水の存在が放つ息詰まるような静けさ、 それが静謐である。 》
 http://web.thn.jp/kbi/zakki1.htm

 この秋の出版には目が眩む思い。トマス・ピンチョン重力の虹(上・下)』新潮社、 『ハリー・クラーク』パイインターナショナル 、『挿絵画家 カイ・ニールセンの 世界』KADOKAWA/中経出版松浦寿輝『明治の表象空間』新潮社など、実物を手に してから購入を考えたい新刊が目白押し。新古書店に出るのを待つ、なんて宝くじに 当たるようなもの。ハリー・クラーク『アンデルセン童話集』新書館2005年初版の ように、600円で入手できたのは幸運。

 先月出た柴田錬三郎『幽霊紳士/異常物語』創元推理文庫

《 どんでん返しの趣向に満ちた全12話で構成される『幽霊紳士』。 》

 『幽霊紳士』は四種類を持っている。春陽文庫1972年4刷(初刊1971年)、 東京文芸社1974年、集英社1976年、廣済堂文庫1985年どれも全12話で同じ。以前にも 書いたが、八短篇を収録した『火刑』光風社1964年初版、最後の「恐妻家奇談」が 「幽霊紳士」の外延もの。

《 泉真人は、昨日、その小説を脱稿したのである。そして、銀座へ出て、それを 掲載する「オール読物」を発行している文芸春秋社に立ち寄って、稿料八万円を 貰った。 》

 八万円。いい稿料なんだろうなあ。

《 奇妙な「幽霊紳士」が、自分の前に登場してきて以来、杉戸は、身のまわりの どこかに映った自分の影と、自問自答するくせがついていた。 》

《 扼殺された女は、古河定枝といい、麻布の高級アパートで独り暮らしをしている 高等淫売婦であつた。 》

 高等淫売婦とは、また時代を感じさせる。廣済堂文庫の権田萬治の解説。

《 「幽霊紳士」(オール読物昭和三十四年一月〜十二月) 》

 『幽霊紳士』から有栖川有栖『幽霊刑事(デカ)』講談社2000年を連想するが、まだ 読む気が起きない。

 ネットの見聞。

《 小説家志望者の9割は小説を書かない(書き出しても完成させられない)。 小説を書けた者も9割はデビューできない。そしてデビューできた者でも9割は 二作目の壁を越えられず消えていくそうだ。 》 太田忠司

 美術でも同じだと思う。小説家も美術家も無理と早々と悟ったので、余地のある 美術関連の雑文へ突き進むことにした。多くの優れた美術家に出会えた。幸運。

《 そんなワタシなので、マーサ・グライムスのシリーズはすべて「なんちゃら亭の なんちゃら」で済ますことにしている。あれ全部正確に言える人っているの? 》  大矢博子
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA

 手元には九冊、言えない。ノン・シリーズ『桟橋で読書する女』文春文庫1994年を含め、 未読。

 ネットの拾いもの。

《 今の日本に最も要らない2人 》

 最も必要な二人は天皇と皇后だけど。オレじゃないよな。