「続・日本の歴史をよみなおす」つづき

 網野善彦『続・日本の歴史をよみなおす』筑摩書房でつくづく思ったのは、 言葉の詐術、よく言えば思い込みが今も横行していること。

《 先ほどもふれましたように、輪島の頭振(水呑)の中には、土地を 持てない人ではなくて、土地を持つ必要のない人がたくさんいたことは 明白といってよいのです。とすると、百姓を農民、水呑(みずのみ)を 貧農(ひんのう)と思いこんだために、われわれはこれまで深刻な誤りを おかしてきたことになります。 》 27頁

《 まして、荘園制は本来、自給自足経済であったという、一時期まで 通説だった見方にまったく根拠がないことは明らかです。 》 104頁

《 これらの悪党や海賊の実態は、「海の領主」「山の領主」のような、 交通路にかかわりを持つ武装勢力をはじめ、商業・金融にたずさわる比叡山の 山僧(さんそう)や山臥(やまぶし)などであったことがわかっています。 このように、交通路の安全や手形の流通を保証する商人や金融業者の ネットワークは、十三世紀後半から十四世紀にかけて、悪党・海賊によって 保証されていたと考えられます。 》 138頁

 通説の逆転、転換。北一明の耀変茶碗を思う。
 国宝の曜変天目茶碗より複雑だから、彼は自作を耀変と名づけた。 北氏は国宝の曜変茶碗を安っぽい印刷で見たきりで、どんな輝きだろうと、 想像を広げて試作を続けた。そして釉薬焼成のメカニズムを科学的に解明し、 多様な耀変茶碗を創造した。その後国宝の曜変茶碗を実際に見て拍子抜けした、と。 他の陶工も耀変を名乗っているが、北氏の耀変は一度の焼成による多層構造であり、 そこが違う、と。較べてみたい。
 http://matome.naver.jp/odai/2135013829978219401

 芸術新潮編集部編『やきもの鑑定入門』新潮社1992年27刷(1983年初版) 15頁には、北一明の焼きものの拡大写真四点が掲載されている。 「虹彩による色のシンフォニー 北一明作」とあるだけで、何の説明もない。 その下の写真二点も北の茶碗。「天目釉は粘りが強く、厚くかけられるので、 このような釉肌(上)や釉垂れ(下)がよくできる」という説明のみ。生前、 北氏から聞いた話では、『芸術新潮』で特集を組んだ時には編集部は北一明氏を 知らなかった。誰かから聞いて作品を見て仰天、図版だけを加えた、と。 それから三十年。北耀変茶碗と他の人たちの耀変茶碗を並べて較べてみたい。 それにしても、地元飯田市でもほとんど知られていないとは。
 http://www.minamishinshu.co.jp/center/series/023.PDF

 午後、某画廊で白砂勝敏氏に遭遇。渋谷芸術祭へ応募して入選した、と。 写真を見る。額に入っていて、題は「歴史の塗り直し」。これはいい。 現代アートに欠けている乾いたユーモアがある。展示はたった二日。
 http://shibugei.jp/

 ネットの見聞。

《 13号「ここ数年で一番の勢力」
  14号「1976年以来の大型台風」
  15号「勢力は前回より大きい」
  16号「100年に1度の規模」
  17号「ここ数年で最悪」
  18号「1950年以降最悪の被害といわれた2013年と同等の規模」
  19号「観測史上最大の台風」