「坂東壮一蔵書票集」

 昨夜は続けてジャマイカ出身のレゲエ詩人リントン・クウェシ・ジョンソン Linton Kwesi Jonson のデビュー25周年記念パリ・ライヴCD『 LIVE IN PARIS 』2004年に聴き入った。シビレル。凍れる炎。低温でも火傷する。 クールでなんと熱いことか。レベル rebel ミュージック、ここにあり。
 七曲目「 Reggae Fi Radni 」をオリジナル盤で聴いたとき、甘美なメロデイーに 魅惑されたが、英語の歌詞を読んで背筋が寒くそして胸が詰まった。イギリスで 無残に殺された移民を歌っていた。甘美なメロディーの裏の残酷な現実。
 http://www.worldreggaenews.com/article.php?category_id=1&article_id=4216
 http://www.youtube.com/watch?v=aDQOFyvG6Tg

 朝、銅版画家の林由紀子さんのアトリエへ。『坂東壮一蔵書票集』レイミアプレス 2014年限定250部普及本、本体5500円を受けとる。なんと持ち重りのする本だろう。
 http://www.span-art.co.jp/exhibition/201410bandosoichi.html
 本は開けずに机上に置かれた、ギャラリー・オル・テールのグループ展に出品する 二十センチ足らずの丸い額に収まった新作鉛筆彩色画に注目。ネットの画像とは えらく違って、肩の力がうまく抜けた軽(かろ)みのある絵。これはいい。 浮力がある。感想に林さんも納得。しっかりした修練を経たからこその軽み、浮力。 安藤信哉の絵に通じる。
 https://twitter.com/PsycheYukiko
 http://or-terre.jimdo.com/
 創元推理文庫で来年二月に刊行されるタニス・リーの表紙画像のコピーがある。 原画は少し大きいほどだと言う。これはまたいい。欲しくなる。既に欲しい人が いるとか。そうだろうなあ。表紙目当てで買うことになるわ。

 帰宅してさっそく『坂東壮一蔵書票集』を開封。凝った函。すっと開く。 なんとシックで瀟洒な。紺青の布装、丸背。この手ざわり。手にする喜び。 そして絵を愉しむ。まえがきにあたる「銅版画、そして蔵書票への想い」には、 切々と胸に迫るものがある。引用したくなったが止めておく。ネット未掲載の、 静岡新聞に書いた作品紹介を転載する。

《 「仮面」36×25センチ 銅版画 1968年
  坂東壮一(一九三七年生)氏は今春、銅版画集「仮面の肖像」を出版 しましたが、それへの出発点といえる作品です。
  一九六〇年代から七〇年代にかけて版画家は。深海幻想ともいえる作品を 次々に制作しました。それらには、無音の深海に潜むさまざまな生きものが 描かれています。
  想像の深海を幻視し、何物かを描き出すことが、版画家にとって第一の 関心事であったようです。日常的に見えるものを描写するのではなく、内面に 広がる無意識の海へ探照灯を沈め、そこに見えてくる幻像を描くことが、 版画家としての掛け替えのない創造行為だ、と見定めているようです。この 沈潜する仮面の虚ろな眼は、深海のさらなる奥を映しているようです。 》  静岡新聞2001年4月22日朝刊

《 「草かげろう」 25×17センチ 銅版画 1987年
  エッチングという技法で制作された銅版画です。この技法独特の精密な 線描により、草むらの雰囲気が見事に引き出されています。
  坂東氏は、人間存在の隠された深淵─だれもが持つ深い孤独を主題に してきました。作品には、物も人物もそれだけ見れば現実そっくりに描かれて います。
  けれども、その情景は実際にはあり得ない非現実の世界です。この亀裂から 見えてくる主題が、見る人の心に深い印象を刻みます。
  作家の深い洞察と、版画の間接的な表現法により、主題が感傷的に流される 危機の一歩手前で、見事に回避されています。 》 静岡新聞1999年7月31日朝刊

 やっぱり坂東氏の言葉を少し紹介しよう。

《 文章や詩に、版画が添えられた美しい本を繙いた時、本が好きな人ならば、 そこに素晴らしい世界を見ることが出来るのではないだろうか。そして、見返しに 持ち主の蔵書票が貼られているとすれば、その人にとっては、この上ない喜び なのではないだろうか、と、まあ、こんなことを夢想しながら仕事に取り組んで いる。 》

 ネットのうなずき。

《 「金より大切なものがある。それは民の安寧である。 」内田樹 》

 ネットの拾いもの。

《 カジノ、一か八かやってみたらどうだろう。 》

《 キタマクラ=魚 危険。食べると北枕になります。 》