「 奇想の展覧会 」

 1日に話題の笹木繁男『ドキュメント 戦後美術の断面 作家の足跡から』。 印刷漏れ(白紙)のページがあった。著者とのメールの遣り取りの一部を転載。

《 114−115ページ
  118ー119ページ
  122−123ページ
  126−127ページ
  が印刷されておりません。 》

 完全本が直ぐに送られてきた。

《 業者の話では、ご指摘の脱落分のページは、すべて1枚分として展開するページに該当しており
  考えられるは、印刷工程で、静電気か何かでページがめくられ印刷が乗らなかったと考えられる
  のことでした。その場合他の本には影響を及ぼさないとのことです。
  実物が到着してから会社で分析するとのことです。
  おかげさまで、売れ行きが好調で、手持ち残が僅少となっています。早く見つかって良かったです。  》

 欠陥本は昨日返送したが、珍しいので貴重本になるかも。

 ある着想にこだわると、それに関連する論述が呼び寄せられるようだ。 何気なく手にした種村季弘(すえひろ)『奇想の展覧会』河出書房新社1998年初版、 「メービウスの帯の肌ざわり──赤瀬川原平」にこんな記述。

《 人間にかぎらず、都市共同体も、国家も、ひょっとすると宇宙も、 これが金無垢の中身という実体はないのかもしれない。 》 100頁

 金無垢の中身という実体はないのかもしれない……。ここで出合うとは。 もう一つの「包装の論理──赤瀬川原平」にはこんな一節。

《 いい換えれば、包装によって強調された表面性が逆に内容の不在を 雄弁に物語りはじめて、この不在性が真白なバクテリアのように表面に顕化し 繁殖するのである。しかし深部を覆うこの表面の極端な誇張は同時に表面の否定だ。 なぜなら眼をうばう表面の偽の輝きを誇張すればするほど、その表面性は 内容の不在を指示してしまうからだ。 》 81頁

 す、鋭い。さすが種村季弘御大。本を何冊も恵まれた。

 ブックオフ長泉店で二冊。小森健太朗『マヤ終末予言「夢見」の密室』祥伝社文庫 2010年初版帯付、柳広司『ロマンス』文春文庫2013年初版帯付、計216円。

 ネットの見聞。

《 (みなさん、ご存知ないでしょうが、著者は無料で自分の本をもらえるわけではないのです。 友人や知人に本を送る場合、本を買うのです) 》 柳美里

 そのつど著者へお礼状を出しておいた。やれやれ。

 岡崎武志山本善行=責任編集「気まぐれ日本文學全集」に平井功が入っていた。 公開当時未知の作家だったが。山名文夫はどんな文章家だったんだろう。 それにしてもユニークな選考だ。
 http://www.kousakusha.co.jp/DTL/shinbungaku_zen.html#top

《 また、一人称小説が陥りやすい失敗に客観性の欠如があります。 小説なのだから主観ではあるのですが、その主観を作品に織り込むには 非情の客観を要します。

  たとえば森に菫が咲いていたとする。「まあ、美しい菫」と 中学生文芸部員の日記なら綴ってもよいですが、プロの小説なら、 菫が美しい+美しいと自分が感じた+感じている自分、 この三点にカメラが置かれなければなりません。 》 姫野カオルコ

 私は非力を自覚しているので小説を書かない。絵画も描かない。 「非情の客観」。これで画家は己の力量をまざまざと魅せつける。 プロの見者はこの三点を冷徹に計測する。日曜画家にはこの三点が致命的に欠けている。

《 重要なことはスキルではなくセンスであり、センスは「多くを感じる」 ことで磨かれるファジーで見えない才能。 》 坂井直樹

 センスとはそういうものだなあと思う。センスをもっと磨かなくては。

《 「消費税増税ができないと、アベノミクスが失敗だったと思われる」 》

 失敗は明白じゃないかい。

 ネットの拾いもの。

《 買おうかどうか迷ったら買え、という方針で臨んだら無制限に本が増えてゆくのに気づき、 以後は、迷おうかどうか、まず迷うことにしておりまする。 》