「 忙しい日でも、おなかは空く。 」

 疲れた心を慰撫してくれるものは、人によって様々あろう。今の私には、 それは人肌の温もりでもなく、絵画でむなく、焼きものである。北一明の茶碗を 掌に載せて釉薬の絶妙な輝きを鑑賞し、その感触を味わう。それが心をじっと 落ち着かせ、慰撫してくれる。なんと老人趣味か、と笑えば笑え。北一明が生前 書いていたが、自分を裏切らない確かなものは土だ、と。土から焼成された 北一明の焼きものを、最近になって愉しむようになった。K美術館では芸術品として 近寄りがたいものであったが、手に持ってじっくり玩賞する。 これこそ本来の鑑賞法であろう。絵は接触は禁物だが、茶碗は持ってみなくては その本質的な魅力を感じとれない。掌上の美を愛でる。やはり年寄りじみてきたか。

 昨日買った平松洋子『忙しい日でも、おなかは空く。』文春文庫をパラパラと読む。 掉尾「粉引のうつわ」。

《 私は息を飲んだ。ひとつの粉引は毎日毎日使いこんで、ほんわりにじんだ染みが いい具合。もうひとつの粉引は、大事に囲いこまれたままと見えて、変化もなければ 進歩も退歩もない。 》 213頁

 北一明の茶碗でお茶を、あるいは酒を飲もうとは思わない。掌に載せて愉しむ。 茶碗に変化はない。が、見れば見るほど、その桁違いの創造美に眼が醒める。 静かに時を超える美の極み。

 なんて気取ったことをたまには書いてみたくなった。ここで一献、となるが、日本酒は 紙パックの純米酒が冷蔵庫で冷えている。安いけれども好み。大吟醸酒はだめだめ。

《 片口に冷酒を満たす。
  とく、とく、とく。
  軽やかな音をたてて、お酒が満つる。 》 80頁

 いかんいかん呑みたくなってしまう。

《 水を切って味わいがぎゅっと凝縮された豆腐とオリーブオイルの相性のよさ、 これが格別だ。 》177頁

 エクストラ・バージン・オイルはあるが、豆腐は買ってなかった。モッツァレラチーズと 間違うほどの味とは、やってみるしかないだろう。モッツァレラチーズって、あれだよなあ。 作り方。

《 1 木綿豆腐1丁を30分ほど水切りする。
  2 1をお玉などで大きく切り分けてうつわに入れ、エクストラ・バージン・オイル 大さじ3/4をかけて塩をふる。 》178頁

 最高の伊豆の塩はある。明日が楽しみ。忘れなければ。

 ブックオフ沼津南店へ自転車で行く。富田常雄姿三四郎(天・地・人)』講談社 大衆文学館文庫1996年初版、三冊、計324円。この文庫は全百巻。鮎川哲也から 横溝正史まで三十冊あまり持っているが、全部集めようとは思っていない。角田喜久雄中薗英助藤原審爾など他の本で読める小説を加えるとこれで十分。
 http://homepage1.nifty.com/kybs/ta100_02.html

 んなことで本棚を何気なく見ていたら、田中光二『わが赴くは蒼き大地』ハヤカワ文庫JA 1975年初版が。深沢幸雄の表紙絵のこの本、未所持だとばかり思っていた。いやあ老化 現象か。単なる物忘れと思いたい。まあ、本がそこらじゅうに積んであるのが問題。 『姿三四郎』は、文学全集の一冊本がどこかにあるはずだけれど、候補の場所は本の山の 奥の奥。昨夜探索をあきらめた。昭和二九年に春歩堂から出た一冊本の帯文から。

《 春歩堂の奉仕的大出版/誰にも読ませたい/誰でも買える値段/八〇〇頁 三〇〇円 》

 解説も入れて七五四頁。ぎりぎり四捨五入か。

 ネットの見聞。

《 この世の中、たいがいの進歩は行動力のある人によってもたらされ、たいがいの問題は 行動力があるように見えて実は深く考えていないだけの人によって引き起こされる。 》  道尾秀介

《 2年前に「まっすぐ、景気回復。」と謳っていた安倍政権が景気後退をもたらした今 「景気回復、この道しかない」とうそぶく。 》 中野晃一

《 安倍政権の本質は「買弁」性である。(「買弁」とは「植民地宗主国に従属することで 自己利益の増大をはかる植民地現地人」のこと) 》 内田樹

《 衆議院解散でダンス営業規制を緩和する風営法改正案は廃案になりました。 来年の通常国会で再提出される見通しです。 》

 ネットの拾いもの。

《 「生年月日が3日違うだけだし彼の出身大学自分も受かったしキョーダイの名前に 「理」入ってるやつがいて両親の命名センス近いし、向井理とおれはほぼ同一人物」 って話を友人らに面白おかしく話していたときのおれの心のむなしさよ。 》

《 女性誌のアンアンに対抗して男性誌を作ろう。誌名はチンチンでどうだろう。 》

 私的備忘録。
《 『水俣と福島に共通する10の手口』
  1、誰も責任を取らない/縦割り組織を利用する
  2、被害者や世論を混乱させ、「賛否両論」に持ち込む
  3、被害者同士を対立させる
  4、データを取らない/証拠を残さない
  5、ひたすら時間稼ぎをする
  6、被害を過小評価するような調査をする
  7、被害者を疲弊させ、あきらめさせる
  8、認定制度を作り、被害者数を絞り込む
  9、海外に情報を発信しない
 10、御用学者を呼び、国際会議を開く   》