「 妖魔の横笛 」

 昨日届いた鷲尾三郎『妖魔の横笛』盛林堂ミステリアス文庫を読んだ。副題 「少年少女怪奇探偵小説集」。横笛はフリュートと読む。三篇収録。短いので すぐに読み終える。

 古本愛好家彩古の解説冒頭。

《 二〇〇二年に日下三蔵による『鷲尾三郎名作選 文殊の罠』が出版された。 現在にも通用するそのトリッキーな作品が好評だったにもかかわらず、あまり 販売実績はよろしくなかった。それを機に再評価が進むかと思っていたので、 少し残念な気持ちでいた。 》

 難しいものだ。手元には上記『鷲尾三郎名作選 文殊の罠』河出文庫と生前 最後の本、『過去からの狙撃者』カッパ・ノベルス1983年初版のみ。

 北森鴻『ちあき電脳探偵社』PHP文芸文庫2011年初版を連想。 これがいかに優れていたかを改めて思う。凄い作品を発掘するのは困難を極める。 『ちあき電脳探偵社』は『小学三年生』に1996年4月号から一年間連載。 文庫オリジナル。これも誰かが発掘したのか。

 発掘といえば、きょう届いたCD『ROYAL BAND de THIES 』2012年(1979年録音)。 英文のライナーノートから一部を拙訳。

《 セネガルの首都ダカールから東へ74キロにある都市THIES。(中略)セネガル 第三の都市。(中略)私はとても私的な縁でこの街にいた。初めて訪れたのは2004 年の秋だった。二十年、時が止まっている印象だった。生活のペースはすごく ゆっくりで、とても静かだった…その夜、セネガル滞在中にはいつもするように 生演奏を聴きにいった。そのナイト・クラブのサウンドは鳥肌モノ(terrible) だった。 》

 ROYAL BAND de THIESとの出会いだった。

《 さっそくカセット・テープを探し求めたが、ほんのわずかしかなかった。(中略) 私はひどくがっかりした。この凄いバンドが全くもって闇の中に葬られている。 あまりにも過小評価されている。 》

 ここからが発掘の面白さ。とうとうレコーディング・スタジオで未公開の 録音テープを発見する。

《 「何というグループだ…」私は感嘆。(中略)一も二もなく私は決断した。 彼らの録音を公開しよう、彼らの最初のものから始めよう、と。 》
 http://www.terangabeat.com/index.php?/releases/royal-band-de-thies---kadior-demb/

 二度目を聴いているところへ知人女性から視察依頼の電話。セネガルにいたことのある 彼女はティエス THIES を知っていた。けれども音楽のことはご存知なかった。

 古本は原則本にカバーをしない。新刊本はカバーをつけてもらう。『高城高全集』 創元推理文庫全四冊2008年初版が五冊ある。あれ。一冊は青木正美『古本屋群雄伝』 ちくま文庫2008年初版だった。同じ時期に購入したので間違ったようだ。本の山脈を ちょっと動かすと山体崩壊を招く。あ〜あ。整理はお手上げ。

 ネットの見聞。

《  訃報を知って再訪してもどうにもならんよ。 生きてる時に、 埋もれてる宝を掘り出して 人の目に知らせてあげなきゃ。 》

 上記 ROYAL BAND de THIES が好例だ。

《 画廊とは一代限りのビジネスなのかも。 》

 だと思う。芸術に関わる多くのものが一代限りだと思う。継承できる型があると 伝統になる。それは多々劣化コピーになる。

《 古書店さんの目録ナビ 》
 http://www.moku-navi.com/