「 人形の夜 」

 昨日ふれたマーシァ・ミュラー『人形の夜  シャロン探偵物語講談社文庫1980年初版を読んだ。 二月の雨の降る深夜のサン・フランシスコ。五七歳の骨董屋の女主人が殺された。三十歳近い女探偵 シャロン・マコーンの知り合いだった。彼女の捜査が始まる。一昨日の『謀殺の弾丸特急』 の活劇はないが、昨日の『エヴァ・ライカーの記憶』のような雄大さはないが、これはこれで地に 足のついたミステリとして楽しめた。

《 「忘れてたわ」考えてみると、去年の秋以来、私が忘れていることはいっぱいあるらしいのだ。  》 21頁
 昨日友だちに同じことを話した。不思議な暗合、かな。

《 「きっと、がらくたが好きなのよ。それを生き甲斐にしていると言っていいんじゃ ないかしら」 》 23頁
 これまた自分のことかと思ってしまった。以下のブログを朝読んでそうだよなあ、と思ったばかり。
《 パソコンやスマートフォン同様、新しいものは「新しい」と云うこと以上の価値はなにもない。  》  
 降りしきる雨は昼過ぎ、憑き物が落ちたようにすっと止んだ。窓を開けるとぶわっと温い湿気。 そして晴れてくる。ブックオフ長泉店へ自転車で行く。エラリー・クイーン『間違いの悲劇』 創元推理文庫2011年3刷、ジュフリー・ディーヴァー『追撃の森』文春文庫2012年初版帯付、 週刊朝日・編『戦後値段史年表』1996年3刷、計324円。

 ネットの見聞。
 諏訪哲史『偏愛蔵書室』国書刊行会で取り上げられた作家たち。
《 取り上げる作家はホフマンスタール梶井基次郎リルケ柳田国男林静一ボルヘス島尾敏雄、ピアス、内田百間、ジュネ、吉岡実澁澤龍彦、カーヴァー、宇野浩二、シュルツ、 李賀、ビオイ=カサーレス中井英夫ゴンブローヴィチ埴谷雄高ロブ=グリエソレルス山口椿日野日出志プルースト横光利一、ボウルズ、西脇順三郎、シンガー、谷崎潤一郎、 ルデュック、三島由紀夫、ガッダ、幸田露伴、フォークナー、種村季弘、ウォー、徳南晴一郎ヘミングウェイ深沢七郎、ガルシア=マルケス田中小実昌中上健次ベケット沼正三ルーセル寺山修司丸尾末広ソログープ、正岡蓉、老舎、ケッペン、鷲巣繁男、デュヴェール、 大泉黒石、レイ、畑耕一、桐山襲、アクショーノフ、石上玄一郎ペレック池田得太郎、マレルバ、 小田仁二郎、シクスス、山崎俊夫、モオラン、萩原恭次郎、ギュイヨタ、荒木良一、ポンジュ、 秋山正美わたせせいぞう江戸川乱歩カフカ、仏説「苅萱」、ハイム、太宰治レアージュ泉鏡花、バーカー、宮沢賢治、サド、石川淳ツェラン川端康成ベンヤミン永田耕衣、 尾崎放哉、ボードレール夏目漱石サルトル岡本かの子ジョイス夢野久作セリーヌ色川武大ラヴクラフト久生十蘭ナボコフ。さすが10000冊分の100冊。 名作奇作怪作ぞろいのセレクト。 》

 未知の日本人作家は、徳南晴一郎、畑耕一、山崎俊夫、荒木良一、秋山正美。さっそく検索。 外国人は姓だけではワカラン。
 どの作品が取り上げられているのだろう。当たるか当たらぬか。マイナーな作家なら当たる率は 高い。石上玄一郎「自殺案内者」、池田得太郎「家畜小屋」、小田仁二郎「触手」、萩原恭次郎 「死刑宣告」(スゲエ題だなあ)……桐山襲は「パルチザン伝説」だろうか、と『パルチザン伝説』 第三書館1984年初版を手にする。挟み込まれた1984年4月6日の新聞の切り抜きにはこれが 「ゲリラ単行本」という記事。その隣には別の記事。

《 控訴取り下げ指導を  土呂久訴訟原告ら要請  宮崎県・土呂久公害訴訟で勝訴した原告、 被害者の代表が四日、環境庁を訪れ、上田長官に住友金属鉱山に控訴取り下げを強く要請した。 》

 宮崎県の黒木睦子さんの裁判を思う。
 https://twitter.com/mutsukuroki

《 対米従属すればするほど、社会的格付けが上がり、出世し、議席を得、大学のポストにありつき、 政府委員に選ばれ、メディアへの露出が増え、個人資産が増える、そういう仕組みがこの42年間の間に 日本にはできてしまった。この「ポスト72年体制」に居着いた人々が現代日本では指導層を形成しており、 政策を起案し、ビジネスモデルを創り出し、メディアの論調を決定している。 》 内田樹

《 今、何が起きているのか、今、現実に日本で国政の舵をとっている人たちが何を考えているのか、 どういう欲望を持っているのか、どういう無意識的な衝動に駆動されているのか、 それを白日のもとにさらしていくという作業が、実際にはデモをしたり署名を集めたりするよりも、 時によっては何百倍何千倍も効果的な政治的な力になるだろうと僕は信じております。 》 内田樹
 http://blog.tatsuru.com/2014/11/26_1711.php