「 モロイ 」つづき

 サミュエル・ベケット『モロイ』白水社1992年新装初版を読了。前半の1部は、 モロイが不自由な体を何とか動かして(這って)自宅へ戻る話。後半の2部は、 モロイを探すように命じられたモランが、一人息子を従えて徒歩で行くが、 途中で足が悪くなり、モロイの住む近くまで行きながら、自宅へ何とか引き返す。

《 私が、モロイの国ということで理解しているのは非常にかぎられた地帯で、 彼はそこの行政上の境界を一度も越えたことがなかったし、その後もたぶん 越えそうもなかった。 》 203頁

 2部でも自転車が出て来る。

《 息子はびっくりして私の顔を見た。着いたら、と私は言った、おまえの からだに合った自転車を買う、できれば中古のを。 》 214頁

 訳者安堂信也の解説にはこんな記述。

《 第一部はアイルランドであり、第二部のモランの町はフランスだと 断言している研究者もいるくらいで、 》 284頁

 自転車つながりで、アイルランド人のフラン・オブライエンとの近親性を感じる。 また、モロイもモランもまるでホームレスの姿で帰宅。それに北一明の晩年を重ねて しまう。荒井謙人というミュージシャンのフェイスブックの記述。

《 7年前に北一明さんから貰ったお猪口で日本酒デビュー
  当時ホームレスの変わった人だった。
   経済的に問題あったけど、本質知ってる人だったな。 》
 https://www.facebook.com/kento.arai.142/posts/704601576303250

 自民党議席減。沖縄は野党全勝。そして世代交代。時代は胎動している。 それにしても、低投票率

《 今回の選挙結果の数字を虚心坦懐にみれば「自民微減、公明微増、民主増、 共産大幅増」で、無党派層がどう動いたかわかるのだが、ほとんどのマスコミは 決まった方向にしか報道しないようだ。 》 いとうせいこう

 静かなので源兵衛川の三石神社〜時の鐘橋〜源兵衛橋のヒメツルソバを駆除。 一時間余りゴミ袋一杯で済んだ。薄着でも汗をかいた。
 午後、静かなのでブックオフ沼津南店へ自転車で行く。大倉崇裕『七度狐 (しちどきつね)』東京創元社2003年初版帯付、梓崎優(しざき・ゆう)『叫びと祈り』 東京創元社2010年5刷帯付、中村雄二郎『人類知抄 百家言』朝日選書1999年初版帯付、 馬場あき子『歌の彩時記』読売新聞社1996年初版、細川涼一『漂泊の日本中世』 ちくま学芸文庫2002年初版、橋川文三・編著『日本の百年4 明治の栄光』ちくま学芸文庫 2007年初版、一冊80円、計480円。80円なのでダブリを承知で買ってしまった。 買う快感を味わう。自転車をせっせと漕いだら汗かいた。冷や汗でなくてよかった。

 ネットの見聞。

《 知る限りの戦後刊行の本で、定価にしてウン万円を超す特装の限定版を除いて、 本文の内容はもちろん字体や余白の取り方までを含めて自分が最も理想的だと思う装丁は、 冥草舎版『死都ブリュージュ』(1976年刊)だ。ただ美しいばかりではなく、 その意匠が内容とも一致している奇跡のように思う。 》 宮下 夕

 本棚の『死都ブリュージュ』を手にとる。

 銅版画家林由紀子さんのツイッターがじつに愉快。コーヒーを飲み終えていてよかった。
 https://twitter.com/PsycheYukiko

《 愛書家地獄ってどんな処?
  全ての本が無線綴じカバー装でバーコードが2段付いている。フランス装がいつの間にか 全部カットされてる。極上のルリユール本が嫌いな作家の物ばかり。全ての本の前所有者が 喫煙家で自作の蔵書印を好み風呂で本を読む癖が。見返しに貼られた値札が絶対剥がれない。  》

《 本棚が全てスチールなのに棚板が可動でなく文庫にも単行本にも5mm程高さが足りない。 稀覯本1冊買うと3日以内に同じ本の極美版が半値で売り出される。絶版本を超高値で落札すると 1週間以内に復刻版が出る。戦前の古書にビニールカバーが変色したセロテープで貼り付けてある。  》

《 探究していた古書を手に入れてみると小口に○○蔵書とマジックで書いてありページの端折り多数、 ピンクとライムグリーンの蛍光マーカーで線引き多数、油性マジックで著者の偽造署名、遊び紙が 破り取られ血か醤油らしき染みが。剥がれた背表紙がセロテープで補修してある。 》

《 全集は「第〇巻欠」しか手に入らない。第〇巻以外の全ての端本は毎日ヤフオクに出る。 蔵書が三千冊を超えると留守中に家人が全て処分する。秘密の書庫を作ると「薔薇の名前」 の修道院長の亡霊が現れて全ての本に毒を塗り、書庫に火を放つ。辛うじて1冊救出した本が 村上ハルキ。 》

《 本を買うため爪に火を灯していると爪の燃えカスが本に落ちて炎上する。親戚の子供が ジャム付きパンを本の上に落とすと必ずジャムが付いている方が下になる。書庫の中の 革装大型本がある日、全て百科事典に変っている。悲願の稀覯本が届いた当夜、 我家だけがノアの箱舟級の大洪水。 》