「 マウロンは死ぬ 」

 晴行雨読。一日雨。家こもり。サミュエル・ベケット『マウロンは死ぬ』(『世界文学全集 99 ジョルジュ・バタイユモーリス・ブランショ、サミュエル・ベケット講談社1976年初版、 収録)を読んだ。昨日の『モロイ』を継ぐ小説、ヌーヴォ・ロマン。『名づけえぬもの』へと つづく三部作の二作目にあたるこれにはこんなくだり。

《 そのときこそ、マーフィーとか、メルシエとか、モロイとか、モランとか、マウロンとか、 こういった連中にもすっかりけりがつくだろう。 》

 すべてベケットの作中人物とか。

《 そう、わたし自身のことを少し話しておこう。わたしのからだは、普通使われている 軽率な言い方を借りれば、不能である。わたしのからだがやれることといったら、 まずなにひとつない。ときには這いずり回ることができなくなったわが身を残念に 思うこともある。 》

 前作のモロイ、モランのなれの果てのよう。訳者高橋康也の解説から。

《 モランとモロイがそれぞれ自分の身上話を書かされることによって、いわば意図せずに 素人から作家へ変じる過程を示していたとすれば、始めから作家として自覚的に定立されており、 書くことを意思する主人公として現れるのが、マウロンである。これはおそらくかつて書かれた 最も完璧な「小説の小説」である。 》

 と称賛されても、はあ、そうでうか、と言うほかなない。それはさておき、この一冊、なんとも 興味深い収録だ。函カバーの紹介文が煽る。

《        酷似した双子の兄弟の死『C・神父』
          Jと呼ばれる女性の死『死の宣告』
    全身麻痺のマウロンの死『マウロンは死ぬ』
        この三様の死を描いた三つの作品の
         底流には、〈死〉という絶対的矛盾の
  前に直面した人間存在の真空的状態を通じて、
           実存の根底への不可能な接近を
         実施しようとする文学的昇華がある。  》

 ネットの見聞。

《 「アベノミクス解散だ」としながら、選挙が終わった途端、集団的自衛権の行使容認などでも 「力強い支持をいただいた」と強気の安倍首相にも、「国民もマスコミも権力者にこれだけ 言いたい放題言わせていいのか。情けなくて言葉もない」と話した。 》 東京新聞
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014121602000129.html

《 「選挙総括」げんこ書き上げて送稿。有権者は「大きな変化を望まなかった」のだが、 その理由は「なんだかもっと大きな変化が外部から,想定外のかたちで到来しそうな気がするから」, 今は「中腰で待機」という気分になっているという話を書きました。 》 内田樹

《 戦後から高度経済成長器に就職した親世代と話してて「うーん、前提が違う」 と思ったことがよくあったけど、バブル世代と経済について話す若者は、 ああいう感じなんだろうなあ。 》 大矢博子

 ネットの拾いもの。

《 そして今、日本に遺された秘宝館は、熱海秘宝館、嬉野武雄観光秘宝館、 鬼怒川秘宝殿のわずか3つ。 》