「 沿線風景 」

 天皇誕生日。1958年12月23日 東京タワーが完成。

 原武史『沿線風景』講談社文庫2013年初版を拾い読み。「第十話」は三島などが舞台。 三島広小路駅も出て来る。向かいの鰻屋のことも。

《 幕末以来、三島では150年にわたり、蒲焼きの味の開発にひそかに取り組んで きたことを十分にうかがわせる味であった。その伝統はいまに受け継がれている。 だが、この町がかつて朝鮮王朝、大韓帝国、そして植民地朝鮮と関わりがあったという 事実は、もう完全に忘却されている。 》 126頁

《 そんなことを考えながら、伊豆箱根鉄道三島広小路駅まで歩く。 》 127頁

 湯河原の西村京太郎記念館の感想。

《 館内には、400冊を超える本の表紙がズラリと並んでいて、『ミステリー列車が 消えた』(新潮社、1982年)など、私が大学時代に読んだことのある本もいくつかあった。 もっとも、あまりにトリックがばかばかしくて、すぐに処分してしまったが。 》 106頁

 鉄道ミステリ以前の『殺しの双曲線』1971年などを読んでいないのだろうか。
 井上章一『日本に古代はあったのか』角川選書2008年に関して。

《 井上さんが関東史観を批判し、関西を拠点に日本史とユーラシア史を結びつける 壮大な試みに挑戦したように、私も中央線史観を乗り越え、隠蔽された西武沿線を拠点に、 戦後東京とモスクワを結びつける思想史を描きたいと思っている。それは、戦後史を 「親米」と「反米」だけで語ることに対する違和の表明でもある。西武線には「魔力」も 「魂」もないけれど、「思想」はあったのだから。 》119-120頁

 ここにも既成の歴史観への違和の表明。楽しみだ。

《 熱海秘宝館もまた、昭和という時代の熱海の風俗をよく保存する、貴重な歴史遺産に なるかもしれないのだから。いや、もうすでになっているというべきか。 》 178頁

 そのとおりになってしまった。

 先週の続き、毎日新聞21日の「 今週の本棚 2014 この3冊 」から。

 橋爪大三郎
  橋本治『失われた近代を求めて III 明治二十年代の作家達』朝日新聞出版
《 文学史の大きな謎の数々が鮮やかに解明される。 》

 堀江敏幸
  松浦寿樹『明治の表象空間』新潮社
《 これまでの著者の作品の精髄が注ぎ込まれた力作。 》

 三浦雅士
  松浦寿樹『明治の表象空間』新潮社
《 『明治の表象空間』は政治経済の核心に潜むのが文学にほかならないことを 実感させる。 》

 養老孟司
  増田寛也編著『地方消滅─東京一極集中が招く人口急減』中公新書
《 二〇四〇年における各市町村の人口、若年女性の推定数が記されている。 これをあるていどの「常識」として日本再生の議論をすべきであろう。 》

 ネットの見聞。

《 洗練と情熱は、両極にあるが、この両極をしっかりと握り締めている作家はそう多くはない。 》  山口洋

《 つまり、ジャンルの狭間に落ち込んでしまった表現者の悲劇を、この多数の作品に垣間見たのである。 この「ジャンル」こそが、いわゆる「制度」なのだ。 》 山口洋
 http://artscape.jp/report/curator/10101574_1634.html

 味戸ケイコ、北一明そして白砂勝敏らの作品を連想。私はジャンルの横断、架橋を感じるが、 狭間に落ち込んでいると見られるかも。中井英夫の小説にも当てはまる。

《 ろくでなし子の公判、意見陳述が面白過ぎ。被疑者「体の一部であるマンコが…」 裁判官「公開の場ですので、名称は工夫を」弁護人「それは本件の本質で…」裁判官 「工夫して下さい」被疑者「TVでチンコと出演者が言うのはいいのに、マンコは…」裁判官 「あ!制限します!」チンコはOKなのかよww 》 阿曽山大噴火

《 続き。裁判官が名称を工夫しないと意見陳述を中断すると言うので、ろくでなし子被疑者は 「では、性器に言い換えます」と折れたんだけど、言い換える被疑者とマンコという単語に 過敏になる裁判官の争い。何がわいせつか否かは分からないが、この争いが滑稽なのは分かる。  》 阿曽山大噴火

 ネットの拾いもの。

《 「どうして結婚しなかったの?」
  「本が多過ぎて嫁さんを置くスペースがなかったので……」 》