「 ロシアの革命 」

 松田道雄『カラー版 世界の歴史 22 ロシアの革命』河出書房新社1970年初版を読んだ。 これは、荒川洋治『本を読む前に』、「この場を借りて」で紹介していた『ロシアの革命』の 「あとがき」がオモシロカッタから。荒川洋治曰く。

《 その「あとがき」も、またとないもの。 》

 たしかめたが、間違いなかった。その冒頭。

《 「ロシアの革命」などという本をかかねばならなかったのを、まったく不運だと 思っている。 》

《 リタイアード・ドクターがこんな本をかかねばならなくなったのは、マルクス主義を 本職としている学者たちが「ロシアの革命」をかかなかったせいだ。この本をかいたあとで 感じるのは被害感だけだ。 》

 引用を終えて荒川洋治は書いている。

《 でもそれだけに、本の内容は弱気なスペシャリストには書けないものとなった。 》

 ロシア革命ではなく、「ロシアの革命」。「の」が入ることで歴史の幅がぐーんと広がる。 1828年、二人の少年のエピソードから語り起こされる。ロシア革命が成功するまでには、 革命家たちの永い苦闘の歴史があった。革命前も革命後も死屍累々。記述は1940年のトロツキー 暗殺で終わる。裏切られた革命。権力の奪い合いと保身の醜さ。
 この本の特徴は、ロシアの革命家群像を描いていることだろう。視野を広げれば、貧困農民と 労働者、それに対立する貴族、ブルジョアの構成比率といった数字が表記されていない。 国家の全体像が見えてこない。その辺の記述があれば、ロシアの革命というものがより立体的に 理解できた気がする。そこまでを著者に求めるのは酷というものかも。筆致は冷静にして平易。 目配りが効いている。分りにくい箇所はあるにはあるが、複雑怪奇なロシアの政治世界をよくぞ 簡明にまとめた、と労をねぎらいたい。

《 権力の代表者の暗殺は、権力が十分に組織されていて、人民が権力を信用し、権力とたたかう 組織が絶望的に分散されているときにおこる思想である。 》 87頁

 日本、1970年代の爆弾テロを思い出す。

《 ロシアの労働者はまだ文盲が七十パーセントにもおよぶのだから、教育のある自由主義者に たぶらかされないためには、インテリが指導しなければならぬ。インテリが中心になる強い党は、 すでにロシアでは試験ずみだ。 》 「レーニンの党組織論」174頁

 ロシアのような革命は、日本では起きようがないわ。
 ブックオフ長泉店で二冊。島内景二『光源氏の人間関係』ウェッジ文庫2008年初版帯付、 日本SF作家クラブ・編『日本SF短篇30 III 1983-1992 』ハヤカワ文庫2013年初版帯付、 計216円。

 ネットの見聞。

《 大企業発信の夢と希望の「期待値計算」になんの文化も感じられませ〜ん。汚さも文化、 という許容は大企業のエリート社員には望めない。 》 風間サチコ
 http://kazamasachiko.com/?p=2618

《 危機後の大量放出で汚染深刻化 》
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141221/k10014165631000.html

 ネットの拾いもの。

《 生活費に占める書籍代を示すホンゲル係数も非常に計算したくない数値だが、 自分の全蔵書における読んでない本の割合を示すツンデル係数は絶対に計算してはならない。 》

《 君は神様の断捨離に耐えららるか。 》