「 茶と美 」

 柳宗悦『茶と美』講談社学術文庫2000年初版を読んだ。茶道家戸田勝久が、 茶道にかかわる主要な論考を抜粋、編纂したもの。最初の「陶磁器の美」から。

《 科学は規則を建てるが、藝術は自由を欲する。古代に人は化学を持たなかったが 美しい作を産んだのである。近世においては人は化学を持つが藝術に乏しい。 》 30頁

《 無益な煩瑣な写実は暗示の美を葬るに過ぎぬ。深く心が美の世界に浸るなら、 二、三の単純な筆致において、模様はすでに充分であろう。ちょうど絵画の基礎が 素描の中にあるように、模様もまた素描の生気に活きる時、最も美しくされるのである。 複雑な図案に優秀な模様を見出すことは稀であろう。自然と深い交わりを有(もっ)た 古代の作にはただ至純な模様のみがあった。 》 39頁

《 模様においても線においてもよき触致があらねばならぬ。躇(ためら)いなく 筆が自然のままには走る時、美は自然の美にまで高められる。 》 41頁

《 私は今日の醜い作品を見るにつけても害(そこな)われた時代を感じないわけには ゆかぬ。 》 47頁

 陶磁器についての論調は、これが発表された大正十一(1922)年三十三歳からずっと 変わらない。そして続けて朝鮮(高麗)の器について熱く語る。

《 器はその長い線に悶えの情を委ねるようである。私は思わずそれを手に抱き上げる。  》 49頁

《 何かは知らないが、その姿を見つめる時、心が淋しさに圧せられるようである。 あの流れるような曲線はいつも悲しさの美の象徴である。 》 49頁

《 線は実に情であった。私は朝鮮の線よりもさらに淋しい線を他に見る場合がない。  》 49頁

《 自然は単純を求める。作為は自然への懐疑であり、無心は自然への信仰である。  》 55頁

 情調、自然への信仰、無銘(無名)それらが渾然一体となって、工藝の美を形づくる。 理解、納得できる、途中までは。しかし、どこかで私の考えと噛み合わなくなってくる。 あまりに文芸的な、と感じる。文学的ではなく文芸的。「茶道を想う」から。

《 じかにとは眼と物との直接的な交わりをいう。直下(じきげ)に見ずば物そのものには 触れ難い。 》 139頁

 じかに見る、直下に見るという言葉が鍵として重視され頻出する。

《 初期の茶人達は尋常なものの深さを観じていたのである。彼らは誰も顧みなかった 通常の物から、異常な茶器を取り立てたのである。あの「大名物」の茶碗も茶入も、もとは 凡々たる民器に過ぎなかったではないか。 》 153-154頁

 柳は「楽」茶碗をボロクソにけなす。「茶器」から。

《 造作された「楽」は異数を求め、非凡を追う。そんな茶器で茶が飲めるであろうか。 それをしも悦んで用いた後世の茶人達は、「茶」を救い難いものに沈めた。 》 239頁

 すごいね。では、朝鮮のご飯茶碗、「井戸」茶碗の衣鉢を継ぐ物は。

《 「井戸」は他力に任せきった仕事である。救いが誓われているのも当然である。だが自力の 一途を徹すれば、見る性の禅域に達し得よう。誰かが出て自力の道を、美の世界においても 樹てねばならぬ。どうして不可能なことがあろう。 》 241-242頁

《 私は今、浜田庄司の作品を前に見て、この悦びを語っているのである。それは「楽」への 大きな抗議である。長い間茶器が犯した誤謬への是正である。それは自力の道を通して、 茶器を正統の姿に高めようとする努力である。 》 243頁

 私には「楽」茶碗も浜田庄司の作品も、どうでもいいモノとしか見えない。見る力の差なのか、 審美眼の違いなのか。柳宗悦に北一明の茶器を見せたかった。柳は、道が好きなようだ。 「『茶』の病い」では。

《 誰も「茶道」とは呼ぶが、今は「道」はどこかに匿れて、せいぜい「茶の湯」があるに 過ぎなくはないか。 》 245頁

 この求道的な姿勢が、私とは大いに異なる。とわざわざ書くほどのこともないが。求道的な 心持からすべてが始まっているような気がする。自然、文芸的な文章を出るものではない。 文学にはなっていないと思う。それが、

《 器はその長い線に悶えの情を委ねるようである。私は思わずそれを手に抱き上げる。  》 49頁

 と、臆面もなく書いているところに顕れている。

 ネットのうなずき。

《 世間は常にダイナミックに動いているのだ! 》

 ネットの見聞。

 雨から曇天。曇天を晴らすような国本武春の三味線とバディ・ガイのギターの競演。 これはいいわ。ブルージィ・アンド・グルーヴィ。シビレル。
 https://www.youtube.com/watch?v=gI_CwnXy3PE

 どこかクレイジーケンバンドタイガー&ドラゴン』を連想するが、 クレイジーケンバンドの物足りなさを国本武春のは解消してくれる。
 https://www.youtube.com/watch?v=US8zoKCxFO4

《 竹良 実という名前を覚えておこう。いや、敢えてそんなことしなくても、 すぐに知らぬ人間がいない存在になる 》 藤岡真
 http://comic-soon.shogakukan.co.jp/blog/news/minoru-takeyoshi-schwester-introduction/

《 どうにかこうにか年賀状完成。これ以上ないというほどの手抜き工事。 》

 年賀状は全部手書き、手抜き無し、だけど、あきれるほど……手抜きに見える。

《 二度目の逮捕勾留につきまして 》 ろくでなし子
 http://6d745.com/

《 衆院選2日後に首相と会食した大手メディア幹部、集団的自衛権行使容認の 記者会見をした5月15日夜にもほぼ同じメンバーで、同じ寿司屋で会食していた。 時事の田崎史郎、朝日の曽我豪、毎日の山田孝男、読売の小田尚、NHKの島田敏男ら (敬称略)。  》 山崎雅弘

《 朝日新聞の記者は、自社の曽我豪編集委員のところへ行って「安倍首相が 重要なハードルを越えるたびに西新橋のすし店『しまだ鮨』で会食するのはなぜですか?  首相とどんな相談をしているのですか?」と取材して、その内容を記事にしてくれないだろうか。 読者の「知る権利」に応えてくれないだろうか。  》 山崎雅弘

 ネットの拾いもの。

《 帰省は大晦日予定だけど、池袋西武にお土産買いにきた。 選べなすぎて8周してしまった。なにがいいのだ…… 》