「 笑う警官 」

 マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック 笑う警官』角川文庫 2013年初版を一気読み。その昔、1972年発売の旧訳で読んで面白くて、シリーズ全十作を読んだ。 十冊の角川文庫は本棚に並んでいる。これは本国スウェーデンでは1968年に出ている。
 事件は「十一月十三日の夜」降りしきる雨の中、二階建てバスで発生。運転手乗客八人全員が 射殺される。翌年の一月十日(?)に犯人逮捕。寒い季節のミステリ。「19」章冒頭。

《 月曜日。雪。ふるえあがるように寒い。 》 旧版

《 月曜日。雪。強風。極寒。 》 新版

 風雪はないがここも寒いわ。杉江松恋の解説から。

《 日本では一九七二年に高見浩の手によって翻訳が行なわれ、一大ブームを巻き起こした。 それは英訳版からの訳出だったが、今回初めてスウェーデンの原書からの翻訳が行われた。 名作は新たな生命を吹き込まれたのである。 》

 手元の『笑う警官』は「昭和四十七年十二月十日 六版」。初版は七月二十日発行。 旧版は17行43字本文425頁。新版は18行39字本文373頁。新版は字が大きいが、ページ数は 少ない。なによりも大きな違いは、旧版にはなかった二行が、新版には加わっていること。 どうなんだろう。私は不要という気がする。だから、英訳版では英訳者が省いたのだろう。

 古い文庫本の私的な楽しみの一つが、巻末の文庫目録を見ること。『笑う警官』1972年には D・E・ウエストレーク『ホット・ロック』240円。手元の『ホット・ロック』は1998年改版初版。 ドナルド・E・ウエストレイクとなっている。手持ちの文庫本は角川、ハヤカワ、文春、扶桑社で 21冊。角川以外は、エが小文字になってウェストレイク。WESTLAKE だからこれが正解かな。 角川の『我輩はカモである』1977年は、1995年ハヤカワ文庫で再刊。いい作品は再刊される。 これは1967年のアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。『笑う警官』は1970年に受賞。なんて書いても、 ウェストレイク、まだ一冊も読んでいない。お楽しみはこれから。笑うしかない。

 ブックオフ長泉店で二冊。大川渉『酒場めざして』ちくま文庫2012年初版帯付、山口雅也 『狩場(カリヴァ)最悪の航海記』文春文庫2014年初版、計二割引、172円。

 ネットの見聞。

《 自分の手元にあって「守れる限りの山河」を守る。
  それがこれからの「後退戦」で私たちがまずしなければならないことである。 》 内田樹
 http://blog.tatsuru.com/2015/01/01_1016.php

《 震災復興が残酷なのは、復興出来る街と出来ない街の差が明確に現れることです。 惰性で栄えていた旧市街は数年で急激な過疎化を起こし、街の伝統文化は急速に失われます。 そしてそれは避けたくても避けられません。震災以前に蓄えていた体力の差です。  》  LEVEL7G(なな爺)@高等遊民

《 当政権は、経済政策を重視する。したがつて干支の候補にオオカミを推奨する。 羊の皮を被らせれば問題ないからである。 》 山田正紀