椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』幻冬舎新書2015年初版は、驚きと発見の連続だった。 昨日の紹介のように、洞察の深さと構想力の広さに驚き唸り、以下に引用する文章には、 私もそう思っていると深く頷く。
《 少なくとも現在、公的な美術館で長く後世に伝えるために保存・公開されている近現代 美術のコレクションの大半や、格式高い現代音楽のコンサートで演奏されているような難解な 楽曲のほとんどは、１００年後には誰も鑑賞せず演奏もしない過去の遺物となる可能性が高い。 しかしそれは別に特異なことではなく、歴史的に見れば、むしろそういうことのほうが自然なのだ。 現在、優れた芸術として高く評価されている「作品」といえども、しょせんは現行社会の価値観の 反映でしかない。芸術にまつわる価値判断が将来的には大幅に刷新されることが避けられない以上、 過去も含め未来に評価される芸術は、今もてはやされているものとは様変わりすると考えたほうが順当だ。 》 50-51頁
Ｋ美術館で常設展示した味戸ケイコの絵、北一明の焼きものは、今はまだ無視されているが、 私の評価した数人の作品ともども、私の死後評価されるに違いないと思っている。まったくの 買い被りでゴミとなるかもしれないが、こういう長い射程の賭けは好きだ。
私は、2011年がテレビの終わりの始まりと予想していた。東日本大震災〜原発災害が起きて、 それは予想を大きく上回る規模で始まった。そして胎動期を経て、2015年はさまざなま変動が 顕在化する年だと考えている。周囲の美術にかかわる人たちの作品が、今まで縁のなかった人たちから 評価されてきた。具体的に記すと物議をかもしそうなので控えるが、すでに時代は変わった、 と感じる。最後の悪あがきが政治だ。混乱を経なければ、新しい世界は開けないのかもしれない。
《 なかには、どういう理由かもわからぬまま、見る者を一方的に魅了して離さない絵もきっと 存在する。（中略）あるひとにとってそれを可能にする絵が、ほかのひとにも同様にそれを もたらすとは限らない。 》 325頁
私が抗い難く惹かれた作品を、私同様に惹かれる人がいるはずだ、という確信あるいは希望で Ｋ美術館を開いた。まず私自身のため、そしてごく少数の人のために。ごく少数の人に喜ばれた。
《 結局、アウトサイダー・アートを「観る」ためには、その前に立つ者もまたアウトサイダーに なるしかないのだ。そこから得られた体験は、ほかの誰とも分かち合うことができない。 》 326頁
私はアウトサイダーではないが、知人の日展の評議員から「偉大なる変人」と呼ばれた。 うれしい。
ヴァーノン・リー『教皇ヒュアキントス』国書刊行会の豆本応募締め切り日。ツイッター応募 なので棄権。ツイッターもフェイスブックもやっていない。このブログだけ。
ネットの見聞。
《 私の考えている理想の自営業者同士の関係というのは、釣り人のマナーに近い。 誰かがどこかで釣果を上げても大挙して押しかけたりせず、自分だけの穴場を探して他に行ってみる。 そうやって肩がぶつかるようにしないで気をつけていけば、必要なだけ市場も広がるはず、 とこれは祈りに似た気持ちがある。 》 杉江松恋
甘味処、Ｋ美術館、ボランティア（グラウンドワーク三島）、どれもそんな発想でやってきた。
《 認知症のドライバーのことが問題になっている。やがて、認知症の医師のことも問題になるだろう。 医師の場合は医療事故に直結する可能性がある。早く対策を講じなくてはならない。 既に何人かそれらしい人を知っている。 》
《 『リー・クアンユー回顧録（上）』の記述「日本人は我々に対しても征服者として君臨し、 英国よりも残忍で常軌を逸し、悪意に満ちていることを示した。日本の占領の三年半、 私は日本兵が人々を苦しめたり殴ったりするたびに、シンガポールが英国の保護下にあれば よかったと思ったものである」「同じアジア人として我々は日本人に幻滅した。日本人は、 日本人より文明が低く民族的に劣ると見なしているアジア人と一緒に思われることを 嫌っていたのである。日本人は天照大神の子孫で、選ばれた民族であり遅れた中国人やインド人、 マレー人と自分は違うと考えていたのである」これが八紘一宇の実態。 》 山崎雅弘
https://twitter.com/mas__yamazaki
《 フクイチで、今度は側溝から発煙。21日の火災同様、大事には至らなかったが、 次はどうなるか分からない。敷地内の設備や固体廃棄物が炎上したら、フクイチはどうなる。 集団的自営権や憲法改正で遊んでいる場合ではないだろう。 》 春橋哲史
https://twitter.com/haruhasiSF
ネットの拾いもの。
《 ＮＨＫ朝ドラ「まれ」初回21・２％の好スタート …「ろ」なら永井豪。「ら」なら放送禁止。 》
