『百句燦燦』

 手の届くところに積んである文庫本の最上は、塚本邦雄『百句燦燦 現代俳諧頌』 講談社文芸文庫2009年3刷。この定位置をずっと保持している。「一章──森森」 「二章──蕭蕭」「三章──炯炯」まではパソコンで漢字が出るが、四章五章は出ない。 四章は炎が山型に三つ(森と同型)で、えんえん=火のようなあつさの意味。五章は 水が山型に三つ(森と同型)で、びょうびょう=ひろびろとはるかにひろがる水の意味。 時折気ままに開いて読む。富澤赤黄男の俳句。

   蝶墜ちて大音響の結氷期

《 俳句におけるシュルレアリスムを語る時、好個の例としてこの作品を飾るのに異存はない。  》

《 この壮麗無比の幻像、俳句が初めて見(まみ)えた異次元に今もなほ私は魅かれる。 けれども、慎重に言を換へるなら、俳句さへかかる幻像を描き得た、のではなく、かかる世界 をすら俳句的空間に密閉しおほせたことを歎ずべきであつた。 》

 北一明の耀変茶碗へ飛翔する。掌中の茶碗に顕現する光耀明滅杳杳たる銀河宇宙。感歎、 息を呑む。

 「一章──森森」には下村槐太の俳句。

   河べりに自轉車の空北齋忌

《 畫集の跋文に、七十歳までに描いたものに陸(ろく)なものはない。七十三になつてやつと 鳥蟲草木の未然のすがたがわかつてきた。 》

 安藤信哉の絵は、七十歳を過ぎて融通無碍の境地が画面に現れ、じつに新鮮、洗練された 軽みのある独自の絵になった。遠方からK美術館にいらした御仁は、それらの絵について、 高度すぎて一般にはわからないだろうと、述べられた。たしかに。
 http://web.thn.jp/kbi/ando.htm

 北一明の書作品を見て感嘆した書家がいた。焼きもの作品を見て興奮した外国の彫刻家がいた。
 http://web.thn.jp/kbi/ksina.htm 
 午後、藤枝市からの視察二十人を、境川清住緑地と源兵衛川へ案内。昼前、行程の下調べの ついでにブックオフ長泉店へ。谷川俊太郎『私』思潮社2007年初版帯付、野尻抱影『星空のロマンス』 ちくま文庫1993年初版帯付、春日真人『100年前の難問はなぜ解けたのか』新潮文庫2011年初版帯付、 計324円。さっそくジッポ・オイルで値札剥がし。これはいい。きれいに剥がれて後も残らず。

 ネットの見聞。

《 車谷長吉さん死去。著者インタビューを新潮社でしたことあり。絶版文庫が好きと聞いたので、 まだたくさん持っている『ニッポン文庫大全』をお持ちしたら、たいそう喜んでらした。 》 岡崎武志
 http://d.hatena.ne.jp/okatake/20150520

 本棚下段から『ニッポン文庫大全』ダイヤモンド社1997年初版帯付を抜く。ブックオフで100円。 パラッと開いたら、角田喜久雄『黒岳の魔人』中公文庫1983年初版の表紙図版。

《 岡崎 ぼくが最近中公文庫で探してたのが、角田喜久雄『黒岳の魔人』。 》 284頁

 これまた100円で入手。

《 山本善行 中公文庫は紙質悪いやろ。変色する度合いが早い。 》 285頁

 たしかに縁がやや変色。ただ、中公文庫は本文部分までは焼けてこないと山本は言う。それは わからんけど、愛読する『怪奇小説傑作集4』創元推理文庫1970年4刷は、焼けがひどい。 縁はもろく破れそう。「横溝正史の文庫目録」が目を引いた。「入手難易度(Cが最も入手困難)」 という角川文庫の目録、Cを辿る。『金田一耕助の冒険』『恐ろしき四月馬鹿』……ない。 『山名耕作の不思議な生活』『青い外套を着た女』『幽霊鉄仮面』『横溝正史読本』はある。 自慢になってしまうな。エヘ。何より食いついてしまうのが、「第4章 絶版・品切れ文庫総目録」。 最初の新潮文庫、あ行の一番は、相倉久人日本ロック学入門』昭和61年品切れ。知らんなあ。

《 文庫におけるジャズ本の最初は、おそらく相倉久人『モダン・ジャズ鑑賞』(角川文庫・一九八一)。  》 岡崎武志「絶版文庫でジャズを」193頁

 これは持っている。「第5章 ふるほん文庫やさん在庫目録」にはホレス・マッコイ『彼らは 廃馬を撃つ』角川文庫昭和45初版カバーが1280円。今月、白水社から復刊。こんなことをしていると、 夜が明けても終わらない。

《 何度も書いていますが、私自身は「本画」(タブロー)と「習作」(デッサン、スケッチ、 素描などと言われるもの)を分けるのは便宜上の分類以上の意味がないと思っています。

  偉大な画家と言われる人たちの残したもので、いわゆるその人の「様式」が固まる過渡期の絵や、 むしろ「覚書」のように残されている素描にこそ素晴らしい魅力があり、価値があると感じています。  》 福山知佐子
 http://chitaneko.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/index.html#entry-99559419

 味戸ケイコさんにも言える。

《 児雷也大蛇丸綱手の三すくみの戦い-----『児雷也豪傑譚・全二巻』 (高田衛監修・国書刊行会リーフレット出来。長ーい蛇腹折り。菊判貼函入りで、セット価格は
  ......本体58000円+税!!  》

 止めた。

《 政治について話をする時には、政策や制度だけを論じていても仕方がない。現実に政策を立案し その運営に当たる人間がどんな人物であるのかという人格批判を含んだ論点が、 実は一番大切なポイントだったりする。 》 小田嶋隆
 https://twitter.com/tako_ashi

 ネットの拾いもの。

《 東京に国政を任せるのは止めたほうがいい。大阪人に任せるのはもっと止めたほうがいい。 》

《 日本では、いちはやく独立を宣言したのが「伊豆の国」ですw 凄いよ、「国」だものw  誰もツッコミ入れないという、無視され具合も素敵ですw 》

《 昭和63年の年末の12月29日に車にはねられ意識不明に。
  意識が戻ったのが1月13日だった。
  病院のベッドの横にいた母親に、
  涙声で「わかる?今、平成よ」といわれたが
  何のことかわからず「わからん」といったら、
  医者に「そりゃ、わからんでしょ」とつっこまれていた。 》