『百句燦燦』つづき

 『百句燦燦』の橋本治の解説に付箋を貼ってある。以前引用したかも知れないが。

《 『百句燦燦』は、私にとって、「文字で書かれた百点の近代絵画集」である。 「現代絵画」ではない。/ 日本画と洋画を問わず、私は明治以降の日本の近代絵画に かなりの不満を抱いていて、「それ以前の日本絵画の伝統は、どうして近代を開花させて くれなかったのだろう」と思っている。その不満を、下村槐太の「河べりに」の句が 一蹴してくれる。そこにはまず、「描かれてしかるべき景色」がある。近代の画家達が それを「描こう」と思わなかった景色が、十七文字の言葉で絵になっている。 『百句燦燦』に登場する句は、そういう意味で、すべてが「描かれなかった絵画達」である。 それが描かれていたなら、日本の近代はもっと違ったものになっていただろう。 》

 昨日の「河べりに自轉車の空北齋忌」だ。私に幻視させる句を少し拾ってみる。

   袈裟がけに雪の刀痕葉月富士   富安風生

   寒梅にあはれ鬱金の陽射しかな   富澤赤黄男

   天上も淋しからんに燕子花    鈴木六林男

   朝顔が降る遠国の無人の街    金子兜太

   「花は變」芒野つらぬく電話線   赤尾兜子

   洗ひ髪身におぼえなき光ばかり   八田木枯

《 絵画が豊かな物語性を宿すものならば、『百句燦燦』はまた、見事に完結した百の 短篇小説集である。だから、ただ「すごい」と思うしかない。 》

 北一明の茶碗は釉薬による文様ではなく、造形の基礎の上に釉薬による深遠な絵画性と物語性を 蔵している。奥深い物語性に気づいてぞっこんになったのが、味戸ケイコさんの絵だった。
 ここでこだわってしまうのが、「物語性」と「物語的」の違い。横尾忠則『名画感応術』 光文社文庫1997年初版で「物語的」が使われている。ジェームズ・アーチャー『アーサー王の死』。

《 この絵の魅力はなんといっても物語的なところだ。 》 92頁

 18日の「ネットの見聞」で引用していたこと、「的」。ここではこれ以上立ち入らない。

 「二章──蕭蕭」から金子兜太の俳句。

  鶴の本讀むヒマラヤ杉にシャツを干し

《 ただ、言葉のポテンシャル・エナージーとは決して単なる語感の荒荒しさを指すものではない。 洗煉の果になほ鬱勃たる官能を蔵し、淘汰しつくしてなほ原初的な驚きの失せぬ、詩人の生の證し そのものの謂である。 》

 「言葉」を絵画に、「語感」を筆触に、「詩人」を画家に換えても成立する。
 絵画のポテンシャル・エナージーとは決して単なる筆触の荒荒しさを指すものではない。
 この言葉の先に上條陽子さんの絵が立っている。
 http://web.thn.jp/kbi/kamijo.htm

 午前三時半過ぎ、ドカンという音。箱根山が噴火か、と一瞬思ったが、揺れない。雷だった。 しばらくして豪雨。よく降るなあと思っているうちに寝入る。せいせいといい天気だ。

 ネットの見聞。

《 ろくでなし子さんの革命的な要素の幾つかの事に気づくと、同時に国内の美術業界の構造も 見えてくると思う。自分こそ既存の権威や、そこでのキャリアアップを求め活動をしてきていたと 懺悔のように語らなければなるまい。その点、なし子さんはハイ・アート/ローアートのしがらみすら ぶっ壊している。 》 渡辺篤
 https://twitter.com/nabe_chan_

《 日本の少女たちがこれほどメキシコの人たちを感動させるとは。

  それもBABYMETALたちは、現地にあわせて歌詞を英語やスペイン語にすることもなく、 日本で歌っている通りの日本語の歌詞で歌っているのです。 》 エーブック
 http://www.abookz.jp/blog/

《 世界の音楽業界団体である「国際レコード産業連盟(IFPI)」が先月発表したデータによると、 2014年のアナログレコードの売上は世界で3億4680万ドルで、前年比54.7%増となった。 》
 http://hbol.jp/39854

《 「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍首相がその起点であるポツダム宣言を読んでなかった というのは恐るべき(しかし意外ではない)事実だが、それ以上に彼が志位氏の再三の質問にもかかわらず、 ついにあの戦争が「間違った戦争であった」と明言しなかったことに、本当の不気味さがある。 》  想田和弘
 https://twitter.com/KazuhiroSoda

《 安倍首相が「読んでいない」ポツダム宣言 現代語訳だとこうなる 》
 http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/20/potsdam_n_7341178.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001

 ネットの拾いもの。

《 「ポツダム宣言」がトレンド入りしているのを見て、戦後は まだたしかに終わっていないのだなあと確認させられたり。 》

《 「未亡人製造器」と言われるオスプレイ 》