吉田一穂詩集『海の聖母』を読んだ。大正十五年に出た初刊本の、昭和四十八年の渡辺書店の 複製版で読もうとしたが、全集『日本の詩歌21』中央公論社1968年初版が最も読みやすく、 これで読んだ。「帆船」より。
雲
驟雨
貿易風
潮の急走
海は円を描く
(太陽は真裸だ!)
痙攣る水平線
水の落魄
回帰線
流木
鱶!
泡
ルビ。驟雨=スコール、痙攣=ひきつ(る)。落魄=らくはく。
こんな洒落た形も。(太陽は真裸だ!)にドキッ。アイザック・アシモフのSF小説に 『はだかの太陽』があるが、この衝撃には及ばない。
昨日ふれた「古代緑地」の一節が伊藤信吉の註釈に引用されている。
《 あしたゆうべの波の音。動揺と反復、海は荒々しくまた静かに、元始から一貫した 運動の法則と不安にささえられる生命の原型を示して鹹(から)く、無限と永遠を思考の対象に 強いる最初の、そしてまた最終の主題である。 》
精神の極北(宇宙の彼方)、心の源郷(太古)への強烈な志向が感じられる。言葉による表現の 限界突破、不可能性への挑戦。
《 こんな詩人はもういない。 》 松岡正剛
http://1000ya.isis.ne.jp/1053.html
《 どうだろうか。こんな詩人がかつていただろうか。 》 松岡正剛
詩の吉田一穂に比肩するのは、短歌では塚本邦雄、俳句なら加藤郁乎(いくや)くらいか。 現役作家では思い浮かばない。
《 思い出してみると、ぼくが吉田一穂の詩を最初に集中して読み耽ったのは27歳の春だった。 仮面社の西岡武良君が加納光於装幀の函入り『吉田一穂大系』全3巻を刊行した直後のこと、 》 松岡正剛
昨日書いたが、『大系』は持っている。装幀は宇佐美圭司。彼の勘違い。『大系』第一巻を開き、 上記の詩を参照。「海は円を描く」が「海は圓を畫く」になっていた。畫は画の旧字体。 『日本の詩歌21』は初出に依り、『大系』はその後の改作に準拠。
西岡武良氏は先年亡くなった。思い出が駆け巡る。小川国夫『リラの頃、カサブランカへ』冥草舎 1972年百部限定版を仕上げ、二人で収めに行った神田神保町の古書店の若旦那から寿司をご馳走になった。 生まれて初めての寿司屋体験だった。
松岡正剛の文を読み進めていくと、井尻正二の名前が。昨日の引用にある「井尻さん」だ。 類は友を呼ぶ。
午後、グラウンドワーク三島の総会へ。司会を務める。無事終了。やれやれ。
ネットの見聞。
《 集団的自衛権とやらでアメリカ軍のお手伝いするという事は、爆弾巻いてヨチヨチ寄ってくる少女を 撃ち殺し、その報いとして何万人もの難民が押し寄せるという事です。その想像力がないバカが多過ぎる。 》 ネットゲリラ
http://my.shadowcity.jp/2015/06/post-7306.html
《 「武力行使との一体化」の政府による英訳が ittaika with the use of force ってなってるってきいて、実際に外務省HPで検索してみた。ほんとだったわ(笑) 》
http://www.mofa.go.jp/fp/nsp/page23e_000273.html
《 2. Further Contributions to the Peace and Stability of the International Community
(1) So-called Logistics Support and "Ittaika with the Use of Force" 》
《 裁判所というのは何の為にあるのでしょうか。仲に立つ裁く人が双方の言い分を聞きながら、 分からない事を訊ねながら、成敗していくというのが裁判官の役割ではないでしょうか。 ただじっと座って、書面だけ見ていても分からない事があると思います。 もっと聞かなければいけない事があると思います。 》 黒木睦子
https://twitter.com/mutsukuroki
ネットの拾いもの。
《 集団的自衛権って何処の国が集団で守ってくれるの? 》