「 俳句の弁証法的構造 」

 『江古田文学44』特集「102年目の吉田一穂」2000年、加藤郁乎「講演『吉田一穂について』」 で、「8字型俳句構造論」が語られている。よくわからないのでその出典、吉田一穂「俳句の 弁証法的構造」(『吉田一穂大系 第二巻』収録)を読んでみた。

《 日本語に於ける音律発生の意識は、音数の最小単位二と三を基数として音節の切点を中心に、 任意の格を結成する。そして之が言表の律調即ち詩歌意識としての心的活動を起す日本音律の 機械的な規範となる。音数の性質として我々の意識に作用する美的関係はニ音に於て平滑であり、 協和し易く流暢で、且つその繰り返しは速度を生ずる。これに反し三音は、渋滞り、重々しく 吃りがちで、従つて不協和性をもつてゐる。これを和歌と俳句の形式上の、その組織の音数を 分析して、ニ音節と三音節の配列数を比較すれば、各自の性質が判明してくる。 》

《 和歌では上の句の動態を下の句にうけてやんはり説明し得た。俳句は直ちに動態を示すだけで 止まつてしまふ。それ故に単なる文法的な、そしてものの記述・描写など始めから捨てて、 内部的なものの見方と返し方で独自の表し方を創造したのである。 》

《 協和音数2を滑とし、不協和音数3を渋とすれば、俳句の各三格の滑渋音数の配列上の 権衡律は、五強(2.3) 七弱(2.3.2) 五強(2.3)であるから一読これは切迫した重圧感を 與へる。それ故に大体は、初句の切りで主題を提立し、中句がひらり身を転じる柔軟性で、 下句の反立を呼び起して、その共助を得、逆に下から上句との照応を作って全体を統合する。 換言すれば、天地の間に人を立て、8字型に地を掬って天に投げ返す動的作業が、上句の名詞と 下句の名詞を中句の動詞で繋辞することによつて行われるのである。 》

《 この天・人・地、即ち正・合・反の、或は虚実、陰陽を結合する中軸句が俳句を成す 止揚過程であつて、この秘契を悟らざる限り、俳句の芸術性は断じて掴めない。 》

《 以上の如く俳句の方法は単なる写実的な自然模倣の記述の散文的方法によるものでもなく、 事物の相反を自己統一に於て実現する観念的表徴の芸術方法である。 》

 同じ巻の「芭蕉」から。

《 芭蕉に於ける句の音律組織は、必ずしも五・七・五の格に文節されるものでなく、寧ろ ニ音三音の細かい刻みの配分率の比の美しさにあるので、五十音みな切り字なり、といつたほど、 感嘆詞や助詞の置きどころに注目するならば、その折節の妙から艶やかさが生れ、切点上下の 比重から詞体のこなしといふべき動きが現はれる。 》

 オツムばっかゴシゴシ酷使していたからか、見ないふりをしていた流しのステンレスの汚れが 気になった。用意してずっと使わなかった汚れ落とし用のスポンジにクレンザーをつけて、 せっせとこする。せっせ、せっせ。水をかける。おお、三十年来のこびりつきが少し落ちてる。 ステンレスの輝きが戻ってきている。せっせ、せっせ。水をかける。雑巾で水を拭き取る。 いやあ、半分鏡のよう。勢いで晴天下、ブックオフ沼津リコー通り店へ自転車を走らす。 矢川澄子『兎とよばれた女』ちくま文庫2008年初版、矢崎存美『ぶたぶた図書館』2013年2刷、 計216円。ついでにイトーヨーカドー沼津店で半袖ワイシャツを二着購入。元気のいい一日。

 ネットの見聞。

《 つまり、アメリカの要求をできる限り迅速かつ忠実に物質化できる政治家、官僚、学者、 企業人、ジャーナリストたちだけが国内の位階制の上位に就ける、 そういう構造が70年かけて出来上がってしまった。 》 内田樹

《 まず私たちは、「日本は主権国家でなく、政策決定のフリーハンドを持っていない従属国だ」 という現実をストレートに認識するところから始めなければなりません。 》
 http://blog.tatsuru.com/2015/06/22_1436.php

 ネットの拾いもの。

《 神様はお客様です 》