『ポピュラー音楽の世紀』

 中村とうよう『ポピュラー音楽の世紀』岩波新書1999年初版を読んだ。ポピュラー音楽の成立背景から その変遷と変容が、音楽資本との深い関係を視野に、世界レベルで描かれている。いい本だ。

《 音楽家の作り出した音楽が商品として市場に流通し、大衆に受け入れられることで 初めて成立するところに、ポピュラー音楽の本質がある。だからもちろん市場経済の存在が前提であり、 ポピュラー音楽は市場経済、マス・メディア、大衆社会が完成した二十世紀に特有の音楽である。 》  「まえがき」

《 いやむしろ、演劇性を歌の奥底にどう内在化させるかが、聞く側の心に歌を届けられるかどうかの 根本のところに深くかかわっていると言うべきだろう。それは結局は、音楽家が聞き手に対する スタンスをどう取るか、の問題ということになる。芸能の根っこを完全に断ち切ってしまった純粋な ”音楽”などというものは、大衆の心には届かないのではないだろうか。 》 89頁

 なかなか重要な指摘だと思う。二十世紀芸術絵画が辿った純粋絵画〜現代アートの現状を思う。

《 七〇〜八〇年代に盛り上がったダブなども、ジャマイカらしい奇抜な試みだ。/ ダブという言葉は、 最初は歌抜きのカラオケを指していた。ところが、そのサウンドをスタジオでイジクリ回しているうちに、 幻覚的なファンタジーを盛り込み、”貧乏人の前衛音楽”とでも言いたくなる過激な手法を編み出した。  》 180頁

《 腹ペコで手元が狂って作り出しちゃったのかと思いたくなる常識破りの効果だが、 その手作りの人間くささが欧米の高度な技術が生み出す前衛にはないなまなしい力を感じさせる。  》 181頁

 昨日の田村映二さんの手作りボックス・アートを連想させる。作者は愉しんで作った、と仰っていたが、 その愉しさ=心の開放が、現代アートの窮屈を窮屈と気づかせる、他所からの火の手のよう。また、 田村さんのボックス・アートにはカリブ海が舞台のような作品も。

《 いわば影響現象へのゲリラ的な反撃がみごとに成功したこのジャマイカ黒人文化の事例は、 二十世紀の最後の時期を特徴づける大きな出来ごとである。その出発点となったキング・タビーは、 偉大なオリジネイターと呼ぶに価する。 》 181頁

 ゲリラ的反撃……の事例は……二十一世紀最初の……。ふふふ。

《 お隣のマレイシアでは、九○年代が終わるころに現れた少女シティ・ヌールハリザが、 日本でも大きな注目を集める逸材だ。 》 196頁

 一昨日話題の歌手だ。

 あまりに暑いので、しばらくぶりにブックオフ長泉店へ自転車で行く。涼しい店内。有栖川有栖 『闇の喇叭』理論社2010年初版帯付、太田忠司『レストア』光文社文庫2013年初版、矢崎存美 『ぶたぶたの本屋さん』光文社文庫2014年初版、計324円。

 ネットの見聞。

《 さっき読み終わったところなのに、もう内容を忘れ始めている。 》 猟奇の鉄人

 ご同病の人がいた。

《 福島原発は人類史上最悪な状態。今の状態は、もしも再び地震津波で汚染水タンクが崩落し、 高線量のベータ線で人間が近づけなくなり、どこにあるかも不明な、3基分の核燃料が「冷却不能」 になれば、いずれ人類滅亡の危機。この事を何割の国民が認識しているか?安保法制とか以前の問題。 》

 ネットの拾いもの。

《 芸人、生肉ネタ作れ。早いもん勝ち。はよ! 》

《 総理大臣から炎上芸人へ華麗な転身(笑) 》

《 国民なんて「三原じゅん子」レベルだと思ってた? 》

《 今年の流行語大賞は SEALDs でキマリ。 》