《 白人たちもヨーロッパ的な音楽伝統だけでは充分に生きてはゆけないことを自覚せざるを 得なかったのが、二十世紀である。それは美しいメロディをきれいな声で歌うだけじゃない 音楽が聞きたい、という以上に、体の奥から揺さぶってくれるようなビートを求めてやまない、 ということであった。そんな欲求に応えられるのは、肉体の解放による満足感と高い精神的な 喜びを合一させたアフリカのダンス音楽しかない。 》 45頁
つづきは略するが、これまた重要な指摘だ。二十世紀芸術へと視点を移動させると、体の奥から 揺さぶられる作品は、あるのかな？ と思ってしまう。アクションペインティングとかいうものには ビートを感じない。ピカソは問題外。ドイツのブリュッケ、表現主義など、荒々しい筆遣いだが、 逆立ちした表現というヘンな印象を抱いてしまう。激しい息遣いはあるが、ビートは感じられない。 私の周辺では白砂勝敏さんの木彫の椅子、田村映ニさんの新作ボックスアートにビートを感じる。
『ポピュラー音楽の世紀』では当然だが、多くのミュージシャンが紹介されている。
《 戦後のフランスにはほかにイヴ・モンタンだのジュリエット・グレコだのという人気スターが いるが、アメリカのシナトラと同クラスの通俗歌手だ。 》 119頁
《 テレサ（・テン）の歌は個性などというケチくさいアメリカ的基準を超えて、もっと大きな水準に 達していた。それは、聞き手を慰撫する仏の境地だったと、ぼくは思っている。 》 139頁
《 フォークソングの掲げる理念をただのタテマエで終わらせないためには、そこにロックという 爆弾を仕込む必要があると考えたディラン。ロックのエネルギーを商業主義に盗み取られないために 歌詞に社会の真実を盛り込もうと模索するレノン。 》 170頁
引用候補が多過ぎる。内容豊富、かつツッコミをいれたくなる著作だ。
昨日買った太田忠司『レストア』光文社文庫を読んだ。副題「オルゴール修復師・雪永鋼 （ゆきながはがね）の事件簿（カルテ）」。五話を収録。雪永鋼はクリニックに通う鬱病の若い男。 ちょっとしたことで心の平衡が乱れてしまう。私自身、人と会うのは苦手。なのに会うことを断れない。 帰宅すればクタクタ。友だちからはフェイスブックを勧められるが、やらない。数少ない友だちと、 静かな生活を、だ。なんて思いながら読んでいると電話。視察のお願い。いや、とは言えない。 ああ、軟弱者。
《 オルゴールを巡る謎と人の心の不思議を解き明かしてゆく、切なくも優しい連作ミステリー。 》 表紙裏より
《 人と関わり合っているときの余計な軋轢がなくなったので、精神が平静を保てているのかも しれなかった。やはり誰とも関わらないほうがいい、と鋼は思った。自分はひとりだ。ひとりで 生きていけばいい。 》 333頁
自分みたいだな、と感情移入しながら、五篇を読んだ。それぞれが独立した短篇でありながら、謎が 関連し、最後には連作長編の体をなしている。なぜ早々に読んだか、読了してわかった。今読んで正解。 いい本だ。あの方に贈呈しよう。
《 最近どうも涙腺が弱すぎる。 》 341頁
《 鋼は睦月の背中に手を回した。最初は遠慮しながら、次第にしっかりと抱きしめた。
「少しだけ、こうしていいですか」
鋼が問いかけると、睦月は彼の胸に顔を埋めて言った。
「好きなだけ」 》 354-355頁
このお……。女友だちの墓参りに行くか……。
ネットの見聞。
《 いろいろな企画を通じて、「映画を映画館で観る意味とは何か」を追求するのが僕の仕事のテーマなんです。 》 「極上爆音上映」の野心
《 デジタルのその先のアナログを目指したんです。 》
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150721-00000002-asciiplus-sci
《 福島第一原発１〜４号機は東日本大震災でデコボコに地盤沈下 事故後４年4カ月で初発表 》 まさのあつこ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20150722-00047763/
《 東芝のような「一流企業」で、企業ぐるみのごまかしといか、まやかしが横行しているが、 氷山の一角かもしれないなあ。きっと政界・経済界の多くに、ごまかしとまやかしが横行している。 「一等国」のつもりでいても、浸水して水を必死でかい出しているのが今のに日本なのかもしれない。 》 寮美千子
https://twitter.com/ryomichico
先だって、寮美千子の祖父寮佐吉の翻案ＳＦ小説「生ける人脳図書館」昭和六年を読んだ。 ネット検索のあり得た未来形。おお、怖。
ネットの拾いもの。
《 火事が好きだね自民党 》
