『ホームレスになった』

 金子雅臣『ホームレスになった  大都会を漂う』ちくま文庫2001年初版を読んだ。 ホームレスの手記ではなく、都庁で労働相談に携わる著者が、ホームレスになった人々を書いた。 ホームレスになった事情は人さまざま。

《 だから、本当の問題はこうした「経済的な貧困」によって、すぐ貧困化してしまう 「人間関係の貧困化」のほうかもしれない。経済関係により多くを支配されてできている現代の 人間関係は、経済関係の崩壊によってたちどころに崩壊してしまう関係にすぎないのだろうか。 そうであるとすれば、この現代社会における人間関係というものは一体何なのだろう。 》  110頁

《 こうしたことの次第と顛末を眺めながら、住所を失うことは、単に居場所を失うことではないのだ、 ということを改めて感じさせられた。実際には、あらゆる権利を主張することが困難になることであり、 それと同時に、プライドも失わなければならないことだということを嫌というほど思い知らされた。 》  125頁

《 彼らの多くは、経済的貧困だけを理由に路上生活をはじめたわけではない。もちろん、 経済的事情も大きな要因とはなっているであろうが、決定的なことは、人間関係を失ったことによって 路上に出てきているということだ。 》 「あとがき」

《 家庭と学校、そして企業という集団にのみ傾いた日本社会のいびつな集団化現象は、現代の 人間関係の崩壊を準備してきた大きな要因である。地域に共同体を持たず、企業を超えた連帯が 育たなかった社会、無制限な競争を容認することでコミュニティの崩壊を進めてきた反省が、 今こそ必要な気がする。 》 「あとがき」

 1994年の刊行から二十年。時代は悪くなっている。エムブレムまで。

 午後、近所の飲食店リトルノの壁面に、坂東壮一氏の小さな銅版画(葉書大〜名刺大)を 十点あまり掛ける。内野まゆみさんのレイアウト。私、絵はまあワカルけれど、展示法は駄目駄目。 地元の人にも知ってもらいたくて、今月一杯展示。

 ネットの見聞。

《 自分が考えるようなことは、たいがい誰かが考えている、ということの実例がひとつ。 》  藤原編集室
 https://twitter.com/fujiwara_ed

 ネットの拾いもの。

《 トレンチコートは、今は塹壕に行く予定のない人も着ていいらしい。 》