「深い亀裂によって切断」

 和太鼓の演奏に何かしら物足りなさ、不満を抱いている。ドンスコドンスコ、力士が四股を踏むするような 重く鈍い音に、どこかしら違和感を感じている。2日に取り上げたシェイク・ロー CHEIKH LO のCD 『BALBALOU』2015年を聴くたびに、太鼓(トーキング・ドラム)は小さいけれど、大地から空中へ弾む 軽快なリズム感が、なぜ和太鼓では表現できないだろうと思っていた。昨日話題の飯田善國『彫刻家  創造への出発』岩波新書1991年初版の一節を読んでふっと気づいた。

《 こうして出来た二つの突出面と後退面の連結部位は、ロダンのように滑らかな連続性として結びついてはいけない。 この突出面と後退面との連結部は、深い亀裂によって切断されねばならない。 》 207頁

 ロダンジャコメッティの彫刻の本質的な違いを語ったくだりだが、私はこれを和太鼓と西アフリカ(ここでは セネガル)の小太鼓(トーキング・ドラム)の演奏形態の本質的違いに援用したい。すなわち、和太鼓はロダン、 トーキンング・ドラムはジャコメッティ
 読書の面白さは、このように全く縁のない分野の橋渡しをするところにある、と思う。よ〜く聴けば、 シェイク・ローのこのCDでの小太鼓の演奏は、ちょっと独特だと気づく。他のミュージシャンのCDの演奏と 同じように聞こえるが、意識的に微妙に組み替えられているように思える。私の思い過ごしかもしれんが。

 午後、友だちとコーヒーを飲みにいつもの店へ。そこで久しぶりに知人女性に会った。この春癌の手術をして 治癒したと。そしたら、カウンターの若い女性も過去に胃癌の手術をした、と。気が重くなりそうな話題がさらっと 語られる。救われる。

 ネットの見聞。

《 ついでにup。中井さんが寄稿した東京創元社版『バルザック全集』16巻の月報に、 本多正一さんづてに病床の中井さんにお願いしたサイン。「英」の字が二度記されている。本多さんによると、 これが中井さんの絶筆らしい。 》 竹本健治
 https://twitter.com/takemootoo/status/652488920735678464

 私が中井英夫氏の誕生日のお祝いを兼ねて病床に伺ったとき、持参した『人外境通信』講談社文庫にペンでサインを してもらった。今年一杯かな、と予感し、種村季弘氏にその旨を電話した。三か月後の1993年12月10日夜更けに 亡くなった。種村季弘氏も亡くなり、氏から紹介された画家、木葉井悦子さんも亡くなり、往事茫々。けれども、 作品は遺る。パソコンの右上の壁には木葉井悦子さんの絵『どんづき』。
 http://web.thn.jp/kbi/kibai.htm

《 ハヤカワSFシリーズ版『十八時の音楽浴』解説は、海野十三を「二流の娯楽作家」と貶めたので有名だが (当時、小林信彦が「現在のSFがそう呼ばれないとどうして言える」と指摘した)、海野の「やあ、 やってきましたネ科学小説時代!」という喜びに満ちた宣言をあっさり否定した悪意にはゾッとする。 》 芦辺 拓
 https://twitter.com/ashibetaku/status/652523117923860480

 海野十三『十八時の音楽浴』ハヤカワ文庫JA(1976年初刊)1990年2刷の石川喬司の解説、結び。

《 海野はすぐれた先覚者ではあったけれども、所詮は二流の娯楽作家にすぎず、その夢は、純文学になんの 影響も及ぼしえなかった。/ 海野十三の業績をふりかえるとき、ぼくらは、その事実をみつめることから 始めなければならないのではなかろうか。 》

《 第三次安倍改造内閣日本会議神道政治連盟の関係(暫定版)。改造前に比べると、日本会議系大臣が少し減ったが、 それでもまだ異様な状況だと思う。朝日新聞を含む大手メディアは、いつになったらこの種の情報を、 読者や視聴者に提供するのだろうか。 》 山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/652353036317147136

《 外国人カメラマンが撮影した、福島第一原子力発電所周辺の今 》 ガラパイア
 http://karapaia.livedoor.biz/archives/52202407.html

《 日本図書館協会村上春樹氏の貸出記録掲載で面談へ 》 新文化
 http://www.shinbunka.co.jp/news2015/10/151009-03.htm

 6日に記事を載せた。

 ネットの拾いもの。

《 もし今年の日本人からノーベル文学賞を選ぶなら、村上春樹氏よりも、40通も一方的にラブレターを送り続けながら 堀北真希の心を揺さぶり結婚する気にさせるほどの文才の持ち主・山本耕史だと思う。 》

《 一億総活躍社会では、残りの2000万人に入るための戦いがはじまる。 》

《 くだらなさでは私も負けません。 》