結城昌治『長い長い眠り』創元推理文庫2008年初版を読んだ。1960年6月19日夜、明治神宮外苑近くの 林で会社社長の死後間もない毒殺死体が発見された。下半身はパンツのみ、靴もない状態で。容疑者は 妻と愛人、部下など五人。しかし、その中から犯人を絞り込めない。誰が何の目的で、どのように。 1960年発表のこの作は、おかしみを交えて物語はつづく。1960年の安保反対デモの様子。
《 「案外とはどういうわけだい。前から行きたいと思ってたんだ。すばらしかったぜ。次から次へと デモ隊が押しかけて、首相官邸の前は身動きもできぬくらいだった。大衆行動の力というものを、 初めて見たんだ。感激したね。電車に乗る気がしなくて、とうとうここまで歩いちまった」 》 50頁
今のようだ。
《 やさしい声で、品のあることばづかいだった。同じ人間の妻であって、こうも違うものか。部長は 自分の妻の声を思いだして憂鬱になった。 》 68頁
登場する女性の多くが魅力ある悪女で、うまく描き分けられている。そして気になる一文。
《 ことばは何かを表現するためではなく、時として何かを隠すために用いられる。 》 14頁
《 歩きまわり、そして推理を立てることが必要なように、睡眠をとることも大切なのだ。たとえ わずかな時間でも、今は眠らなければいけない。 》 227頁
五十頁を残してしばし睡眠。そして判明する意外な犯人とその動機。本格ミステリを堪能。中辻理夫の 解説冒頭。
《 深刻で暗い人生観を抱きつつ、一方でユーモアの素晴らしさを熟知していた作家、それが結城昌治だ。 》
よくわかる。俳句好きらしく、引用される俳句も心に残る。
《 『朝顔の紺の彼方の月日かな 波郷』 》 123頁
《 「昨日までは──つりしのぶ越してくるなりもらいけり──という久保田万太郎先生の短冊で、 今日からは石田波郷先生、毎週月曜日に替えるんです」 》 124頁
ネットの拾いもの。
《 <東京空港警察署からのお知らせ>
羽田空港国際線4階において、
「安全・安心な羽田空港」防犯キャンペーンを
一日警察署長に女優の斉藤慶子さんを迎え実施します。
当日は、
警視庁のピーポくん、
税関のカスタムくん、
東京入国管理局のトリブ、
東京モノレールのモノルン、
日本工学院専門学校蒲田校のかまトゥも登場し、
パフォーマンスも行われます。皆様の参加をお待ちしております。 》
《 「ニッポンスゴイデスネ〜」の定番に「国内では知られていないが、海外では超有名」ってのがあるね。 「安倍政権の言論封殺」「安倍政権は軍国政権」「アベノミクスは大失敗」。超有名ですよ〜 》