『俳句つれづれ草』そのニ

 結城昌治『俳句つれづれ草 昭和私史ノート』朝日新聞社1985年初版を読み進める。

《 けれど、日本はもう中国侵略に深入りしてブレーキがきかなくなっています。そのあげくが十二月 八日の宣戦布告で、掲げた戦争目的は自存自衛と東洋平和のため、大東亜共栄圏建設のためです。 理想は勇ましく、しかし実際は米英オランダの代わりに日本が東南アジアの支配者になるつもりで、 まだ中学二年生の私なども日本はやがて東亜の盟主となり、おまえたちはその指導者になるのだと 学校で教えられていました。 》 114頁

《 だから大東亜共栄圏などという野心が生まれたので、米英オランダの植民地を解放して独立させ、 アジア人のためのアジアを建設するという主張が純粋なら結構でしょうが、占領したらシンガポール島昭南島シンガポール市を沼南市と改称して皇民化教育を強制した一事だけみても、日本軍の意図は 見え見えです。 》 119-120頁

《 けれど、油田の確保は必要だったかもしれませんが、占領地の住民に日本の国歌を歌わせたり 日本語を教えたりしていた一方で、徴発と称して食料などを略奪し、婦女暴行にいたっては、陸海軍の 刑法を改正して戦地強姦罪を新設せざるをえなかったくらいひどかったようです。 》 121頁

《 ただ、伊藤整(小説家)が開戦の日の日記に「我々は白人の第一級者と戦う外、世界一流人の自覚に 立てない宿命を持っている」と書いていますが、欧米に遊学して近代的自我に目覚めたはずの芸術家ほど 戦争協力に積極的だったことは考えさせられます。高村光太郎(詩人)、斎藤茂吉歌人)、藤田嗣治 (画家)などがたちまち神がかりのような国粋主義者になってしまいました。 》 122頁

 私にとって最も関心のある問題だ。なぜ? 答えはいまもって見いだせない。

《 日本軍もビルマからインドとの国境近いインパールに向かって無謀なインパール作戦を三月に開始 しましたが、死者七万名というひどい負け方で、もちろん当時は報道禁止です。しかも作戦命令を出した ラングーンの軍司令部では、高級軍人が内地から芸者を呼び寄せていたという乱脈ぶりで、これじゃ 負けるのが当たり前でしょう。前線の兵士はたまったもんじゃありません。 》 144頁

《 それとサイパンに限らず、いちばん被害を受けたのは他国同士の戦争に巻き込まれた現地の住民でしょう。  》 146頁

《 たいへんな時代にたいへんな教育をうけたもんで、そうじゃなくても感じやすい年ごろでした。 》 153頁

 少国民の貴重な証言だ。

《 四月一日、米軍はとうとう沖縄本島に上陸してきました。沖縄戦の惨状は今さら私が書くまでもないと 思いますが、県民にとっていちばんの悲劇は、米軍のみならず日本軍から危害を加えられたことでしょう。 》  162頁

《 しかし、野間宏(小説家)『真空地帯』などによって兵営内の陰惨な実態を知ったのは敗戦後で、 それまでは映画その他で軍隊の美点ばかり宣伝されていました。 》 165頁

 つづく敗戦後は明後日に。

 昨日買ったミステリー文学館・編『幻の名探偵』光文社文庫2013年初版はダブリだった。歳のせいか 物忘れがひどくて。というよりも記憶容量に比して本が多過ぎることは重々承知。池内紀『恋文物語』 ちくま文庫には付箋「恋文物語¥420 山羊文庫」。検索すると、沼津市にあった(今もある?) 古本屋だ。ウェブサイトは今年は更新されていない。
 古本にはいろいろなモノが挟まっている。 忘れ難いモノは、吉行淳之介『四角三角矩形』創樹社1974年初版。見返しはベッドのマリリン・モンローが シーツで胸を隠してベッドに載せたトレイ上の牛乳の入ったグラスに卵を割り入れようとして、 笑顔を見せている写真(やたらと長い説明だなあ)。そこに挟んであったのは、紙マッチ『 PUB & SNACK ルージュ』横浜市神奈川区…は、ルージュの唇。おお、MM。粋なはからいに脱帽。
 モンローの死去から九年後に某週刊誌で「マリリン・モンローは生きている!! 一流イラストレーター 11人の証言」なるイラスト特集が組まれた。宇野亜喜良井上洋介田名網敬一黒田征太郎灘本唯人、 阿部隆生、和田誠辰巳四郎長新太、小谷育弘、佐伯俊男灘本唯人和田誠長新太の三人が真っ赤な 唇を描いている。MMといえば、ルージュの唇、が定着。いちばんの好みは長新太。(青い)黒子が四本足の 小鳥。この意味はわからない。灘本唯人では正しく黒い黒子。和田誠は黒子なし。

 ネットの見聞。

《 モンマルトルの芸術家たちが下宿していたことで知られる洗濯船、本当の「洗濯船」がどういうものか 》
 http://leblogdepaulo.eklablog.com/bateau-lavoir-a118342156

《 戦後70年で実現 事実上の「戦争画展」 「MOMAT コレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」  》 椹木野衣
  http://www.sankeibiz.jp/express/news/151026/exg1510261030002-n1.htm

《 今回の判決に関して。刑事裁判の基本は、疑わしきは罰せず。いくら状況印象が真っ黒けに思われても それを根拠としてはならないというのが人類の知恵だろう。それでは裁判は残酷だ被害者は救われないと 言うかもしれないが、裁判とはそもそもそういう残酷性のうえに成り立ってもいるということだろう。 》  森岡正博
 https://twitter.com/sukuitohananika

 ネットの拾いもの。

《 ブライダルの進行表 曲 G戦場のマリア(バッハ) 》

《 ローマの「ヴァチカン」を変換したら「ヴァ痴漢」になった… 》