『気違い部落周游紀行』つづき

 きだみのる『気違い部落周游紀行』冨山房百科文庫1981年初版、後半も読了。

《 イデオロが生活の上位に置かれるのは、何か封建的儒学的なものが感ぜられるように思われる。  》 181頁「54」

《 尤も考えて見ると金融や権力が産業を搾取して自らを肥しているのは何もこの村だけのことに 限らないようにも思える。 》 194頁「58」

《 ──先生よ。良心って自分の中の他人だな。 》 209頁「64」

 きだみのる『にっぽん部落』岩波新書1967年初版を出た当時に読んで、この言葉に出合ったときの驚きを今もって憶えている。

《 英雄たちの心性はその時々の衝動に支配され、この衝動に対しては極めて正直である。云わば 衝動の波の上で暮し、一つの波が去ると、も一つの新たな衝動に心を捉えられ前の事は忘却の深淵に沈んでしまうのだ。この類の正直さは部落の生活に広く浸透している。
  尤もこの衝動的あると云うのは屡々日本人全体に就て云われていることであることは指摘しておいてよいだろう。 》 217-218頁「65」

 息子の山田彝(つね)の「あとがき」から。

《 彼は長いヨーロッパ生活がもたらした国際人的教養と感覚をもって、なかば外来者的観点から、 日本社会を分析し理解するための一つのモデル、ミクロ・コスモスとしてこの一集落を捉え、これに逆説・諷刺といういわば負の照明を側面から与えることによって日本社会の解明点を浮き彫りにしようと試みたのである。 》

 そのとおりだ。名著といえよう。

 皆川博子の文化功労賞受賞に接して、彼女の本を数えてみた。単行本が十一冊、文庫本が十四冊。読んだのは単行本の『死の泉』早川書房のみ。苦手のホラー系の『少女怪談』などは買わなかった。

 Chim↑Pom椹木野衣ほか『 Don't Follow the Wind 』河出書房新社2015年初版が本屋に届く。受け取る。慎重に開封。凝った構成だ。

《 いまフクシマでなにが起こっているのか。そこには計り知れない謎が山積しています。誰もすべてを把握できない。 》 緑川雄太郎 227頁

 ネットの拾いもの。

《 待ってました! 大棟梁! このほうがしっくりするね。 》