「石ころだって役に立つ──『道』」

《 気がつけば私の生活と比較している。似ているが、まるで違う。 》

 と昨日書いたが、これは最終章「石ころだって役に立つ──『道』」にも当てはまる。今は知らぬが当時 (1970年前後)は身近にあった同棲の顛末が描かれている。これだけは経験の見通しはまるで立っていない。 それはさておき。フェリーニの映画『道』を巧みに使った、よく作り込まれた短編物語だ。

《 これは一九七四年の話である。花々が夜の道にかおっていたのが記憶にあざやかだから、 四月の終りか五月のはじめ、いずれにしろ晩春のことだったと思う。
  彼女と私は中央線の高架に近づいたり離れたりしながら、阿佐ヶ谷から荻窪の方へと歩いていた。 》

 伏線の効いた上手い書き出しだ。映画館で『道』を観た後の会話が続き、そして中盤。

《 二十四歳の私の脳はやわらかだった。しかし精神は硬かった。 》

 ウィリアム・アイリッシュ『幻の女』を彷彿させる。その冒頭。

《 夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。 》

 彼女の深慮遠謀。いや、男の鈍感。脱帽。恋愛文学アンソロジーを編むとしたら先ず入れる。

 フリオ・イグレシアスと女性の歌う『ベサメ・ムーチョ Besame Mucho 』。誰か知らぬが、 その女性の口吻に上記の物語の女性が浮かんだ。女性のほうが一枚も二枚も上手(うわて)だ。
 https://www.youtube.com/watch?v=k4sSM5lXPOc

 アンドレア・ボチェッリ Andrea Bocelli は画像の美女がタマラン。眼福。
 https://www.youtube.com/watch?v=yT3beRBk9xE

 テレサ・テンは『ジェルソミーナの歩いた道』を歌う。ジェルソミーナは『道』のヒロインの名前。
 https://www.youtube.com/watch?v=2WoBT_C7N3U

 ビデオカセットテープに録画してあった『道』は、見ぬままとうに処分した。

《 どんな小さなものであれ、前途に希望とか目標といったものを持っていない人間が、 他者との関係を維持できるわけはないのである。 》

 結び近くに置かれるこの真実に1970年代=二十代の私はまったく気づいていなかった。一方通行のはずだ。

 文庫版への「あとがき」で著者は書いている。

《 本がなくても生きられるが、「物語」がなくては生きられない。少なくとも生きにくい。 》

 私も「私の物語」を紡いでいたようだ。短歌が浮かぶ。

《  何故僕があなたばっかり好きなのか今ならわかる生きたいからだ  早坂類  》

 ネットの見聞。

《 トルドー首相の、カナダの(白人入植者による)先住民迫害と文化的侵略の歴史についての 公式な謝罪という行動は、自国の「過去の負の歴史を真摯に認める」ことで「現在のカナダの名誉を高め」ている。 その逆だと勘違いするのは、名誉と面子を取り違えた幼児的な思考で、面子と引き換えに名誉を貶める。 》  山崎雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki

《 さらに言えば、こういう行動は「過去の負の歴史を築いた時代の価値判断(政治思想)」から、 現代の自国の価値判断(政治思想)が訣別しているからできること。その時代の価値判断(政治思想)を 現代に復活させたい人間には、真似できない。負の歴史を作った時代と現在の自国を切り離して考えられない。 》  山崎雅弘

《 東京五輪の運営費1兆8000億円 当初見込みの6倍 》 NHK
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151218/k10010345771000.html

《 アホか。「当初の見込み」自体が何の意味もないということ。その見込みの上で誘致・決定した五輪。 土台が崩れたんだから、もう辞退するしかない。 》 寮美千子
 https://twitter.com/ryomichico

《 東京オリンピックなんだかめちゃくちゃなことになっていますね。「どんな失敗をしても 遡及して責任を追及しないし、なぜそういうことが起きたかも検証しない、これからどうなるかも予測しない」 ということをルール化すれば、なんでもむちゃくちゃんになりますよ。 》 内田樹
 https://twitter.com/levinassien

《 誰かが、「世界一お金のかからない五輪」だと言っていたような・・・。 》

《 「これっきりですから!」と騙して開催国になって、請求書には訳の分からん追加チャージ。 ぼったくりバーの手口そのものだ。 》

《 こうなったら「東京オリンピックを失敗させる会」でも作るか。 》

《 「野坂番のさだめ」 》 新潮社
 http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/mailmag_html/655.html

 ネットの拾いもの。

《 来年は本気出す 》