埴谷雄高『散歩者の夢想』ランティエ叢書1997年初版を少し読んだ。久しぶりに読む埴谷雄高の文章は、 先だって読んだ同叢書の青山二郎の文を
《 あるくだりを抜き書きすると、曲折に富む文章の趣旨から外れて解釈されるおそれがあるが。 》
と記したが、それを上回る、前後左右上下にくねくねと隘路を辿るような文章で、一度では文意を 読み切れない。といって再度読めば理解できるといったヤワなものではない。吉田健一同様、読みの深度が 試される。この文の対極に位置するのは、おそらく志賀直哉であろう。志賀の文は平明にして確固たる日本語、 と教えられていたが、埴谷雄高や吉田健一のエッセイを読むと、果たして平易な口語文=言文一致が良いのかどうか。 松浦寿輝『明治の表象空間』の一文が思い起こされる。
《 知識や教養があろうが、なかろうが、ましてアーカイヴ空間に沈潜などせずとも、「写生」はだれにもできる。 それは、他者性の一撃で亀裂の入った「内部」を抱えているわけでも「決定論の狂気」に取り憑かれている わけでもないごく普通の文学好きの誰彼が容易に実践しうる、汎用化された方法なのである。 》 602頁
《 子規は要するに、日本語の書き言葉のリテラシーの国家的水準を高めることに貢献した優秀な教育者でも あったのであり、その創意と努力によって、普通の書き手の前に平準化された表現の可能性の途が開かれた。》 602頁
そこだけ引用するとわかりやすいように思える埴谷雄高の文章。
《 換言すれば、目に見え手に触れ得る具体的な発想へまで遡源出来ぬ思想といったものは、敢えて断言するが、 この人間界には存しない。 》 33-34頁
《 この国の言葉では、ものの本質と本質のあいだにアナロジイを索(もと)めるという作業が甚だ困難で、 ただ言葉の上だけでのアナロジイになってしまう危険性があるからである。 》 42頁
《 一般的にいって、私達がもっている文学、ひいては私達の精神を支えているあらゆるかたちの文化は、 この内的自由の追求という根源的衝動に駆られるところに築き上げられたものなのだろう。そうでなければ 一つの精神から他の精神に受けつがれ、その涯(はて)も知れぬほどの未来へ向って展開してゆく人類の 強靭な生命力は恐らく無意味となるだろう。 》 49頁
そういえば最近夢想に縁がなかった。妄想ばかり。
ネットの見聞。
《 さらに意外な回答結果が出たー! 「創元推理文庫の文字の大きさについてどう思いますか?」 こちらは「小さい/ちょうどいい/大きい」という選択肢を用意させていただきました。よく 「文庫の文字が小さい」と言われるのでびくびくしていたのですが、結果はなんと「ちょうどいい」が84%、 「小さい」が14%、「大きい」が3%でした! 正直びっくりしちゃいました! 》 Web ミステリーズ!
http://www.webmysteries.jp/translated/1601.html
私には小さい。ランティエ叢書(角川春樹事務所)は、丸背で活字は大きめ(12ポ?)、一頁十五行で 行間ゆったり。同じ型式の「ちくま日本文学全集」は、字がやや薄く、表紙は半端にヤワで折れてしまう。 その中間に位置するのが河出書房から出ていた「世界文学の玉手箱」。表紙の堅さは中間だが十分な堅さ。 活字は同じ大きさで十六行だが、活字の色が紫で、女子好みだろうという意図が見え見え。残念なことに 本文の紙質がよくない。焼けが進む。同じ型式(文庫版・堅牢本・丸背)ではマンガ「ドラえもん」のコロコロ 文庫デラックス(小学館)がある。読んではいないけど、100円だと買ってしまう。ランティエ叢書とコロコロ 文庫デラックスが、好みの双璧かな。同じ型式の1970年代半ばのサンリオ・ギフト・ブック(挿絵が白黒)は別格。
《 特に最近はテキストに作者以外の手が入ることもあるのでなおさらだ。この「孤島の鬼」はストーリーの展開上、 いわゆる差別用語と呼ばれるものがテンコ盛りになっている。中でも特に名状しがたい一文は、光文社文庫版全集では なんと丸ごと削られてしまった。おうそうそう、光文社文庫といえば昔「帰去来殺人事件」削除事件もあったところだ。 社会的弱者への配慮が人一倍行き届いた出版社なのかもしれない。 》 プヒプヒ日記
http://d.hatena.ne.jp/puhipuhi/20160115
《 心がときめく五文字
金田一耕助 横溝正史
明智小五郎 江戸川乱歩
法水麟太郎 小栗虫太郎
由利麟太郎 横溝正史
三津木俊助 同
百谷泉一郎 高木彬光
大前田英策 同
藤枝真太郎 浜尾四郎
仁木雄太郎 仁木悦子
万治陀羅男 荒巻義雄
法月綸太郎 法月綸太郎
中禅寺秋彦 京極夏彦
片桐大三郎 倉知 淳
二階堂蘭子 二階堂黎人
瀬在丸紅子 森博嗣
天地龍之介 柄刀一 》
左がミステリの探偵、主役。半分は知らない。作家名を右に追加。全員知っている。万治陀羅男なんてすごいね。 『エッシャー宇宙の殺人』中公文庫に登場。これは既読。
《 講談社文芸文庫ワェブサイト 》
http://bungei-bunko.kodansha.co.jp/
所蔵は八十冊あまり。全冊ブックオフの100円棚から。
《 坊主バーでは「卒塔婆ックスコーヒー」を始めました。マドラーが卒塔婆の形をしています。 ご来店された方に卒塔婆マドラーをプレゼント致します。 》 坊主バー(四谷)
https://twitter.com/vowzbar_yotsuya
《 舎利ーズコーヒーはまだか。>"卒塔婆ックスコーヒー" 》
《 「オカモトゼロワンCM 恐竜篇」日本語版 》
https://www.youtube.com/watch?v=vswCi9uGZBE&utm_content=buffer0a0a9&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
ネットの拾いもの。
《 ♪ センターを知らずに 僕らは育った ♪ 》
《 難関有名女子高では「アベ過ぎる」という言葉が流行っていて、
意味は「馬鹿すぎる、他人の話が聞けない、聞かれたことに答えない&ごまかす」。 》