『見えるものと観えないもの』

  琥珀なす一月翡翠なす二月うらら三月眞珠玉(まだまたま)なす
                          照屋眞理子
 PDFファイルのモニター画面にはどうもなじめない。根っからの紙本主義者だ。
 午後ブックオフ長泉店へ自転車で行く。文庫本を五冊。平松洋子『買えない味2 はっとする味』ちくま文庫 2013年初版、キプリング『プークが丘の妖精パック』光文社古典新訳文庫2007年初版、文藝春秋・編『無名時代の私』 文春文庫1995年3刷、池内紀川本三郎松田哲夫・編『日本文学100年の名作 第3巻 1934-1943 三月の第四日曜』 新潮文庫2014年初版、同『第6巻 ベトナム姐ちゃん』同2015年初版、計540円。買える本があってよかった。しかし、 増えすぎる。『三月の第四日曜』は宮本百合子、『ベトナム姐ちゃん』は野坂昭如

 横尾忠則対話集『見えるものと観えないもの』ちくま文庫2009年7刷を読んだ。横尾の発言から共感する 箇所を。

《 ”想い”っていうのは、ぼくは一つのエネルギーだと思っているのね。”考え”っていうのは、思想でしょう。 絵画の場合、そこにイメージを定着させますね。そうすると、見る側はそこに意味性とか象徴されたもの、あるいは 記号とかを分析して認識するだけなんですよ。「うん、わかった」と。自分の”考え”で描いた作品というのは、 どうしてもそうなるわけで、一方、自分の”想い”で描いた作品というのは、見てもそんなふうなことをいちいち 認識できないんですよ。感情のエネルギーとしてワーッと伝わってくるから、ドーンとくる。そのほうが大事だからね。 伝えるとすればそれね。 》 71頁

《 芸術家でいちばん危険なのは傲慢ですよね。 》 75頁

《 だからぼくは「はじめに言葉ありき」じゃなくて、「はじめに直観ありき」「はじめに衝動ありき」を 優先している。 》 79頁

《 現代美術は、主題とテーマというものをなぜあんなに重視しなくちゃいけないのかな。芸術を言葉で 語らなければいけないのか。 》 94頁

《 最近思うんだけど、十九世紀の半ばくらいと、二十一世紀のどこかがつながって、二十世紀は地盤沈下して、 あれは何だったんだということになるんじゃないかな。 》 97頁

《 二十世紀絵画は、絵画を絵画として自立させようとしたでしょう。自立させようとしたところに問題があると 思う。絵画みたいなものを何で自立させなきゃいけないんだろう。芸術のための芸術は人間の魂と無関係だからね。 》  98頁

《 だから、なぜモダン・アートに非合理が導入されてはいけないのか、ということです。十九世紀以前までは 少なくとも、美術は歴史の闇の部分に光を与えたり魂を問題にしていました。しかしそれ以降、マネやセザンヌキュービズムが出てきてからは、そういうことは問題にしなくなり、空間、造形、色彩などの純粋造形の探求が テーマになってしまった。純粋の探求にはどこか、求心的なところがあって人間の愛や生命を無視するところが ありますよね。 》 172頁

《 二十世紀絵画でも、装飾的なものは極力排除している。
  そういうときに装飾的なものを排除するということは、一つの自然の感情を排除することにつながる。 》  201頁

《 ピカソを見てもまだ理性的な処理を感じます。 》 219頁

《 芸術などもそういう所があって、現代美術は、どうしてもまさに初めにコンセプトがなければいけないというのが 前提になっているわけです。ところが、そういうものはわりと周辺の美術界のわずかな人間だけで、一般大衆とか、 その絵を見る人間にとっては、そんなことはどうでもいいわけです。 》 239-240頁

《 ルーブルなんかに行くと、ミケランジェロとかダ・ビンチのデッサンだけを展示している部屋があるんですが、 それが実際の完成された油絵の作品よりも、はるかに自由に描いているし、快楽が伝わってくるわけです。 》  243頁

《 でも、その無用の長物が、やはり救ってくれるんですよね。背後にある確かなものがね。 》 272頁

《 ところが、描きながら、無心になってどんどん勝手に手が動いて、筆が動いていく場合があるんです。 時間も速いんですよ。それで描き上がったときに、ぼくは考えて描いていなかった。 》 274頁

《 つまり子供が無心に遊んでいる、何の目的意識も持たないで遊んでいる、あれは結局何かに憑かれた状態でしょう。 あの憑かれている状態そのものが、アートだと思うわけ。 》 276頁

《 だから観念というのは、こちら側から見る側に押し付けたものだと思うんです。ぼくがやろうとしているのは、 押しつけじゃない。どんなふうにも見てくださいと。 》 279頁

《 美術評論なんかもそうなんだけど、論理的に分析して、言語化して安心しようとする。魂に直接訴えかけてくる 言葉にならない喜びや驚きを見る人に受け取ってもらいたいのに、日本人の場合そこがどうも変な具合になっちゃう。 》  289頁

《 ぼくはどうしても日本人の政治家に芸術のわかる人なんて一人もいないんじゃないかっていう気がしてしょうがないんです (笑)。 》 297頁

《 日本人っていうのは突出した才能が出るとどういうわけか嫉妬しますね。 》 289頁

 ネットの見聞。

《 「ガンジーでも助走つけて殴るレベル」を上回る神フレーズを募集した結果沢山の応募ありがとうございました! 坊主バーで会議をした結果つるまんさんの「笠地蔵に集団暴行されるレベル」が金賞に輝きました。おめでとうございます! 卒塔婆マドラーを送りたいと思ってます! 》 坊主バー(四谷)
 https://twitter.com/vowzbar_yotsuya/status/704194404085436416

《 民放の皆様、高市に抗議して政権批判番組をオンエアしたら如何でしょうか。停波に成れば馬鹿な国民も、 さすがに事態の異常さに気付くでしょう。そして、電波媒体がなくなって一番困るのは電通ですから、 さっさと高市を更迭しますよ。どう? 》 藤岡真
 https://twitter.com/fujiokashin/status/704470388399427585

《 大学生や高校生の政治的意志表示(デモ)を、ここまで徹底して見下し、嘲り、品性のない言葉で罵る記事を 産経新聞が載せているという現象は、現政権がいかに学生の意志を怖れているかの裏返しでもある。路上の意志表示は 西欧の民主主義国では当たり前の風景だが、それを「ナチス」と呼ぶ人間はいない。 》 山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/704171739576606720

 ネットの拾いもの。

《 細かいことにめんどくさい人は大嫌い。人生がめんどくさそうな人は大好き。 》