『殺人はお好き?』

 小泉喜美子『殺人はお好き?』徳間文庫1981年初版を読んだ。再読だが、多分読んだのは昭和の時代。 発表は当時の国鉄の機関誌『交通新聞』に1962年8月から1963年1月まで連載された。裏表紙の紹介から。

《 私立探偵ロガートはGI時代の上司の依頼で来日した。上司の妻ユキコが麻薬密売に関係しているらしい、 というのだ。 》

 追跡、殺人、誘拐、対決……と息をつかせぬ早い展開。切れ目ない笑いと苦笑い。

《 「いえ、ほんとの酒の味は女っ気抜きで呑まないとわからないいいますからね」
  「そうだろうか? 今、私が一人で呑んでるスコッチは雨もり水みたいな味しかせんが」 》 12頁

《 「たしかにあれは一種の危なっかしいばくちだったのかもしれないな、私とユキコの結婚は」
  「そりゃそんなことを言い出したら、危なっかしいばくちでない結婚なんてないでしょう?  ルーレットに似ていてもっと率がわるい。しかも、当たり外れが賭けたほうにもはっきりわからないままに、 掛けは続行されるときてる。だからぼくはこの年齢(とし)まで一度も──」
  「きみが未だに独身でいるのは女の子がイエスといわないうちに酔っぱらってしまうからだろう」 15頁

《 ここでユキコ・ブランドンはちょっと受話器に耳をそばだて、それからにこっと笑って、送話口を手で おおいながらロガートの方に向かってささやいた。
  「あなたってそんなに危険な人?」
  「え?」
  「クラークが言ってるのよ、ガイ・ロガートに助け出されたからってそれは女にとって少しも安全を意味しない、 ですって……」
  「あなたのご主人に言ってやって下さい、その種の危険を歓迎する女もいるって」 》 198頁

《 それでなくたって社会派推理小説しか読んだことのない現実的な刑事連中は、私立探偵なんてものは 古くさいロマンスの中にしか出てこない空想の産物だと考えているだろうからな。 》 240頁

 著者の「あとがき」から。

《 日刊の連載だから、”一日一回、笑えるジョークを”が狙いだった。実際にやってみると、それがいかに むずかしいか、なまじの深刻調で人を泣かせたり怒らせたりするより人を笑わせるのがいかにむずかしいかを しみじみ思い知った。 》

 ジョーク満載だ。全く古ぼけていない。すばらしい。使いたくなる(似合わないが)。そして驚愕の真相。 これぞミステリーならではのどんでん返しの醍醐味。見事な伏線だ。

《 この『殺人はお好き?』は〈交通新聞〉にはウケて、途中で回数を延長してくれといわれ、あわててストーリーを 引きのばしたりなどもした。 》

《 その後二十年間埋もれていたこの『殺人はお好き?』が小泉喜美子の名前でふたたび日の目をみるとは、まさに 感無量である。 》

 五十年以上前の冒険活劇ミステリーなのに鮮度が落ちていない。今世紀のお笑いミステリーでは味わえない大人の味。 新聞掲載止まりのミステリーを本にした編集者に乾杯。この文庫本、三冊持っている。二冊は布教用。誰に贈るか。

 昼前、源兵衛川下流、一本松上流右岸の石垣に繁茂している羊歯植物を抜く。この前抜いて土手に干してあった草を 土のう袋二袋に詰める。きょう抜いたのはを干す。これで抜く草は大方抜いた。これらの雑草は、十年以上手入れされて いなかっただろう。
 午後、パソコンショップへ行き、マウスパッドを購入。新品は動きがいい。用もないのに動かしてしまう。

 ネットの見聞。

《 新国立、聖火台の置き場なし 場外案に組織委反発: … 君らは今まで金と時間と人数割いて、 何のコンペをやってたんや。幼稚園からやり直したほうがええで。 》

《 そういやオリンピックってどうなったんだろうね。ロゴマークは? 国立競技場は?  森と遠藤の二大馬鹿面はタダ飯喰ってんのか。 》

《 もたれ合いが共倒れを生む 》