「味戸ケイコ」

 昨日、使いそこなったもの。

《 結婚しました。 》

 昨日昼前、近所のカフェ、リトルノの壁面に絵を飾った。安藤信哉の20号ほどの水彩画、上條陽子の素描、 木葉井悦子の水彩画、そして長谷川潔の銅版画(ドライポイント)。一日経ってどうかな、と様子を見に行く…… その前に白滝公演での無料ライヴへ。しばらく楽しんで後にするとリトルノの女主人。戻って二人でライブをしばし 観賞。リトルノ行きは延期。
 http://ritornooo.exblog.jp/25097525/

 ブックオフ長泉店で文庫本を四冊。銀林みのる『鉄塔 武蔵野線ソフトバンク文庫2007年初版地図付き、E・T・ ベル『数学をつくった人びと(II、III) 』ハヤカワ文庫2009年4刷、2009年3刷、クレア・キップス『あるちいさな スズメの記録』文春文庫2015年初版、計432円。『鉄塔 武蔵野線』は新潮文庫で読んでいるけど、これは決定版。 『あるちいさなスズメの記録』は贈呈用。

 ヴァレリー『精神の危機』岩波文庫2010年初版を少し読む。じつに切り込み深い内容で、彼の思索が九十年前百年前 だとはとても思われない。今現在に直結している。凄い射程だ。

《 規律に服するのは、彼らにとって、つねに次善の策であり、一時的な手段、自己犠牲である。ドイツ人にとって、 それは生そのものなのだ。さらに、ドイツは国家として新しいということがある。大国の仲間入りを果たす国は── 古くからの大国が何世紀もかけて築いたものを駆け足で模倣し、よく考えられた方法にしたがって、自らを組織しようとする ──それは人工的に作られた都市がつねに幾何学的な構造の上に建てられるのと似た理屈である。ドイツ、イタリア、 日本はそのようにして、隣国の繁栄や現代の進歩の分析がもたらした科学的概念の上に作られた、後発の国家である。 》  73-74頁「方法的制覇」

《 意想外のことは予測されているのだ。よき方法とはあり得べきあらゆるケースに対する答えを持っていることだ。 》  75頁「方法的制覇」

《 今や、我々は刹那に生きて、衝撃や対照効果にのみ気を引かれ、偶発的興奮あるいはそれに類するものが照射するもの だけを捕らえるように強いられている。 》 88頁「知性について」

《 じっくり待つことと、変わらないこと、この二つは我々の時代には負担なのだ。 》 89頁「知性について」

《 機械が我々にとって有用に思われれば思われるほど、我々自身は不完全な存在となり、機械を手放せなくなる。それが 有用性の裏面である。 》 91頁「知性について」

《 その場合、「階級としての知性」とは、学歴のある人たちの階級のことになる。学歴はその物的証拠となる卒業証書に よって示される。 》 108頁「知性について」

《 このシステムの不都合な点として、人間を出発点の姿に固定してしまう欠点があることを指摘しておかなければならない。  》 109頁「知性について」

 ネットの見聞。

《 復刊ドットコム版の佐々木丸美全集には、彼女の作品には欠かせない存在である味戸ケイコさんが、 すべてのカバーを描き下ろされました。味戸さんにお願いできるほどの作品が書けたら……という宿願が、僕にはあります。 さだまさしさんのジャケットも手掛けられていましたね。素晴らしいお仕事だった。 》 津原泰水
 https://twitter.com/tsuharayasumi/status/715337845418758144

《 椹木:70年代に、寺山修司らが仕掛けた投稿文化のブームがあったのですが、その流れを汲むもののひとつに、 やなせたかしが編集長を務めていた『詩とメルヘン』という雑誌がありました。そこが主催した第一回サンリオ美術賞に 輝いたのが味戸さんのイラストでした。目と目が離れたさびしげな少女の世界は、いま見ても恐いくらいの硬質な抒情を たたえています。その絵の魅力にとりつかれたようなコレクターの方が静岡の三島におられます。ご自身で作られたのが 私設のK美術館です。味戸ケイコの主要作はほとんどそこにあります。

  Tak:佐藤溪美術館と同じような成り立ちなのですね。その美術館は今でも存続しているのですか?

  椹木:残念ながら、ここも2012年12月に閉館してしまいました。 》

《 このように、戦後という時代には、美術の専門家や公的な美術館が従っている基準からはずれている画家がたくさんおり、 その魅力にとりつかれて孤独にそれらを守ってきた人もいるのです。そういう絵や人たちが戦後という時代の中で 存在していることを忘れてはいけないと思います。それだけの評価や鑑賞に価する作品ばかりなのですから。 》
 http://nichibi.webshogakukan.com/bluediary/2016/03/post-11.html

 胸熱。