「戦後詩十篇」

 『塚本邦雄監修 現代詩コレクション』書肆季節社1990年、序文「さらば詞華、されば詞華」から。

《 昭和五十年刊「詩歌宇宙論」に収めた「邂逅秘蹟─戦後詩十選」は右の十篇である。 》

《  風と結婚式      石原吉郎
   暦のうえの死    角田清文
   ダラアの夜      相澤啓三
   新古今断想     安西 均
   朝           荒谷 肇
   腐刻画        田村隆一
   第九の欠落を含む十の詩篇  高橋睦郎
   二月の喪      長谷康雄
   地獄の他の季節  野田理一
   花鳥について    鈴木漠   》

《 この十は始終揺れ動く。卒然と思ひ描いても、ただちに、全く異なるベスト十が、十種類以上生れる。 》

 『現代詩手帖思潮社1978年10月号は「特集 戦後詩の10篇」。アンケートに塚本邦雄は上記十篇を挙げている。 ただ、「新古今断想」は「新古今断層」と誤植。逆に「第九の欠落を含む十の詩篇」は、「欠落」が「缺落」に。 誤植は避けられぬ宿命か。それはさておき。『現代詩手帖』でアンケートに応えた鮎川信夫吉本隆明、加藤郁乎ら 『現代詩コレクション』には漏れた詩人から小長谷清実、鶴岡義久、安永稔和ら採用された詩人たち、計五十一名が 挙げた戦後詩十篇は、大部分がメジャーな詩人。九日に引用した塚本邦雄の文を再掲。

《 詩人の運命、詩作品の評価について深く考へ、あまりにも不可解な要素の多さに立ち竦む。いつの日かまた、 輝けるマイナー・ポエットの詞華集が編みたい。 》

 椹木野衣・編『日本美術全集 第19巻 戦後〜1995 拡張する戦後美術』小学館2015年を思う。大家から無名まで 収録されている。凄い編集だ。九日に届いた味戸ケイコさんのお手紙にはこんなくだり。

《  多分、批判の声も多かったと思います。
   でも、それをはねのける強さ、頑固なまでの強さを
   きちんと形にして いらっしゃいますよね。  》

 『塚本邦雄監修 現代詩コレクション』からライト・ヴァースのような、川崎洋の詩「にじ」全篇。

《   草の中にたたずんでいると

    「あの人と貴方は結婚しよう
     と考えていらっしゃいますね」

    とゆう

    「ええ」

    と答えると

    それでは
    といって 空に
    見事なにじがかかった  》

 ネットの見聞。

《 真面目な話、アリエス Who? が普通だとしたら、学問の蓄積、なにソレっってなことになってしまうわなあ(慄然)。 》  赤城毅
 https://twitter.com/akagitsuyoshi/status/719537914116313088

 本棚からフィリップ・アリエス『死を前にした人間』みすず書房1990年初版を取り出す。二段組六百頁近い。本体6000円。 帯から。

《 中世から現代まで、死と葬礼をめぐる根深い感情の変遷を明らかにする。 》

 お、そそられる。まあ細かい活字だこと。創元推理文庫より小さい感じ。ブックオフで100円だったから、ま、いいか。 帯に『〈子供〉の誕生』があって、ああ、あの人か。そんなに有名だとは知らなかった。

 ネットの拾いもの。

《 昨日、若いひとに「刑事コロンボのころのピーター・フォークに似てますよねっ」とナイス・ヨイショをされて、おお、 愛いやつよのうと機嫌良くしたが、いつもヨレヨレの服着てますよねと婉曲にいわれたのかもしれないと気づく。 》

《 どっかの馬鹿が景気は良いんです!、と言い張ってたんだけとな
  確か安倍って名前だった。 》