アルフレート・デーブリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』河出書房新社2012年新装初版を読了。粗筋はウィキで。
傷害致死罪で四年間の刑期を務めた三十ニ歳の大男フランツ・ビーバーコフは、少し足りないようなお人好し。 彼はベルリンの底辺で起きる諍いと犯罪に振り回され、騙され、右腕を失う。変転する事態をハードボイルドを連想させる 冷静な描写で綴る。
《 かくのごとく、家具運搬商人などを経て新聞売りになったベルリン北区出身一九ニ七年末のフランツ・ビーバーコフは、 かの有名ないにしえのオレステスと相違しているのだ。 》 110頁
《 フランツは、その婚約者、姓はどうだっていいのだがイーダを、女盛りの年頃でなぐり殺してしまった。 》 110頁
《 かれはまっとうな生活をしようと望んだ。しかしそこいらにはならず者、浮浪者、やくざ者がいるばかり、そのために フランツ・ビーバーコフは、もうこれ以上世のなかのことをなにも見たくはないし聞きたくもない、たとえ安宿(ドヤ)を ねぐらにわたり歩こうとも、最後の一文まで飲み代にはたくのだ。 》 166頁
そんな彼に惚れた二十歳の娼婦。が、残酷な運命が二人を襲う。深い苦しみのなか、やがてビーバーコフは「回心」する。
《 おまえは人生というものを知っている、きのうやきょうこの地上にこぼれ落ちたわけではない、おまえはものごとに 鼻がきく、なにかに気づいているのだろう。おまえにはなにも見えないしなにも聞こえない、しかしそれを予感している、 思いきってそれに眼を向けようとしないのだ。あらぬ方向へ眼をそらせる、だからといって逃げるわけでもない、そうするには おまえはあまりにもいさぎよすぎるからだ、おまえは歯をくいしばってきた、おまえは臆病ではない、でも、何が起こるか、 それを背負いきれるかどうか、自分の肩がそれを受け入れるに足るだけ頑丈かどうかがわかっていないのだ。 》 447頁
ネットにはセリーヌ『夜の果ての旅』との関連の書き込みがあった。同感。ただ『夜の果ての旅』の主人公は医者だったが。 他にネルヴァル『白鯨』をその百科全書的な逸脱によって連想。結局、私はどこまで理解できたのだろう。一筋縄ではいかない小説だ。
訳者早坂守俊の解説から。
《 デーブリーンは、『ベルリン・アレクサンダー広場』を一九ニ七年秋から書きはじめて一九ニ八年に書きあげたのだが、 (中略)この大規模な小説が世界恐慌の年、一九ニ九年に出版されるや、その後三年ほどのあいだに五万部も売れて、 ナチスの支配に至るまでの数年間、ベストセラーの座を保持しつづけた。 》
《 この物語は、七年前に出たジョイスの『ユリシーズ』のダブリン、四年前のドス・パソスの『マンハッタン乗換駅』 のニューヨークにつづく、ベルリンが主人公である大都市小説である。 》
若い頃だったら途中で挫折したかも。それがベストセラーとは。ベルリンその他の実在の地名が、読者にはありありと 浮かぶのかも、と思ったが。
《 この小説が出版された翌年の一九三○年にはイタリア語とデンマーク語に翻訳され、三一年にはイギリスとアメリカで 出版、三二年にはスペイン語に翻訳、三三年にはフランス語、三四年にはスウェーデン語、三五年にはロシア語とチェコ語に 翻訳された。さらに第二次大戦後の一九五八年にはハンガリア語版が出た。 》
日本語版は一九七一年に出たが、丸谷才一・鹿島茂・三浦雅士『文学全集を立ちあげる』文春文庫2010年初版で知った。 「世界文学全集 82巻」がデーブリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』。それまでは全く知らなかった。
《 鹿島 ドイツでデーブリーンは、さっき「ベルリン・アレクサンダー広場」をいれることにしたんですよね。 あとは、ノサックとか、その辺はなしでいいですか? 》 80頁
ネットの見聞。
《 大手メディアも、発生から5日目という状況で未だに「早期指定に前向き」などと、 あたかも首相が迅速に対応しているかのような話を書くのはやめたらどうか。「菅直人政権は発生翌日に『被害見込み』で 激甚災害指定を閣議決定した」と書いたらどうか。 》 山崎 雅弘
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/721978052050231296
《 今日の原子力規制委員会・臨時会は、屁理屈の見本のようだった。「仮に、熊本地震の震源が南に移動して、 川内原発から30?圏内の断層が動いても、川内を襲う振動は150ガル程度」→「基準地震動は水平620ガル・ 原子炉自動停止設定値は水平160ガルなので、設備が壊れる事無く停止できる」→ 》 春橋哲史
https://twitter.com/haruhasiSF/status/721889956650549248
《 結局のとこ政府の見通しが甘いんだよ
どうせ今回死傷者少ないんで、少々救援遅れても大丈夫とか思ったんだろ
逆だ逆
死傷者少ないということは、それだけ避難者が多いということ
避難者が多ければ、それだけ迅速に大量の物資を輸送し配らなければならない
これが分かってないバカが多過ぎ
今回の避難者は11万人ぐらいらしいけど、東京で大地震あったら、
その数十倍の避難者出るんだぞ
こんな調子じゃまず対応不可能なのは目に見えてる 》
ネットの拾いもの。
《 兵站を叩きに来るとか天災と思えない戦略的手腕だな 》