大岡信『ぬばたまの夜、天の掃除器せまつてくる』岩波書店1987年初版を読んだ。深い動揺はなかったが、 心の深い亀裂に気づかせる詩、それこそが私の求める詩だと、この詩集は私に気づかせた。印象的だったのが 「巻の九 われらの時代の風景画・論」。題名が示すように風景画・論の詩だからか。
《 拗ね者のセザンヌには
宮廷のおかかへ絵師の安楽な暮らしはなかつた。
だが彼には
エクスの東に青い裸身を横たへる
サント・ヴィクトワールの山塊を
彼自身の眼で切りとつて
画面の上で風景を思ひのままに哲学する
自由があつた 》
《 われらの時代に
風景画とは何であらうか。
風景画は自画像である、われわれの。
眼はすでに土地の上に一定の広がりを見ず、
内部は外部へ溢れかへる。
欲望のマッシュポテトが
絶望の食卓の脚になつている 》
卓抜なセザンヌ論であり、風景画論だと思う。
《 紙になるといふことは
畏るべきことなのだ
にんげんよ
この変化(へんげ)を見よ 》 「巻の十二 世界は紙にも還元できる」
「巻の九 われらの時代の風景画・論」「巻の十二 世界は紙にも還元できる」は、思索詩とでも呼べるか。「巻の十四 八月六日の小さな出来事」は、原爆を投下した爆撃機エノラ・ゲイと台所の流しの小さな「ゴミムシ」とを対比させている。 思想詩か。最後の一行に震える。
《 さうよ
それがあたしの楽しい義務(つとめ)なの
だつてあたくし
ご存じかしら
名前からして
陽気なエノーラ(Enola Gay) 》
「陽気なエノーラ」は太字のゴシック体。アメリカ中産階級専業主婦の無邪気な姿が浮かぶ。何ともブラックな詩だ。
《 あの夏以来
だいじな人もけつこう死んだ
それもしだいに
薄れゆく稲妻の
一瞬の光
長い闇
やがて自分が死ねば
最も早く
それを忘れる。 》 「巻の十六 残暑感懐集」
早、戦後七十年。
《 風も落ち プレイアデスも
落ち よるのしじまに
時は過ぎゆく
けれどもわたしは 一人で寝てゐる 》 「巻の二十一 東西ひとり寝吟詠集」
俺のことか。
ネットの見聞。
《 予約注文した、すごく重い写真集が届いた。鬼海弘雄さんのモノクロームのスナップショット。 画面の何処にも人がいないのに濃密な人の気配が満ちている。真昼の都市の亡霊たちが静かに歩いているような。 窓から見ているあの猫も亡霊かもしれない。 》 林由紀子
https://twitter.com/PsycheYukiko/status/726007002682421248
上記引用の「巻の九 われらの時代の風景画・論」につながる。
《 森羅万象を刻む―デューラーから柄澤齊へ 》 町田市立国際版画美術館
http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2016-302
日本人の出品作家は、長谷川潔(1891-1980)、木原康行(1932-2011)、日和崎尊夫(1941-1992、渡辺千尋(1944-2009)、 門坂流(1948-2014)、柄澤齊(1950-)。ま、普通だ。私ならそれに奥野淑子(きよこ 1978-)の木口木版画を加える。 彼女の作品には心地よい流れとゆるやかな緊張感がうまく融合している。他者の木口木版には切っ先の緊張感が漲っているが、 奥野には息が抜けるところがある。が、ゆるんではいない。詩集最後の詩「巻の三十六 四季のうた」その「一 夏のうた」 前半二行。
《 爬虫類こそ力づよい生命の形
一瞬たりとも直線に同調しない 》
「爬虫類」を「植物」に替えると、奥野淑子の作品の本質を突いていると思ってしまう。彼女の作風には琳派の嫡流を感じる。 写実性とデザイン性の自在な統合だろうか。まだ結論が出ない。
《 【謹告】拙著『日本会議の研究』の発売日である本日「日本会議事務総長椛島有三」名義で「出版の差し止めを求める」 旨の「申し入れ書」が扶桑社に届きました。著者として「本丸だったんだ」と安堵すると同時にかかる言論弾圧に対し抗議します! 》 菅野完
https://twitter.com/noiehoie/status/725598483986567168
扶桑社新書な。買わなくては。
《 黒田日銀総裁が4度めの物価目標を先送りした。物価目標は遠ざかるばかり。ちなみに2017年度までということは 2018年3月。黒田日銀総裁の任期切れです。これって任期中には絶望的と言ってるようなものです。何という無責任か。 安倍政権の政策はすべてそうです。泥沼への「道半ば」です。 》 金子勝
https://twitter.com/masaru_kaneko/status/726066515812847616
《 ネットの進化とともに増加する”繊細チンピラ”とは? 》 トゥキャッチ
http://togech.jp/2013/09/12/3445
ネットの拾いもの。
《 原子力とかめんどくさいもの、まだやってるなんて前時代的。 》
《 M・R・ケアリー『パンドラの少女』(東京創元社)
帯の文句「基地の外は危ないよ。〈飢えた奴ら〉がいるから――」。
いつだって基地外は危ない。 》
《 「九・州・よ・り・欧・州。」(安倍晋三) 》