『日本の風俗嬢』

 中村淳彦『日本の風俗嬢』新潮新書2014年9刷を読んだ。いやあビックリ。昨日のストリップ劇場同様、性風俗の えらい変わりようにオレの常識は前世紀あるいは昭和の遺物、と実感。

《 どこにでもいる一般女性がポジティブに働いている。高学歴の者もいれば、家族持ちもいる。これが現在の 普通の光景である。 》 13頁

《 つまり大雑把ではあるが、日本にある性風俗店は違法店も含めて、おおよそ一万三○○○店、(中略)他業種と 比べると、性風俗店の一万三○○○程度というのは需要関係からみて妥当な数なのか。この数年、業界から景気の いい話は聞いたことがない点を考えると、増えすぎている状況にあると考えられる。 》 38頁

《 つまり日本に性風俗嬢は推定で三ニ万五○○○人から三九万人程度いるということができる。 》 104頁

《 現在は求人サイトに広告を出せば働きたいという女性がやってくる一種の買い手市場になっているため、裸になると 腹をくくったからといって誰でも就業できるわけではない。面接ではそれぞれの店のレベルに達していない相当数の 女性たちが断られている。 》 104-105頁

《 風俗嬢になりたくてもなれない女性が年々、増えているのだ。 》 107頁

《 しかしニ○○○年代から現在に至っては、風俗嬢の性質は大きく変わっている。
  一般女性が普通の仕事として性風俗を選択し、さして疑問を抱くこともなくポジティブに働いている──これが 現実だ。 》 109頁

《 もともと性風俗に嫌悪感を持つような女性は就業を希望しない。現在働いてきちんと自立している風俗嬢の多くは、 仕事についても自身についてもポジティブな意識を持っている。言い換えれば、風俗業界はポジティブな女性しか 生き残れない厳しい競争社会になっている。 》 140頁

《 社会の劣化と連鎖して生まれたポジティブに働く風俗嬢の姿を眺めて、このままでいいのだろうかという疑問は 拭えない。 》143頁

《 実は筆者自身が文筆業をしながら小さな介護施設を運営しており、数年間介護現場を経験して見えてきた現実である。  》 134頁

《 裸になりさえすれば生活できる、という時代は完全に終わっている。 》 178頁

 最終章〈第六章 性風俗が「普通の仕事」なる日〉はじつに先進的だ。眼から鱗の論が展開されている。賛否両論か。 私は、その方向へ進むしかないだろうと思う。これは後世、重要な著作とみなされる予感。彼の論述に大岡信と同様の 中庸にして広い視野を感じる。

《 ちなみに西川口性風俗店の浄化作戦とともに行政が主導して「(性風俗を排除して)西川口をB級グルメの街に しよう」という運動を起こしたが、まったく盛りあがりをみせず、結果として跡地周辺はゴーストタウン化している。  》 61頁

 行政が主導すればこんなものだ。三島も気をつけないと。

 本棚には中村淳彦『名前のない女たち』宝島社2002年2刷、『アタシは生きる!! 』宝島社2004年初版の二冊。どちらも アダルトビデオ女優へのインタビュー集。知らない世界がそこにあった。

 ネットの見聞。

《 『ちろりん村顛末記』広岡 敬一 著 ちくま文庫 刊行日 2016/05/10
 トルコ風呂と呼ばれていた特殊浴場を描く伝説のノンフィクション。働く男女の素顔と人生、営業システム、 歴史などを記した貴重な記録。解説 本橋信宏 》
 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480433534/

 上記の本は朝日文庫1984年初版で持っている。『トルコロジー トルコ風呂専門記者の報告』晩聲社ヤゲンブラ選書 1979年5刷、『ストリップ慕情』講談社文庫1993年初版も持っている。風俗の知識はそこで止まっていたわ。

 ネットの見聞。

《 東京オリンピック新エンブレム 》
 http://my.shadowcity.jp/2016/05/post-9379.html

 ネットの拾いもの。

《 舛添さんの件についてコメントする片山さつきさんを見て「グッドパートナーじゃん」と思った。 》