「意志と覚悟」

 絵を描くのは命がけ。それを評するのも命がけ。
 絵を描く時、描きたいこと、ものを満腹の食事のように全部描いて満足した絵に、鑑賞者は息が詰まる。絵の描写も腹八分、 といったことを昨日の北斎道子展へいらした初見の絵描きに述べたが、本当は違う。描いても描いても完成したとは思えない 不満、飢餓感を抱いている画家のみが、自らの世界の限界を突き抜ける作品を創出する。が、温厚な絵描きにそれは言えない。 画家自身そこまでの強迫的な意志と覚悟があるかどうか。形相凄まじく制作に奮闘する美術家の映像がときおり見られるが、 それは受け狙いの演技。作品が作者のすべてを語っている。
 胸底深く突き刺さる、心を揺さぶられる絵と、それを描いた温和な味戸ケイコさんの隔たりに、人は戸惑う。
 「描いても描いても完成したとは思えない」とは、一枚の絵に何度も筆を費やすことではない。何枚もの紙、キャンバスに 描くことを言う。究極の表現は、一本の描線、一刷毛の筆触で絵が完成すること。そのために何枚もの紙、キャンバスを費やす。
 友だちのUさんが最近一本の線で描いたテディ・ベアは、じつに見事な出来。当然私が購入。以前の色彩画とはえらい違い。 彼女は子供の頃書道に熱中していた。書から絵画へ参入という、聞いたことのない道筋をたどった。もともと筋が良いのだろう、 さりげなく素晴らしい。しかし、周囲にはそれをわかる人がほとんどいない。ま、私がワカルからいいけど(スンゲエ自信)。

 午後、自転車でブックオフ函南店へ。柳瀬尚紀『猫舌三昧』朝日新聞社2002年初版、アンドレ・ブルトンブルトン詩集』 思潮社1994年新装初版帯付、二階堂黎人『双面獣事件(上・下)』講談社文庫2011年初版、深水黎一郎『花窗玻璃』河出文庫 2015年初版、昭和官能研究会・編『桃源郷 ピンク・ユーモア』光文社文庫2011年初版、計648円。

 ネットの見聞。

《 『大正文学全集』を夢見る 》 古本夜話
 http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20160522/1463929197

 「33 新感覚派文学集」、あれかこれか。気になる。

《 森田崇さんが言っておられる「ルパンの断絶」だが、断絶したのはルパンだけではなく、髷物も西洋古装劇 (何でこんな書き方かというと「コスチューム・プレイ」が別の使われ方をしてるから)もだ。某ニコ動で白黒版おそ松くんの コメントを見ると、いろんなエンタメの約束事が忘れられているのに驚く。 》 芦辺 拓
 https://twitter.com/ashibetaku/status/734655306014167040

《 私が原稿で必要に迫られて書く時には「左派(共産主義勢力)」や「右派(民族主義者)」など、極力「言葉の定義」を 一緒に書くようにしているが、そうした定義を省いて「右翼」「左翼」という言葉を使う人の言説は、それだけで 信憑性に一定の留保をつけて読む。古い言葉で現実認識が歪められてしまう。 》 山崎 雅弘
 https://twitter.com/mas__yamazaki/status/734603448071639044

《 これは歴史の皮肉だろう。

  幕末の武雄領主・鍋島茂義は、ほとんど九州から出たことも無いのに世界に目を開き、 その文物をできる限り集めて今に残した。

  一方、平成の前市長は、東大まで出ていながら、足許の武雄のことは何も知らずに終わった、と。 》 佐藤賢一の中の人
 https://twitter.com/ke_1sato/status/734712059124932609

 ネットの拾いもの。

《 (神様仏様小泉今日子様、どうかどうか、能年玲奈さんに救いの手を差しのべてください) 》

《 さぁ、家に帰ろうと店を出たのに気づいたら日高屋の前にいた。病気かもしれない。 》