「空間の再構造化」

 月刊誌『ユリイカ』1996年9月号青土社、特集「還ってきたセザンヌ」を少し読んだ。二十年間ロクに読んでなかった。 今頃になって読みたくなった。本は保存しておくものだ。
 セザンヌはずっと気になっていた。前世紀末の企画展の紹介文「呉一騏 水墨画の21世紀へ」ではセザンヌと呉一騏を 対比し論じた。
 http://web.thn.jp/kbi/go3.htm

 4月30日の日録から。

《  印象的だったのが「巻の九 われらの時代の風景画・論」。題名が示すように風景画・論の詩だからか。

《  拗ね者のセザンヌには
   宮廷のおかかへ絵師の安楽な暮らしはなかつた。
   だが彼には
   エクスの東に青い裸身を横たへる
   サント・ヴィクトワールの山塊を
   彼自身の眼で切りとつて
   画面の上で風景を思ひのままに哲学する
   自由があつた  》

《  われらの時代に
   風景画とは何であらうか。

   風景画は自画像である、われわれの。
   眼はすでに土地の上に一定の広がりを見ず、
   内部は外部へ溢れかへる。
   欲望のマッシュポテトが
   絶望の食卓の脚になつている  》

 卓抜なセザンヌ論であり、風景画論だと思う。 》
 http://d.hatena.ne.jp/k-bijutukan/20160430#p1

 5月22日の日録に引用した木田元の言葉。

《  だからこそ、この出逢いを機縁として時間性の再構造化も起こりうるのであろう。 》
 http://d.hatena.ne.jp/k-bijutukan/20160522#p1

 「再構造化」の視点によって視界が新たな様相を見せてきた。「時間性の再構造化」から「空間の再構造化」へ。 前世紀末にはセザンヌの苦闘の内容が明瞭ではなかった。今は「空間の再構造化」という視点から次第に開けてきた。 再構成ではない。再構造化だ。「特集=還ってきたセザンヌ」でのイザベル・ガン「近代性の転換点におけるセザンヌ」 が刺激的。

《 彼は自らの視覚的な感覚を画布の上に翻訳するに際して、デッサン、色彩、光が同時に表出され、形態がいくつかの 本質的な記号に還元されるような、綜合的な筆触を組織的に駆使し、画面を組みたてていく。この構造は、とりわけ、 建築的なモティーフに適合する。 》 60頁 訳・松浦寿夫

《 色彩は、その描写的な特質を失い、象徴的な意味を獲得するが、それは、セザンヌの絵画の精神的な芸術への進展を 示すものである。 》 63頁

 セザンヌ晩年のこのくだりに、安藤信哉の晩年が重なる。その水彩画について。

《 光が色彩を貫くような、「沁み派(タシスト)」的な手法は、彼の油彩画に直接的な影響を及した。晩年、セザンヌは かなりの数の水彩画を制作した。この軽やかな技法は、彼の大きな作品であつかった主題を選び、彼に提起する。たとえば、 軽やかで大気的な筆触で描かれた、サント=ヴィクトワール山の眺望、シャトー・ノワール近くの下木、および、ほとんど 抽象的な岩、バロック的なシルエットをそなえた水浴者たち、壊れやすい幻のように処理されたに人物像、壮麗な静物画 などである。 》 65頁

 セザンヌの晩年の水彩画に一際惹かれる私は、安藤信哉の晩年の水彩画にもすごく惹かれる。
 http://web.thn.jp/kbi/ando.htm

 拙論「安藤信哉(のぶや)・自在への架橋」を再読して驚いた。日本的「自在」の構造、と書いている。構造……。 思索は螺旋を描いて深まってゆく……かな。
 http://web.thn.jp/kbi/ando10.htm

 ネットの見聞。

《 だがそれは、未知の古本屋さんについてではなく、今夕発表された、舛添都知事の調査報告書の書籍購入リストに 「古本屋ツアー・イン・神保町」が含まれているというものであった。 》 古本屋ツアー・イン・ジャパン
 http://furuhonya-tour.seesaa.net/article/438695770.html

 上記の記事で陽咸二が採り上げられているので、梅野記念絵画館の図録で陽咸二の作品を見る。
 http://www.umenokinen.com/

 ついでに原勝郎(1889-1966) の絵を見る。図録の解説から。

《 そして稀に市場に出て来ると、市場性がないためか、知ってか知らずか、原勝四郎の作品としてあつかわれている ものがある。 》 142頁

 イザベル・ガン「近代性の転換点におけるセザンヌ」の訳者松浦寿夫松浦寿輝を間違えそうになる。

 梅野記念絵画館で展示のために安藤信哉の絵を借りに来た梅野隆氏は「いいなあ」としきりに言っていた。

《 「こんな美しい絵が埋もれていたのか。これが偽らざる感懐であります」 》 梅野記念絵画館図録「安藤信哉」102頁

《 いやいや、すげーなメニュー。オオグソクムシの丸揚げって! 》 古書現世のブログ
 http://d.hatena.ne.jp/sedoro/20160606

《 取調ではやってもいない事や言ってもいない事を刑事は平気で調書に書き、「これでいいよね?」 などと適当に被疑者を丸めこもうとするので、絶対に絶対に、納得いかないところは書き直しさせるor 署名押印しない。が基本だよ。今後ヘイトスピーチ規制法が強化されたら不当逮捕者が増えそうだから… 》  ろくでなし子一審一部無罪!
   https://twitter.com/6d745/status/740025717421838336

《 「世界で最もパワフルな女性100人」今年も圏外の日本社会はタリバンよりひどい 》 木村正人
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20160607-00058548/

 パワフル=打たれ強いならば、ろくでなし子さんだろう。

 ネットの拾いもの。

《 安倍って何か日本人に対して良いことしたっけ? 》

《 もしかして、安倍総理って馬鹿なの? 》