「闇の新たな相貌」

 椹木野衣・編『日本美術全集 第19巻』小学館2015年に掲載された味戸ケイコさんの絵。下記リンクページの 画面中段にある、振り向いた少女の絵について椹木野衣の発言。

《 全集に載せた作品は、彼女の原点とも呼べる『終末から』という、筑摩書房から出ていた雑誌の表紙絵です。 》
 http://nichibi.webshogakukan.com/bluediary/2016/03/post-11.html

 昨日話題の宮下規久朗『闇の美術史  カラヴァッジョの水脈』岩波書店の一節。フェルメールの名作 『真珠の耳飾りのある少女』について。

《 人物のみが描かれるため、背景の闇は効果的だ。少女には強い光が当たっているが、その周囲には拡散していない。 フェルメールはここでは、画面全体に満ちる光を描写せず、レオナルドのように人物の姿のみを浮かび上がらせている。 この絵が「北方のモナリザ」と呼ばれる所以である。振り向いたポーズは、やはりレオナルドの創始した「肩越しの肖像」 という形式であった。 》 153頁

 2000年、大阪市立美術館フェルメール展で『真珠の耳飾りのある少女』と『天秤を持つ女』を鑑賞。『天秤を持つ女』 に首ったけ。この絵だけを二時間近く観賞していた。混んでいるほどでもなく、独り占め、な極楽気分。

 振り向いたポーズ。それは『終末から』最終号1974年の上記表紙絵であり、吉原幸子『クモンの空』1977年の表紙絵だ。 それは鏑木清方の『築地明石町』へと遡る。

 『日本美術全集 第19巻』小学館椹木野衣による味戸ケイコの絵の解説から。

《 そしてこの漆黒の闇。その底はいったいどこへ続いているのだろう。 》

 カラヴァッジョを開祖とする闇の表現は、味戸ケイコさんによって新たな相貌を魅せた、と言えまいか。漆黒の闇のその先、 ではなく、その底はいったいどこへ。これはコワイ。こんな想像をかきたてる漆黒の描写は、意外と見当たらない気がする。 どう考えるか、いいアイデアが浮かぶまで放置する。

 背景が漆黒の絵には長谷川潔のメゾチント技法による銅版画がある。闇の充実を感じる。

 赤瀬川原平『睡眠博物誌 夢泥棒』新風舎文庫2004年初版は、逆説の光と闇を描いている稀有な例だ。1975年初刊。 光と深い陰影の情景は現実にはあり得ない世界。闇の光、あるいは輝ける闇。コールタールのようにドロっとした漆黒の海。 超現実的な夢魔の世界。闇と光の相剋に新たな局面を切り開いた絵だと思う。

 昨日のラジオ中継の模様がブログに。
《 三島の貴重な宝を探しに行ってきました! 》
 http://777fm.com/blog/2016/07/post-344.html

 ネット注文した古本、大岡信詩集『春 少女に』山田書店1978年初版帯付、500円が届く。8日に引用した三浦雅士の文で 未所持のこれを読まねば、と。

《 詩集『悲歌と祝祷』、『春 少女に』の2冊を、掛け値なしに日本現代詩の最高の達成であると称揚する。 》

 ネットの見聞。

 「四代目」 歌舞伎などの古典芸能では「よだいめ」と読みます。
 「七回忌」 しちかいき
 「四万六千日」 しまんろくせんにち

《 プロジェクト・グーテンベルク青空文庫的サイト)の英語文学1700作品の調査の結果、 物語における感情の動きは6パターンと判明。
  1)下から上がるだけ(アリス型)
  2)上から下がるだけ(ロミオとジュリエット型の悲劇)
  3)落ちて、そこから上がる(罠から這いあがる型)
  【続く】 》 冨田健太郎
 https://twitter.com/TomitaKentaro/status/753224024801488902

《 【続き】
  4)上がって、そこから落ちる(イカロス型)
  5)上がって落ちて上がる(シンデレラ型)
  6)落ちて上がって落ちる(オイディプス型)
 複雑なシンデレラやオイディプス型ほど、グーテンベルクでダウンロードされているらしい。
 http://www.sciencealert.com/scientists-have-figured-out-there-are-only-6-core-emotional-arcs-in-all-english-fiction … 》
 https://twitter.com/TomitaKentaro/status/753224040936906753

《 総統閣下は天皇陛下生前退位の意向を示した事にお怒りのようです 》 Serious Tom
 https://www.youtube.com/watch?v=j-4sj5QSl5s&feature=youtu.be

《 淀川長治が『広告批評』という雑誌で語っていたこと。
  天皇御一家に宮中に招かれて映画談議をしたことがあったそうである。その際に天皇陛下美智子様がベストワンに挙げた映画が 『ローマの休日』だった。
  考えてみれば、あの映画のヒロインの気持ちを実感できるのは日本ではこの御二人しかいない。 》 大塚浩成
 https://twitter.com/OhHironari/status/452611929865875457

《 恥ずかしい憲法、なんて言ってる奴らが、御高齢の天皇陛下の退位問題については、憲法を盾に取り、尻込み、 というのは喜劇的であり悲劇でもある。拝米で、尊皇の心をどこかに忘れてきたエセ保守の、醜い姿だな。 占領ボケはお前たちだろう。 》 合洋司
 https://twitter.com/yjochi/status/753756018736103425

 ネットの拾いもの。

《 新しい元号「日本」にしたら最終回っぽくていいかも。 》