『春 少女に』

 大岡信詩集『春 少女に』書肆山田1978年初版を読んだ。今まで読んだ大岡信の詩集でこれが最も親しみやすい。 繰り返し読みたくなる。最初の詩、「丘のうなじ」冒頭第一連二行。

《  丘のうなじがまるで光つたやうではないか
   灌木の葉がいつせいにひるがへつたにすぎないのに  》

 この二行で既に詩に拐われていた。半分以上の詩に惹かれた。「銀河とかたつむり」第一連四行。

《  世界がいかに危険な深みに満ちてゐようと
   死者たちの側から見れば
   この世はもう
   はてのはてまで終わつてしまつた宴にすぎない  》

 坂東壮一の銅版画『旅の終わり』ほかを思い浮かべた。
 http://web.thn.jp/kbi/bando.htm

 また、葛原妙子の名歌を連想。

《  他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水  》

 その眼差しは昨日の味戸ケイコさんの絵へつながってゆく。そう、他界より、なのだ。

 他に印象的な連を。

《  透明な風がゆききする石段にかけ
   死者の木の実のざらつく皮をむしりながら
   晩学の生徒は
   先生の低い声のなかに
   うちよせる死の抛物線だけ感じてゐる  》 「ギリシアのザクロ」

《  ゆつくり時は過ぎてゐた
   厚紙のなかへ沁みこんでゆく冷ややかな水のやうに  》 「きみはぼくのとなりだつた」

《  ぼくはひとり きみのいのちを生きてゐた  》 「きみはぼくのとなりだつた」結び

 詩集を読む愉しみを堪能。

 曇天でさほど暑くないので朝、源兵衛川中流、下源兵衛橋上手の両岸に伸びたヒメツルソバを抜く。土のう袋に詰める。 橋のたもとにはお盆の藁用具がどかんと積まれている。欄干には蝋燭と線香。送り火行事。夜は桜川で灯籠流しだ。

 ネットの見聞。

《 本棚の肥やしになっているが長らくホラーだと思っていた。阿呆。あとがきにイタリアには珍しい推理小説の傑作として 好評を博し各国に翻訳されたとある。元ナチスが絡む話らしいが、あとがきの手放しの絶賛が気になる。85年刊 》  ストラングル・成田
 https://twitter.com/stranglenarita/status/742707763776618498

 と紹介されたL.G.ブッファリーニ『〈吸血鬼〉の影』角川文庫がやっと見つかった。それも本棚に挟まっていた。最近 こんなことばっか。記憶力の衰えを痛感。

《 阪神本線が止まっている理由の詳細が詳細すぎる→「運転士可哀想」「運転士頑張れ」  》 togetter
 http://togetter.com/li/999903

《 自民党改憲草案というのは、彼らの国家観はこういうものだ、という宣言ですよね。となれば、 彼らは欧米諸国と価値観なんか全く共有してない。近いのは中国。自民党は中国における共産党になりたいんでしょうね。 こんな国家観、現在の国際秩序が許すとは思えない。 》 松井計
 https://twitter.com/matsuikei/status/754107284599427075

《 例えば、自分の親が高齢で心臓含め何度かの手術を受け病気の加療を受けながら働いてたら、そして「もう休みたい」 と言っても、「休ませない」と突っぱねるのか。 》 高橋正明
 https://twitter.com/buzzmeak/status/754124125413658625

 ネットの拾いもの。

《 ブラック宮内庁。 》

《 片付けが出来ない(から、探し物も苦手)な人間が、探すのを諦めるときに、よく言うセリフ。
  「これはもう、出てこない運命」
  「そんなに高額なものでもなかったし、ま、いっか」
  「探すより買った方が早い」
  そう言って、引っ越しの時、ドライバー30本程出てきた人を知ってる(笑) 》 蔵書印/出版広告
 https://twitter.com/NIJL_collectors/status/753777617036201987

《 「富士の白雪とかけて……不義理の借金と解く」、その心は「積もり積もりて姿を隠す」。 》

《 芭蕉最後の月世界徒歩行、『つきのほそ道』。 》