『百億の昼と千億の夜』

 木田元・編『一日一文』岩波書店の7月14日は、サミュエル・ジョンソン(1709-1784)。その後半。
《 人間は気持ちが赴くままに読書すべきものだ。課題として読む本は余りその当人のためにならない。 》
 気持ちが赴くままに目に止まった光瀬龍百億の昼と千億の夜』角川文庫1980年初版を読んだ。1967年の発表。 まあ、なんと壮大な小説か。地球の成立〜生命の発生から始まるんだから。そして釈迦、プラトンナザレのイエス、 阿修羅が登場。舞台は地球から須弥山、アンドロメダ星雲へ(さらには宇宙の外へ)。ぐいぐい読ませる。いやあ、面白かった。詳しいことは、先行するネット情報に任せる。中島梓の解説の結び。
《 そのかわりに、いま、私は、「百億の昼と千億の夜」は、世界でいちばん美しく、悲しいSF小説のひとつだ、 と思っている。 》
 本文から。
《 ローマ帝国の衰亡は午(ひる)を過ぎた陽ざしがいつとはなしに西にかたむくように、目には見えはしないが、 決して止めることのできない確実さで年ごとに、日ごとに進行しつつあった。 》 171頁
 今の日本を予言しているよう。
《 つねに歴史はすべてが終ったところからはじまっていた。 》 344頁
《 回復不可能な破局こそ実は静かにやってくるものなのだ。 》349頁
 男女関係みたい。本文冒頭。
《 寄せてはかえし
  寄せてはかえし
  かえしては寄せる波の音は、何億年ものほとんど永劫にちかいむかしからこの世界をどよもしていた。 》
《  冬の波冬の波止場に来て返す  》 加藤郁乎(いくや)
 加藤郁乎の俳句同様、『百億の昼と千億の夜』は読む人を選ぶ。

 『吉増剛造全詩集』思潮社が刊行されるとか。『黄金詩篇』1970年から『オシリス石の神』1984年まで八冊の詩集を 新刊で購入。散文集『螺線形を想像せよ』小沢書店1981年はブックオフで105円。最後に収録の散文「詩の発生する場所を もとめて」に付箋がある。いつ読んだのか。
《 「詩の発生する場所」そこに棲みつづけることを考えると、「詩作品」は岩礁に打ちつけてとびちる波頭のように おもわれてくる。あるいは潮騒の響きにかくれた岩礁がそれで、棲家は血のような波しぶきとも。 》 390頁
 岩成達也詩集『レオナルドの船に関する断片補足』思潮社1969年への連想だろう。
《 岩礁の平らなところにある納屋のなかからはいだしてきたときあの方は両方の目がつぶれくちびるからねばねばする しろいよだれをたらしていた(以下引用者:略) 》 「海の想い出 ii 岩礁の平らなところに」
 ネットの見聞。
《 本文用紙と書体で予想する芥川賞直木賞  第155回受賞作を大予想! 》
 http://type.center/articles/6442
《 (本文用紙予想、またあたりました)(恐ろしい) 》 津田淳子
 https://twitter.com/tsudajunko/status/755346619126587392
 ネットの拾いもの。
《 うわ。すごい時間。……棺に入ります。 》