「闇の転位」

 午前一時、寝苦しくて目覚める。エアコンのある隣の部屋へ移動。 朝、隣の沼津市では高温注意報と友だちからメール。 その彼女から続いてメール。

《 朝玄関のピンポンがなり、開けると、おとなりさん。95歳のお隣のおばあちゃんが内野さんみたいな服がほしいと言って、 どこで買ったのか聞きに来た。あらうれしいと思ったけど、よくよく話を聞くと、???去年、流行ったユニクロの ステテコパンツだった。グレーの水玉のあれを着たいと涼しそうだから・・・
  また、暑いからね!息子さん、買ってきてやろうと出掛けていった。みつかるといいね。 》

 朝、同報無線でお知らせ。黙祷。原爆の閃光。それは「闇」の極限の反転だろう。

 日射しが傾いた午後、風が吹いてきたので自転車でブックオフ長泉店へ。葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』角川文庫 2008年初版、森晶麿『黒猫の遊歩あるいは美学談義』ハヤカワ文庫2013年初版、筒井康隆ほか『名探偵登場!』講談社文庫 2016年初版、計324円。

 西岡文彦編著『図解:名画の見方』宝島社1996年20刷を再読。

《 はかないもの、過ぎゆくものに対する徹底した抵抗、輪廻転生を繰り返す人間と世界の全様相を描き出そうという 壮大なる決意が、この絵画(『モナ・リザ』)をどこか人間離れしたものにしているのである。 》 180頁

《 これに対して、印象派の絵画は、まさにそのはかなさ自体、過ぎゆく時そのものを、見えたそのままに 描き出している。その精神において、ルネッサンス以降の絵画の理想を完全に反転し得たからこそ、印象派の絵画は、 ルネッサンス以降、絵画を縛りつけていた描画上の限界である「闇」の呪縛をも、解き放つことができたのである。 》  181-182頁

《 いうならば、レオナルド的な「永遠の相」を放棄し、絶対的な美の規範たることを放棄したところから、 本格的な近代絵画の足どりは始まっているのである。 》 182頁

 「闇の呪縛」からの解放の熱が拡散して、二十世紀半ばにはその意義は雲散霧消し……現代絵画へと変質していった、 という気がする。その最中にさりげなく出現した味戸ケイコの絵。彼女の「闇」はカラヴァッジョの水脈とは異質なもの だと思う。よって「闇」ではなく「黒」。その「黒」は、ルネッサンスの絵画が有していた壮大な構想をも、別のかたちで 秘めている、という気がする。彼女の絵は闇の転位を見せているという見方はどうだろう。甚だしい勘違いと嘲笑されそう。 しかし、イラスト画という先入観を捨て去り、裸眼で無心に対すれば、その意外な奥深さ、または「深み」に気づくだろう。 その「深み」は、「闇」の深さとは全く違う質である。味戸さんは、無心に黒を描いている。壮大な構想なぞ全く思いもせずに。 それ故にその「黒」の色調は、見る者に広壮な夢想をも喚起させる魅力を持ち得ている。意図せざる絵画の魔力だ。

《 そしてこの漆黒の闇。その底はいったいどこへ続いているのだろう。 》 椹木野衣編『日本美術全集 第19巻』小学館 2015年初版、「味戸ケイコ」解説

 彼女の絵は規格外の絵。だから未だに気づかれず、真っ当に評価されていないのだと思う。

《 その多くが大切に保存され、未来に発見されるまでの、決して短くはない時の眠りについている。 》 椹木野衣(同上)

 『図解:名画の見方』初読の時に使えると思った一文。

《 おおまかな傾向をいうならば、初期の代表作は、名声の確立の契機となった「出世作」を意味し、 中期の代表作は、画風の確立を告げる「名作」をいい、晩年の代表作は、孤高で独自の画境をひらいた「傑作」 のことをいう。 》 64頁

 味戸さんはいつ「傑作」を描かれるか。

 ネットの見聞。
《 広島への原爆投下を悔やんだ米兵、哲学者がみつけた「人間の良心」 》 BuzzFeed
 https://www.buzzfeed.com/satoruishido/hiroshima-eatherly-anders?utm_term=.wk26rbGMod#.xeM4OkKw9b
 沖縄・高江の機動隊の住民への不法行為を思う。
《 【沖縄・高江発】 ヘリパッド阻むテント あす6日にも強制排除か 》 田中龍作
 http://tanakaryusaku.jp/2016/08/00014199
《 今井絵里子議員と三原じゅん子議員が憲法審査会入り 》  http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/konkokkai/current/list/l0905.htm

 ネットの拾いもの。
《 「日本も民族衣装で登場して欲しい」という意見と「日本も郷に従いノリノリで登場して欲しい」 って意見見かけて、総合すると日本はマツケンサンバみたいに登場すればいいんだなってことに… 》