『水辺のうた』

 台風通過、風雨強い。歩く人無し。雨の日は眠い。一時間ほど朝寝。午後四時雨止む。赤い落日。テレビでは洪水の映像。伴信子の短歌が浮かぶ。

   濁流の鋭く削ぎし葦の根方(ねかた)ほたる火のごとまつよひの花

   さるすべりの花にか黒く流れ藻のまつはり洪水あとのゆふぐれ

 道浦母都子『水辺のうた』邑(ゆう)書林1991年初版を久しぶりに再読。和歌、短歌三十五首を一首ずつ、詩を一つ、 見開き二頁に挿絵と道浦の鑑賞文。最初の歌は河野裕子(かわの・ゆうこ)。

   たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり

 以前引用しこともある名歌だ。つづく二首目は俵万智

   君の言う核戦争のそのあとを流れる水にならんか我と

 この本で知った佐佐木幸綱の歌。

   ゆく水の飛沫(しぶ)き渦巻き裂けて鳴る一本の川、お前を抱(いだ)く

 凄いね。私の理想は炊飯と同じ、始めチョロチョロ中パッパ。鑑賞では大岡信の一文が紹介されている。

《 この人の歌には「川」を素材としたものが多く、詩人・大岡信は、幸綱を称して「川に生気を吹きこんで 生動させる力量において、私を震撼させる」とまで言い切っている。 》

 この一首が収録されている歌集『夏の鏡』青土社1976年初版は当時購入したが、荒々しい歌いぶりに敬遠した記憶。

   八月のまひる音なき刻(とき)ありて瀑布のごとくかがやく階段

 真鍋美恵子の歌はこれが初めて。情景が目に浮かぶ。「あ」音の連打がじつに効いている。

   水につばき椿にみづのうすあかり死にたくあらばかかるゆふぐれ

 以前にも引用した松平修文の歌。奥さんの歌人王紅花さんから個人歌誌『夏暦(かれき)』四十三号を昨日恵まれる。 それから一首。

   古い写真のやうに秋草のとりどりの花にまぎれて立ちをり きみは

 姫野カオルコがブログに書いている。

《 「親展」の意味を知らない若い人が増えているようだ。 》

 そうかもしれない。市役所など公的機関から届く封筒には「親展」と赤く大きく印刷されているものがあるが、 私は書いたことばない。中学生の時女性からの手紙に「同封」とあって、何のことかわからなかった。今ではよく 使うが。「鶴首して待っています」という文面を「つるくびして」と読んだ女性がいた。誤読を指摘できなかった。 まあ、NHKの女性アナウンサーが「伊東の干物」を「ほしもの」と言った時には噴いた。おいおい、映像はアジの ヒモノだぞ。あ〜あ。

 ネットの見聞。

《 ドボ博 》
 http://www.dobohaku.com/

 「番外編」に惹かれる。

《 蒲田くんは鰓が進化したあの禍々しくも赤い首んところの気持ち悪さもこたえられませんが、 やはり大勢の皆さんがおっしゃってるとおり、目ですよね、目。バカの虚無っていうんでしょうか。 どこにも焦点が合っていないあの目を見ると、バカのブラックホールに吸いこまれそうになります。 》 豊崎由美
 https://twitter.com/toyozakishatyou/status/767411723141644288

《 日中漁業協定も読まずに「中国脅威論」をあおる愚 》 高野孟
 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187925/1

 ネットの拾いもの。

《 なぜ「猫ひろし」という芸名なのか知らない人が多くて驚く。「舘ひろし」のパロディなのだが、 なぜ「舘」と「猫」が対になるのかが分からない人が多すぎる。 》 美冴@阿久悠.jp
 https://twitter.com/Misae_AkuYou/status/767384013673639936