『自選 大岡信詩集』つづき

 大岡信『自選 大岡信詩集』岩波文庫2016年初版、自選ということを考えた。選詩集には例えば田 原・編 『谷川俊太郎詩選集1,2,3』集英社文庫のように、他者が選んだ選詩集と自選集がある。大岡信は自選を選んだ。 他者には委ねられない切迫したものをうっすらと感じる。一昨日の引用を思う。

《 比喩的にいえば、大岡は、詩と批評の交差点の中央に立ちつくしていたのである。 》 382頁

 三浦雅士の解説は以下の文で始まる。

《 大岡信はまず批評家として登場した。必ずしも本人の意志ではない。 》 363頁

《 彼は詩人として論じられる側に立つよりも早く、詩人たちを論じなければならない立場に立たされた。 》 365頁

《 要するに評論集のほうが詩集に先立っているのである。 》 367頁

《 評論集はいずれも詩集以上に話題を呼んだ。 》 367頁

《 あえていえば、現代詩を俯瞰するのもその地図を描くのもすべて大岡に委ねられていた。まさに詩壇の管制塔である。 》  368頁

 大岡信編集『全集・現代文学の発見 第十三巻 言語空間の探検』学藝書林1969年は、詩壇の管制塔にふさわしい構成だ。 彼の解説から。

《 また、現代短歌、現代俳句の代表的作品が収録されているが、現代の詩的達成を考える場合、とくに「言語空間」の 多様なひろがりを考え合わせるなら、当然現代詩と同じ資格においてとりあげられるべき短歌や俳句があるという考え方から 出たものである。 》

 短歌から塚本邦雄岡井隆、俳句から金子兜太高柳重信、加藤郁乎が選ばれている。大岡自身は詩集『記憶と現在』から 八篇を選んでいる。『自選 大岡信詩集』では十四篇。重なっているのは「夜の旅」「春のために」「地下水のように」 「詩人の死」の四篇。
 大岡信の詩は愛唱されるか。初期詩篇は愛唱されるだろう。

    「朝の頌歌(ほめうた)」第一行。

   朝は 白い服を着た少女である

    「朝の少女に捧げるうた」第一連。

   おまえの瞳は眼ざめかけた百合の球根
   深い夜の真綿の底から
   朝は瞳を洗いだす そして百合の球根を

    「夢の散策」第一連。

   灰いろの舗道のうへに霧はながれ
   たちならぶいてふの幹にたはむれながら──
   そのあさ 私はひそかに舗道を行つた
   霧のさそひに紛れいでて

 年譜を読んでいて目に留まった。

《 一九六三年(昭和三十八) 三十二歳。
  購入する眼で作品を見ることを初めて学ぶ。 》

 ネットの見聞。

《 「住みたい街ランキング」の街は、はたして安全なのかという問い 》 週刊女性PRIME
 http://www.jprime.jp/articles/-/8031?page=3

 「住むならここ!」は「静岡・三島市など分厚い溶岩の上にある町」。

《 山口百恵中森明菜? 史上最高「歌うま」アイドルは誰だ 》 林哲司ミッツ・マングローブ
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49626

 中森明菜は、ドーナッツ盤もLPレコードもCDも持っている。

《 『教皇ヒュアキントス』を手に持っていると素敵だと思う。どんな姿の本を思い描いているかと担当編集者の人に訊かれて、 誰もが手に持っているところを人に見せたくなるような明るい感じの本と云ったら、これこそ皆に見せて歩きたくなる本じゃないかと 感激したけど、まだ歩いている人を見たことない。 》 中野善夫
 https://twitter.com/tolle_et_lege/status/771973596541427713

 表紙の原画、林由紀子さんの銅版画に合う額がまだ見つからない。一昨日来訪した千葉県の従姉妹に見せたら「まあ、ステキ」。 あげないよ。

 ネットの拾いもの。

《 漫画誌で40年以上連載している漫画は、ゴルゴ13(48年)、赤兵衛(44年)、浮浪雲(43年)、三丁目の夕日(42年)、 わんころべえ(40年)、こち亀(40年)、王家の紋章(40年)の7つ。こち亀が終わると残り6つだ。 》