『天狗起し』『小梅富士』

 なにを見落としているのか。昨日持っていないと記した『うそつき砂絵』、二冊合本『さかしま砂絵/うそつき砂絵』 光文社文庫2011年初版を持っていた。こりゃ、うそつきになるわ。『ほりだし砂絵』でシリーズベスト2と謳われた 「天狗起し」と「小梅富士」を読む。

《 なんとも奇妙なできごとがあった。あるじの幸右衛門(こうえもん)が死んで、奥座敷には三十人ちかい客が、 通夜につめかけていた。そのなかのひとりが、殺されたのだ。犯人はだれの目にも、あきらかだった。長崎屋のあるじ、 幸右衛門。つまり死体が人殺しをして、逃げだしたのだ。 》 「天狗起し」

 見事な本格推理小説だ。収録の『くらやみ砂絵』光文社文庫1997年初版の解説で北村薫は書いている。

《 読んでいた場所まで忘れられないほど、この作品の印象は強烈でした。わたしのシリーズ・ベストです。不可思議 極まる謎が、この物語の時と場所を不可欠の要素として、見事に解かれる。そこには、まさに都筑道夫のいう《論理の アクロバット》がありました。しかも、とびきりの。 》

 解説を読むとスゲエんだ、と思うようになる。

《 『天狗』を題にもつ稀有の作品を、我々は、これで二つ与えられたことになります。 》

 先立つ『天狗』は、大坪砂男の名短篇『天狗』。十代に読んだこの印象は強烈だった。結末近く。

《 やがて人人は空を仰ぐ。見渡す限り山毛欅の林に囲まれた澄みきつた初秋の空──そこに、口に出すのは恥じて 言はずとも、天狗の影が、サッと羽ばたく幻が、誰にも見えたに相違ない。天狗でなくて何者が、かかる魔術を 行へるだらう? 》

 実写化されないかな。無理かな。『からくり砂絵』収録の『小梅富士』。快刀乱麻を断つ謎解きに呆然唖然。

《 被害者は隠居の久右衛門(きゅうえもん)で、離れ座敷に寝ていたのだが、凶器はなんと、その四畳半の座敷 いっぱいもあるような庭石だった。久右衛門は下半身不随の病人で、もうかなり弱っている。坊主まくらでも、 顔に押しつければ、女でも殺せただろう。それを、なぜにまた大きな石なんぞで圧しころしたのか、というのが、 奇妙なところの第一であった。 》

 第二第三第四の奇妙な点をつなぐ唯一の解とは。一読驚嘆再読感嘆。巧さに舌を巻く。

 ネットの見聞。

《 ワイン界の権威の評価で日本酒にバイヤー殺到 》 JB PRESS
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47808

 大吟醸酒は好みではない。純米酒で充分。普段は紙パックのお酒。安上がりの人生だ。

《 月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」 》 中村 淳彦
 http://toyokeizai.net/articles/-/134801

《 ヘリパッド移設抗議行動に元米兵も 「狂気」と計画批判 》 朝日新聞DIGITAL
 http://www.asahi.com/articles/ASJ983T72J98TLZU001.html?iref=comtop_8_03

 ネットの拾いもの。

《 コミックスをCOMIXだと思ってた恥ずかしい…… 》